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スカーレットの聖女覚醒の自覚は、突然に舞い込んできた。
誕生日パーティの後、3日間昏倒していたせいなのか、それとも前世ではロベルト殿下と関係を持ったが、今世では持たなかったから、発現したのか、よくわからない。
前世では、母が死んだのは、王家に嫁いだ3年後のこと。そして、母の死後、翌日には、後妻として、ベルディ男爵令嬢が義妹リリアーヌを伴ってロッテンマイヤー家に乗り込んできたのだ。
嫁に行ったスカーレットでは、止める術はなく、母の部屋にベルディが、スカーレットの部屋にリリアーヌが、占拠された後だったのだ。
母の遺品のすべてをベルディが受け継ぎ、輿入れの際に持っていけなかった荷物のうち、高価な品物といえないドレスやアクセサリーを含めたものすべてをリリアーヌのものとされ、他は、廃棄処分された後の祭りだった。
廃棄処分されたものの中には、個人的な手紙や日記帳、お妃教育での記録というかノートも含まれていたのだ。
後で読み返しができるように、でも、輿入れの荷物にしてはおかしいので、あえてロッテンマイヤー家に置いておいたものだった。
いわば、スカーレットが公女だった思い出がいっぱい詰まっている品物というわけ。
今から思い起こしてみると、母の事故も仕組まれたものではなかったのかという思いさえしてくる。
母は、馬車による事故死だったが、母の乗った馬車の車輪は、不自然に軸が歪んでいたと聞いた。
前世を入れると、5年前のことだが、今世では、5年後に起こる事故を今から考えても詮無いことだけど、どうしても考えざるを得ない。
スカーレットは、母自身にもわからないように、こっそりと母のカラダに結界を張っておくことにした。
もし、事故が起こって、馬車ごと谷底へ転落しても、馬車が粉々に砕け散っても、母は気を失うだけで、無傷となるぐらいに強力な結界を張ることに成功した。前々世、皮膚科医だっただけのこともあるので、割と一般人には行き渡っていない知識がある。それの応用で、母には、頭から一枚皮(真皮)を被ってもらうことにしたのだ。言ってみれば、見えないバリア。それと結界をうまく応用して、何か人為的なあるいは、天災が起こった時、結界が発動する仕組みを取り入れた。
寿命が尽きるまで、その結界は持続される。そして、母の部屋にも結界を張ることにした。母以外の誰かが母の部屋に勝手に侵入した場合、アレルギーの一種で、アナフィラキシーショックを受け、最悪死に至らしめるような結界を施す。
同じものを、スカーレットの部屋と、持ち物すべてに施した。これでベルディ義母娘対策と、ロベルト対策は、万全だと思っていたが、また歴史が変わってしまった。
死に戻った後、はっきりと歴史が変わったと思った瞬間は、学園の卒業式を終えた次の日の朝に起こった。
外務大臣に同行するため、しばらく公爵邸を空けるため、荷物を馬車に入れているときに、一台の馬車がロッテンマイヤー家のエントランスに停まったのだ。
中から降りてきたのは、ベルディとその娘のリリアーヌ。リリアーヌは、まだ小学生ぐらいの身長しかない。
「ここがアタシのお家?」
使用人一同、ギョッとして、思わず手を止め、ベルディとリリアーヌを凝視する。
「何、見てんのよ!私ら、見世物じゃねーよ!」
ベルディは、金切り声を張り上げている。威嚇しているつもりだろうが、たぶん……逆効果だと思うよ。
その言動は、どう見ても男爵令嬢に似つかわしくなく、父もどうして、こんな女と関係を持ってしまったのか。どう見ても、平民以下、それもかなり質が悪い人種出身者のように思える部類の行動であった。
まったく、女を見る目がないというか、何というか、後、5年もすれば、ロベルトはリリアーヌにぞっこんとなるはずなのだから、ロベルトも人を見る目はない。そして、ロベルトとの間の娘アンジェリカもまた人を見る目を持っていなかった。
まあ、当時のリリアーヌは、母が死んで5年後のことで、5年間みっちり淑女としての教育を受けてきたことになるから、今のリリアーヌよりは少しマシになっていたとは思う。
それでも実の母親より、リリアーヌの方が好きと言ってのける空気が読めない娘であったことは間違いがない。
もう、これから先、あんな娘は欲しくないし、娘を設けるような行為をロベルトとするつもりはないから、関係ないと言えば関係ない。
ベルディとリリアーヌは、強引に屋敷の中に踏み入れようとしているが、執事に止められ入れずにいるから、また金切り声を張り上げている。
その隙に、スカーレットは、屋敷全体にアレルギーを起こす呪い、もとい結界を張り巡らす。
一歩でも、この母娘のどちらかが、屋敷内に入ろうものなら、たちまち呪いが発動して、死に至らしめるという強烈なものをかけていく。
幸い、父は、朝早く城に出仕してから、まだ帰ってこない。帰ってくる時間帯ではないと言った方が正確か。
「そこを退いて!何をしているの!早く荷物を入れなさい!」
