あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀

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4.夢の中で(1)

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 スカーレットの誕生日パーティは、滞りなく終宴の頃合いが近づいてくる。ナタリーやイザベラと別れを惜しみつつ、次に出会うお茶会の話をしながら、馬車留のところまで見送る。

 その後、執事に命じて医者の手配をしてもらう。でなければ、前世と同じように今夜、処女を散らされるところだから。

 ロベルトが贈ったドレスは、背中のリボンを引っ張るだけで、するりとすべての布がほどけ墜ち、たちまち全裸になってしまう代物だった。

 侍女のイネスがそれにいち早く気づいたものの、前世では、スカーレットがロベルト殿下一筋であったため、イネスの忠告が耳に入らず、贈られたドレスを強行に着た。

 一刻も早くロベルトの女になりたかったから。だが、ロベルトが愛したのは、スカーレットのカラダだけで、スカーレット自身を愛することなど、死ぬまでなかった。

 今回は、もう愛してもらおうなんて、これっぽっちも期待していないし、むしろロベルトの身勝手さが身にしみてわかっているので、今宵、どうしても処女を捧げる気になれない。これで難を逃れられたとは、思えなく、もう一つの仮病作戦で、逃げ切るつもりである。

 スカーレットはもともと面食いで、だからロベルトの顔だけでほれてしまったことを後悔している。

 たとえ少々ブサイクでも、男の価値は顔だけではなく、鍛え抜かれた腕力や肉体の強靭さ、頭脳明晰なところや、将来を視る目があるかどうかも重要な魅力の一つだということが、今ならわかるが、前世のスカーレットは男を見る目がなかったとしか言いようがない。

 よくあんなくだらないカスに心を奪われていたと思うと、我ながらに情けない。

 今世では、絶対クズに引っかからないと心に決め、早めの就寝をする。ロベルトの性格からして、夜這いをかけるなどは、あり得ないと思ったからだ。

 あの男はナルシストで、女は、自分が手出ししなくても、股を開いて寄ってくるものと思っているはず。前世は18歳で犯されてしまったが、今世は、絶対その機会さえ作らないようにしないと。

 ベッドの中でも、いつも自分だけが満足したら、そこで終わりという不条理なセックスしかなかった。スカーレットが十分に濡れないまま、挿入されるので痛くて仕方がなかったが、そういうものかと思っていた……。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その夜、夢を見た。

 そこは、今まで見たこともない世界。気のせいか、なんだかみんな凹凸のない顔をしているみたい。

 それに黒髪、黒目ばかりの人たち。肌の色も少し黄身がかっているように、見える。

 みんなおそろいの白いコートを着て、首から何かのアクセサリーにしては味気ないものをぶら下げ、急ぎ足であちこち動き回っている。

「藤村先生、お客様がお見えになっておりますよ」

 どうやら藤村先生は、スカーレットのことを指しているようだ。応接室というのには、あまりに狭い個室に当然のように入っていくと、部屋に入るなり背の高い男の人に抱きしめられた。

 いくら夢でも、これはちょっと……欲求不満が、こんな夢を見させているのか、と思ったが、夢であるはずなのに、胸のあたりがポカポカして温かい。

「会いたかったよ。うらら(麗)、急に出張になってしまったんだ。ごめんね」

 そのまま愛しい人の顔が近づいてきて、唇に……吸われて、舌も吸われて、うっとりしている麗。

「待って、ここではイヤ」

 夢でもハッキリわかる。それは嘘を吐いていると。

「わかっているよ。今日はもう上がりだろ?花大路夢ホテルを予約している。今夜は寝かせないよ。覚悟しておいてね」
「んもうっ!陽介ったら、エッチ!」

 場面は、変わって、ベッドの上、先ほどの男性と全裸で抱き合っている。はぁはぁと荒い息遣い。丁寧な愛撫に、うららは、カラダをのけ反らせ、ヒクヒクとひくついている。

「愛しているよ、うらら」
「私もよ、陽介……あっ!そこっダメ、あっはん」

 肩までで切りそろえられた髪を左右に振っているが、夢でもわかる。また、嘘を吐いていると。

 また場面が変わり、白いコートに身を包んだ場面、なぜかみんながうららに花束を渡してくれている。うららは、涙ぐんで一人一人にお礼を述べている。

「藤村先生、お元気でお幸せに。結婚式には、呼んでくださいね」

 みんなが拍手して、送り出してくれる。

 そこにスポーツカーが滑り込むように停まり、陽介が降りてきて、助手席のドアを開けてくれる。

 また、場面が変わり、神殿のような大聖堂のようなところで、白いドレスを着ている。陽介は、白のタキシードを着て、司祭様の前で、誓いのキスをした。

 また、場面が変わり、今度もまた白いコートを着ているが、患者がいるわけではない。顕微鏡と呼ばれるものに、右目を近づけ、何やら一生懸命覗き込んでいる。

 白いコートは、この世界の制服か何かだろうか?

「コラーゲン、ヒアルロン酸」という言葉が室内に飛び交っているが……理解できないような?でも、麗と呼ばれている女性は、深く頷いているので、わかっているのだろう。

 また、場面が変わり、あられもない声とあられもない姿をして、陽介と愛し合っている。悲鳴に近い絶叫をして、ぐったりとしている二人。
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