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親子鑑定の儀式は、思わぬ波紋を呼ぶことになってしまう。
ジェミニ国王は、次期王位継承権者と自分との父子鑑定を始めた。それまでは、他人事と素知らぬふりをしていた王位継承権者たちは、一気に焦り出したのだ。
ジェミニ国王は、せっかく東の国から取り寄せた水晶玉をこのままみすみすと東の国に返してしまうことは、あまりにも、もったいない。
自分で、実際に試してみて、王子との関係を喜びたいと無邪気に考えてしまったことによる。
それに、リリアーヌのバカタレのせいで聖女判定に必要な国宝の水晶玉を失ったばかりだから、せめてもの慰めとして、東の国の珍しい水晶玉を試してみたいと思ったのだ。
「母上、本当に私は父上の子なのですか?今ならまだ間に合います!本当のことを教えてください」
息子に詰め寄られる母は、皆、眼を泳がせる。側妃として召し上げられたものの、なかなか陛下のお渡りがなく、つい……若気の至りで手短なものと関係したことが一度か二度は、身に覚えがある。
だって、寂しかったんだもん。生娘のうちは、いくらでも寂しさに耐えられるが、一度でも男の味を覚えた女性は、そうはいかないもの。
カラダが熱くなり、眠れない夜には、つい……出来心を起こしてしまっても致し方ないこと。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
結果は、まさかの全滅で……ロベルト以下の王子様たちは、王位継承権をはく奪され、別宮へ追いやられてしまった。
そのかわり、次の王位継承権者第1位がロッテンマイヤー公爵で、第2位がスカーレット公女となってしまう。
年齢的には、まだ18歳のスカーレット公女が、いちばん王位に近くなったということ。スカーレットとロベルト元殿下の婚約も白紙撤回され、これで安心して、世界へ旅立てるというもの。
当然のごとく、今まで上から目線だった王子様たち、とくにロベルトに至っては、毎日のようにラブコールがかかる。
それどころか、スカーレットの部屋目がけて、夜這いを仕掛けてくる。もちろん、スカーレットが張った結界に阻まれ、窓の桟に手を伸ばした途端、バチッバチッと火花が散り、それとともに、全裸で落下して、朝まで気を失っていたということが度々起こった。
王位は無理でも、スカーレットの王配になれば、今までと同じになると考えてのことだ。ロベルトは、北の塔の最上階に幽閉され、生涯をその塔の中で過ごすことになった。
このことがきっかけになり、誰もスカーレットに無茶な手出しはしなくなったことはいいこと。
ジェミニ国王陛下は、そんな義理の息子たちを前に、落ち込み床に臥せってしまう。いっそのこと、あの水晶玉をリリアーヌのように叩き割ってしまおうかと、思ったぐらいに。そんなことをすれば、たちまち世界から大批判を受け、ジェミニは孤立してしまう。
あからさまな手のひら返しに困惑するロッテンマイヤー家は、対策会議を行う。スカーレットは、その席上で、自らが聖女様に覚醒したこと、屋敷に結界を張ったことを吐露した。
「ええーっ!いつ?」
「18歳の誕生日パーティの夜?か次の日か?その次の日ぐらいかもしれない」
「3日間昏倒していた時だな」
確かにロッテンマイヤー家は異能持ちの家系なので、みんな沈黙しているが納得している。
「一応、おめでとう。これでジェミニ国も安泰だな」
父は、陛下にそのことを伝え、スカーレットは王城に呼び出されることになった。
「聞いたぞ。レディ・スカーレットが聖女様だという話を、あの水晶玉は割られてしまった後だから、どのように証明できるかは愚問だし、難しいと思うが、まずは聖女様の力を見せてくれ」
「では、割れた水晶玉の破片は残っておりますか?」
「うむ。国宝だったから、捨てずにひとつ残らず残してあるはずだ」
スカーレットの眼の前に粉々になった水晶玉の破片が運ばれてくる。
教会関係者も、王城に仕えていた他の貴族も、興味本位で駆けつけてきて、スカーレットは、水晶玉の前で大きく深呼吸をして、手を翳すと、割れたはずの水晶玉が金色の光を放ちながら、復元されていく。
その様を見ていた一同は、驚愕し、その場に跪く。
「聖女様、ありがとうございます」
「聖女様、聖女様」
「聖女様……」
「聖女様、万歳!」
跪いている父の姿を見つけると、スカーレットは駆け寄り思わず手をとり立たせる。
「お父様まで、やめてください。お父様がいらっしゃったから、わたくしは聖女に覚醒できたのです。これからもよろしくお願いします」
「これからどうする?外務大臣と諸国をめぐるのか?」
スカーレットとロッテンマイヤーは、チラリと国王陛下を見る。
「我が国、唯一のレディ・スカーレット聖女様を外へ出すことはまかりならん」
鶴の一声で、スカーレットの外国行きは、白紙に戻った。
数日後、スカーレットに新たな呼び名が加わった。その名は、プリンセスオブジェミニ。
聖女であり、公女でありながらジェミニの王位継承権者だと、広く内外に示された瞬間だった。
