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鞍馬の蔵、呪の血文字

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 調べが進むと四宮和夫には、たくさんの愛人の存在が目立つ。祇園に2人、先斗町に1人、宮川町に1人、上七軒に3人とわかっているだけで7人、他に秘書、後援会まで含めるといったい何人の愛人を囲っていたのかわからないのである。

 甲斐性があるというのか、単なるスケベで女にだらしないのかはわからないが、少なくとも金払いが良く優しいところがあるのだろう。

 そうなると痴情のもつれか?姉小路御幸に言わせると、四宮和夫殺人のホシは、間違いなく女関係らしい。霊視で女の後ろ姿が見えたそうだ。ホンマかいな~?

 なんでもっと早く言ってくれない!姉小路御幸が言うには、それでは裁判が闘えない、という理由らしい。確かに、裁判では証拠、自白、凶器の三点セットが重要になるから。

 捜査本部の愚痴を聞き流しつつ、今日も今日とて、拝み屋稼業は続きまっせ。

 今日のご依頼は、京都はありすぎて、ネタに困らないんだけど、どの話にしようか、正直迷う。

 実際にあった話、大学の3回生だったかな。京都大学の附属病院のところから、タクシーを拾った。A子、住んでいる学生マンションが近くにあり、夏だったので、髪を洗いっぱなしにして、深泥池の彼氏の住んでいるマンションまで行った時のこと。
 乗った直後から、運転手にミラーごしにチラチラ見られる。白いワンピースを着ているから、透けて見える?とか、よからぬ心配をしていたA子。
 無事、深泥池まで到着して、お金を払って下車したのだが、後日、御幸にその話をしたら、

 「アンタ、お化けと間違われたんやで。京都では、昔からあるねん。京大病院からタクシーを拾った人が、どちらまで?と聞かれて、深泥池というと、着くまでに消える。残された座席シートの上には、手術に使われる液体が水たまりになって残っている。その幽霊の姿が白い術衣に水が滴っている長い黒髪の女性、青白い顔をして、弱々しく、今にも消えそうな透けて見えるようなカラダ……。」

 「もうええわ。やめて。」

 事故車って、大抵わかるのよ。フロントガラスに火の玉が付いているのが視える。中古車センターで車を買うっていう友達に付き合って、一緒にどの車にしようか、選んでって言われると、どれもこれも、まともな車がない。

 友達が気に入った四輪駆動車、ぱっと見は良さそうなんだけど、霊視してみると、運転席にハンドルを握りしめた必死の形相の男が乗っている。あーこれもアレだ。事故車なんだろうな。

 どうしてもその車が欲しい、気に入ったというから、こっそりお祓いして成仏させましたよ。だって、時々、私も載せてもらうことがあるかもしれないから。


 四宮和夫さんの捜査、頑張ってね。

 でないと、第3の殺人が起きるかもよ?
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