その騒ぎに、ついに母が出て来てしまったのだ。
誕生日パーティの後、3日間昏倒していたせいなのか、それとも前世ではロベルト殿下と関係を持ったが、今世では持たなかったから、発現したのか、よくわからない。
前世では、母が死んだのは、王家に嫁いだ3年後のこと。そして、母の死後、翌日には、後妻として、ベルディ男爵令嬢が義妹リリアーヌを伴ってロッテンマイヤー家に乗り込んできたのだ。
嫁に行ったスカーレットでは、止める術はなく、母の部屋にベルディが、スカーレットの部屋にリリアーヌが、占拠された後だったのだ。
母の遺品のすべてをベルディが受け継ぎ、輿入れの際に持っていけなかった荷物のうち、高価な品物といえないドレスやアクセサリーを含めたものすべてをリリアーヌのものとされ、他は、廃棄処分された後の祭りだった。
廃棄処分されたものの中には、個人的な手紙や日記帳、お妃教育での記録というかノートも含まれていたのだ。
後で読み返しができるように、でも、輿入れの荷物にしてはおかしいので、あえてロッテンマイヤー家に置いておいたものだった。
いわば、スカーレットが公女だった思い出がいっぱい詰まっている品物というわけ。
今から思い起こしてみると、母の事故も仕組まれたものではなかったのかという思いさえしてくる。
母は、馬車による事故死だったが、母の乗った馬車の車輪は、不自然に軸が歪んでいたと聞いた。
前世を入れると、5年前のことだが、今世では、5年後に起こる事故を今から考えても詮無いことだけど、どうしても考えざるを得ない。
スカーレットは、母自身にもわからないように、こっそりと母のカラダに結界を張っておくことにした。
もし、事故が起こって、馬車ごと谷底へ転落しても、馬車が粉々に砕け散っても、母は気を失うだけで、無傷となるぐらいに強力な結界を張ることに成功した。前々世、皮膚科医だっただけのこともあるので、割と一般人には行き渡っていない知識がある。それの応用で、母には、頭から一枚皮(真皮)を被ってもらうことにしたのだ。言ってみれば、見えないバリア。それと結界をうまく応用して、何か人為的なあるいは、天災が起こった時、結界が発動する仕組みを取り入れた。
寿命が尽きるまで、その結界は持続される。そして、母の部屋にも結界を張ることにした。母以外の誰かが母の部屋に勝手に侵入した場合、アレルギーの一種で、アナフィラキシーショックを受け、最悪死に至らしめるような結界を施す。
同じものを、スカーレットの部屋と、持ち物すべてに施した。これでベルディ義母娘対策と、ロベルト対策は、万全だと思っていたが、また歴史が変わってしまった。
死に戻った後、はっきりと歴史が変わったと思った瞬間は、学園の卒業式を終えた次の日の朝に起こった。
外務大臣に同行するため、しばらく公爵邸を空けるため、荷物を馬車に入れているときに、一台の馬車がロッテンマイヤー家のエントランスに停まったのだ。
中から降りてきたのは、ベルディとその娘のリリアーヌ。リリアーヌは、まだ小学生ぐらいの身長しかない。
「ここがアタシのお家?」
使用人一同、ギョッとして、思わず手を止め、ベルディとリリアーヌを凝視する。
「何、見てんのよ!私ら、見世物じゃねーよ!」
ベルディは、金切り声を張り上げている。威嚇しているつもりだろうが、たぶん……逆効果だと思うよ。
その言動は、どう見ても男爵令嬢に似つかわしくなく、父もどうして、こんな女と関係を持ってしまったのか。どう見ても、平民以下、それもかなり質が悪い人種出身者のように思える部類の行動であった。
まったく、女を見る目がないというか、何というか、後、5年もすれば、ロベルトはリリアーヌにぞっこんとなるはずなのだから、ロベルトも人を見る目はない。そして、ロベルトとの間の娘アンジェリカもまた人を見る目を持っていなかった。
まあ、当時のリリアーヌは、母が死んで5年後のことで、5年間みっちり淑女としての教育を受けてきたことになるから、今のリリアーヌよりは少しマシになっていたとは思う。
それでも実の母親より、リリアーヌの方が好きと言ってのける空気が読めない娘であったことは間違いがない。
もう、これから先、あんな娘は欲しくないし、娘を設けるような行為をロベルトとするつもりはないから、関係ないと言えば関係ない。
ベルディとリリアーヌは、強引に屋敷の中に踏み入れようとしているが、執事に止められ入れずにいるから、また金切り声を張り上げている。
その隙に、スカーレットは、屋敷全体にアレルギーを起こす呪い、もとい結界を張り巡らす。
一歩でも、この母娘のどちらかが、屋敷内に入ろうものなら、たちまち呪いが発動して、死に至らしめるという強烈なものをかけていく。
幸い、父は、朝早く城に出仕してから、まだ帰ってこない。帰ってくる時間帯ではないと言った方が正確か。
「そこを退いて!何をしているの!早く荷物を入れなさい!」
その騒ぎに、ついに母が出て来てしまったのだ。
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