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25結婚式
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涼森鈴は、ブスの同級生の桜から、何もかも奪い取りたかったのだが、すべてを奪われたのは、鈴のほうだった。
離婚が成立した翌日、前夫の裕介が遺書を残し、投身自殺をする。
遺書には、元妻・桜への想いがつづられいて、ただの一行も一字さえも鈴のことには、触れられていなかった。
自分が殺したはずの桜に完全に負かされた瞬間だったのだ。
マスコミは「悪女敗北」として、面白おかしく鈴のことを書き立てた。
自分の美貌を鼻にかけ、誰一人友達を作らなかった女の敗北は、世間の興味を惹くに、十分事足りる。その上、最高裁は上告を棄却し、2審の懲役18年が確定してしまう。
仲睦まじい夫婦の仲を引き裂いた稀代の悪女は、こうして表舞台から姿を消す。
紗々は、あの箱根旅行の日以来、ピタリと悪夢から解放される。
その日が、裕介の自殺した日だと知らずにいたからで、後から佐藤家に報告が行く。
もう少し、待てば、博に恥ずかしい姿を見られることなく、結婚できたのかもしれないが、あの悪夢が結婚のきっかけになったことは否めない。
でも、あの箱根登山から一気に博との仲が進んだことは喜ばしいこと。
榊の父は、最初は大反対だったが、紗々の説得により、最後は折れてくれたのだ。
小田原のお父様は、何がどうなって、結婚する気になったかを根掘り葉掘り聞き出そうとするが、そんなこと言えない。
お見合いが終了した後、偶然が重なって出会い、そこから恋愛に発展したという話はウソ?に近い話だが、表向きはそういうことにしておく。
あれから、山に海に何度も二人で行き、愛を確かめる。ほとんど童貞に近い男と処女だった女は、カラダの相性を何度も確かめていくうちに、お互いがお互いに溺れてしまう。
もう、相手が誰でもいいというわけではなく、その相手のことしか眼中にない。
ミス霞が関が婚約したというニュースが駆け巡る中、ようやく晴れの日を迎える。
文金高島田に白無垢を身にまとった紗々は、日本人形のように美しい。列席した賓客から、ため息が漏れるほど美しい。
榊の父は祝いの席だというのに、最初から最後まで大泣きしている。それを榊の母が宥め、赤子をあやすかのようにしている様子は、はた目から見ても微笑ましく、良い夫婦の象徴とされる。
博は、同僚の官僚や紗々の勤務先の官僚から、「うまくやった。」「どうしたら、紗々のような美人と知り合ったか?」の質問攻めにあっている。
紗々の先輩にあたる官僚は、紗々と仲良くなるために元の彼女と別れてまで、接近したがけんもほろろだったことを打ち明ける。
「紗々は、『誰かの不幸の上にある幸せなんて、存在しない。』がモットーですからね。」
さらりと言ってのける博に羨望のまなざしが集中する。
博だって、余裕なんてない。親から勘当寸前で、仕事も失う直前だったのだから。それを紗々が救ってくれたようなもの。
だから紗々には、頭が上がらないが、紗々は、一歩引いて、博のことを立ててくれる。
今では、従順で優しい紗々にメロメロになっている。決して、美人だからではない。紗々を他の誰かに盗られたくない一心で、結婚の申し込みをした。それを紗々は、快諾してくれて、今日この日を迎えることができた。
警察官僚と経産省官僚との結婚式には、多数の同僚が出席する。
それぞれが仲間であり、ライバルでもある。
だから、結婚後、足を引っ張られないように、紗々共々気を引き締め、家庭を守っていかなければと心に誓う。
披露宴で、その趣旨を挨拶した博は、紗々から熱い目で見つめられ、照れる。
小田原の親父からも拍手され、少々得意になってしまうが、そんな時に紗々が手を握ってくれたことで、冷静になれた自分がいる。
そして、二人は手に手を取り、新婚旅行へ旅立つ。
離婚が成立した翌日、前夫の裕介が遺書を残し、投身自殺をする。
遺書には、元妻・桜への想いがつづられいて、ただの一行も一字さえも鈴のことには、触れられていなかった。
自分が殺したはずの桜に完全に負かされた瞬間だったのだ。
マスコミは「悪女敗北」として、面白おかしく鈴のことを書き立てた。
自分の美貌を鼻にかけ、誰一人友達を作らなかった女の敗北は、世間の興味を惹くに、十分事足りる。その上、最高裁は上告を棄却し、2審の懲役18年が確定してしまう。
仲睦まじい夫婦の仲を引き裂いた稀代の悪女は、こうして表舞台から姿を消す。
紗々は、あの箱根旅行の日以来、ピタリと悪夢から解放される。
その日が、裕介の自殺した日だと知らずにいたからで、後から佐藤家に報告が行く。
もう少し、待てば、博に恥ずかしい姿を見られることなく、結婚できたのかもしれないが、あの悪夢が結婚のきっかけになったことは否めない。
でも、あの箱根登山から一気に博との仲が進んだことは喜ばしいこと。
榊の父は、最初は大反対だったが、紗々の説得により、最後は折れてくれたのだ。
小田原のお父様は、何がどうなって、結婚する気になったかを根掘り葉掘り聞き出そうとするが、そんなこと言えない。
お見合いが終了した後、偶然が重なって出会い、そこから恋愛に発展したという話はウソ?に近い話だが、表向きはそういうことにしておく。
あれから、山に海に何度も二人で行き、愛を確かめる。ほとんど童貞に近い男と処女だった女は、カラダの相性を何度も確かめていくうちに、お互いがお互いに溺れてしまう。
もう、相手が誰でもいいというわけではなく、その相手のことしか眼中にない。
ミス霞が関が婚約したというニュースが駆け巡る中、ようやく晴れの日を迎える。
文金高島田に白無垢を身にまとった紗々は、日本人形のように美しい。列席した賓客から、ため息が漏れるほど美しい。
榊の父は祝いの席だというのに、最初から最後まで大泣きしている。それを榊の母が宥め、赤子をあやすかのようにしている様子は、はた目から見ても微笑ましく、良い夫婦の象徴とされる。
博は、同僚の官僚や紗々の勤務先の官僚から、「うまくやった。」「どうしたら、紗々のような美人と知り合ったか?」の質問攻めにあっている。
紗々の先輩にあたる官僚は、紗々と仲良くなるために元の彼女と別れてまで、接近したがけんもほろろだったことを打ち明ける。
「紗々は、『誰かの不幸の上にある幸せなんて、存在しない。』がモットーですからね。」
さらりと言ってのける博に羨望のまなざしが集中する。
博だって、余裕なんてない。親から勘当寸前で、仕事も失う直前だったのだから。それを紗々が救ってくれたようなもの。
だから紗々には、頭が上がらないが、紗々は、一歩引いて、博のことを立ててくれる。
今では、従順で優しい紗々にメロメロになっている。決して、美人だからではない。紗々を他の誰かに盗られたくない一心で、結婚の申し込みをした。それを紗々は、快諾してくれて、今日この日を迎えることができた。
警察官僚と経産省官僚との結婚式には、多数の同僚が出席する。
それぞれが仲間であり、ライバルでもある。
だから、結婚後、足を引っ張られないように、紗々共々気を引き締め、家庭を守っていかなければと心に誓う。
披露宴で、その趣旨を挨拶した博は、紗々から熱い目で見つめられ、照れる。
小田原の親父からも拍手され、少々得意になってしまうが、そんな時に紗々が手を握ってくれたことで、冷静になれた自分がいる。
そして、二人は手に手を取り、新婚旅行へ旅立つ。
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