ジェミニ国王は、次期王位継承権者と自分との父子鑑定を始めた。それまでは、他人事と素知らぬふりをしていた王位継承権者たちは、一気に焦り出したのだ。
ジェミニ国王は、せっかく東の国から取り寄せた水晶玉をこのままみすみすと東の国に返してしまうことは、あまりにも、もったいない。
自分で、実際に試してみて、王子との関係を喜びたいと無邪気に考えてしまったことによる。
それに、リリアーヌのバカタレのせいで聖女判定に必要な国宝の水晶玉を失ったばかりだから、せめてもの慰めとして、東の国の珍しい水晶玉を試してみたいと思ったのだ。
「母上、本当に私は父上の子なのですか?今ならまだ間に合います!本当のことを教えてください」
息子に詰め寄られる母は、皆、眼を泳がせる。側妃として召し上げられたものの、なかなか陛下のお渡りがなく、つい……若気の至りで手短なものと関係したことが一度か二度は、身に覚えがある。
だって、寂しかったんだもん。生娘のうちは、いくらでも寂しさに耐えられるが、一度でも男の味を覚えた女性は、そうはいかないもの。
カラダが熱くなり、眠れない夜には、つい……出来心を起こしてしまっても致し方ないこと。
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結果は、まさかの全滅で……ロベルト以下の王子様たちは、王位継承権をはく奪され、別宮へ追いやられてしまった。
そのかわり、次の王位継承権者第1位がロッテンマイヤー公爵で、第2位がスカーレット公女となってしまう。
年齢的には、まだ18歳のスカーレット公女が、いちばん王位に近くなったということ。スカーレットとロベルト元殿下の婚約も白紙撤回され、これで安心して、世界へ旅立てるというもの。
当然のごとく、今まで上から目線だった王子様たち、とくにロベルトに至っては、毎日のようにラブコールがかかる。
それどころか、スカーレットの部屋目がけて、夜這いを仕掛けてくる。もちろん、スカーレットが張った結界に阻まれ、窓の桟に手を伸ばした途端、バチッバチッと火花が散り、それとともに、全裸で落下して、朝まで気を失っていたということが度々起こった。
王位は無理でも、スカーレットの王配になれば、今までと同じになると考えてのことだ。ロベルトは、北の塔の最上階に幽閉され、生涯をその塔の中で過ごすことになった。
このことがきっかけになり、誰もスカーレットに無茶な手出しはしなくなったことはいいこと。
ジェミニ国王陛下は、そんな義理の息子たちを前に、落ち込み床に臥せってしまう。いっそのこと、あの水晶玉をリリアーヌのように叩き割ってしまおうかと、思ったぐらいに。そんなことをすれば、たちまち世界から大批判を受け、ジェミニは孤立してしまう。
あからさまな手のひら返しに困惑するロッテンマイヤー家は、対策会議を行う。スカーレットは、その席上で、自らが聖女様に覚醒したこと、屋敷に結界を張ったことを吐露した。
「ええーっ!いつ?」
「18歳の誕生日パーティの夜?か次の日か?その次の日ぐらいかもしれない」
「3日間昏倒していた時だな」
確かにロッテンマイヤー家は異能持ちの家系なので、みんな沈黙しているが納得している。
「一応、おめでとう。これでジェミニ国も安泰だな」
父は、陛下にそのことを伝え、スカーレットは王城に呼び出されることになった。
「聞いたぞ。レディ・スカーレットが聖女様だという話を、あの水晶玉は割られてしまった後だから、どのように証明できるかは愚問だし、難しいと思うが、まずは聖女様の力を見せてくれ」
「では、割れた水晶玉の破片は残っておりますか?」
「うむ。国宝だったから、捨てずにひとつ残らず残してあるはずだ」
スカーレットの眼の前に粉々になった水晶玉の破片が運ばれてくる。
教会関係者も、王城に仕えていた他の貴族も、興味本位で駆けつけてきて、スカーレットは、水晶玉の前で大きく深呼吸をして、手を翳すと、割れたはずの水晶玉が金色の光を放ちながら、復元されていく。
その様を見ていた一同は、驚愕し、その場に跪く。
「聖女様、ありがとうございます」
「聖女様、聖女様」
「聖女様……」
「聖女様、万歳!」
跪いている父の姿を見つけると、スカーレットは駆け寄り思わず手をとり立たせる。
「お父様まで、やめてください。お父様がいらっしゃったから、わたくしは聖女に覚醒できたのです。これからもよろしくお願いします」
「これからどうする?外務大臣と諸国をめぐるのか?」
スカーレットとロッテンマイヤーは、チラリと国王陛下を見る。
「我が国、唯一のレディ・スカーレット聖女様を外へ出すことはまかりならん」
鶴の一声で、スカーレットの外国行きは、白紙に戻った。
数日後、スカーレットに新たな呼び名が加わった。その名は、プリンセスオブジェミニ。
聖女であり、公女でありながらジェミニの王位継承権者だと、広く内外に示された瞬間だった。
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