転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

文字の大きさ
42 / 79
現世:新たなる旅立ち

42.招かれざる客

しおりを挟む
 その頃、レストラン・アフロディーテでは、ちょっとした騒ぎになっていた。

 それは早じまいにしたにも関わらず、予約なしで王太子殿下が臨検に来られてしまって、ジェニファーは大わらわしている。

 臨検といっても、ただ食事しに来ただけなのであるが、店内は、警備の騎士だけで、ごった返しになっている。

 もう火も落としてしまった後で、できるものといえば、レンチンのオムレツぐらいなもの。こんな時、アイリーンなら、有り合わせの材料でパパッと作ってしまうのだろうが、オパールやシンイーでは、それが難しい。

 オパールは急ぎ、サファイアに連絡を取るも、すでにアムステルダム国に入国した後みたいで、なかなか返信が来ない。

「なんだ。ここは若い娘が女将をしていると聞いてきたのだが……。それでもこの店のことはよく聞いている。なかなか評判がいいところだと聞いているので、試しに来てみた。女将はどこかで会ったことがあるか?見覚えがあるのだが……?気のせいか?」

 そりゃそうでしょうね。エストロゲン家には何度も足を運ばれておりますもの。それにまだお小さいステファニーお嬢様を傷つけるようなことをなさっておいでで、よくも抜けしゃあしゃあとお見えになったものですわ。

「申し訳ございません。本日は、早仕舞いさせていただきまして、ご予約でしたら、いくらでもお受けできますのでございますが……」

「女。無礼であるぞ!」

 護衛の騎士が腰の剣に手をかけるも、クリストファーがそれを制する。

 クリストファーは、ひょっとしたら、この店にステファニーはいるのではないかと思っていたから、お忍びで、こっそり行くつもりが、以前と違って、今や王位継承権者第1位となってしまってからは、おいそれと単独行動で行くことが憚られ、つい大所帯となってしまったのだ。

 そういう後ろめたさもあり、……それにしても、この女将に見覚えがある。どこで会ったのだろうか?

「何か、簡単なものでもよい。何か食わせてやってもらえないだろうか?騎士たちもこの店へ行くことを前々から楽しみにしていたようなのだ」

「では、何ができるか、見て参ります。賄い程度のものなら、でも王太子殿下の御口に合うかどうかわかりません」

 やっとクリストファー殿下の前から解放されたジェニファーは、急ぎ厨房に行き、何かできないかと相談してみることに。

 長年、公爵家の侍女長として、働いてきた経験なんて、何の役にも立たないことを思いしらされる。

 早くお嬢様に帰ってきてもらわないと……、でも、隣国アムステルダムまで最短でも2週間はかかる。あの調子なら、殿下は毎日でも、満足なお料理を食べるまで帰らないだろうし、このままでは商売にも影響がある。

 どうしたものかと思案に暮れる。

 その時、バタバタと足音がしたと思ったら、アイリーン様が慌てた様子で厨房の奥の小部屋から、出てこられた。

 幼馴染だと紹介されたご令嬢もご一緒だったけど、ジェニファーの知らないご令嬢ということだけが心に引っかかる。

 だが、今は、そんなこと言っている場合ではない。クリストファー殿下が店に居座り、帰ってくれないからだ。

「何かあり合わせのもので、お出しできるようなものはないかと……困っていたのです」

 アイリーンは、冷蔵庫を開けたり、閉めたりして何か考え事をしたのち、

「お客様の人数は?」

「殿下と護衛の騎士が100名ほど?」

「100名!?」

 アイリーンは、冷蔵庫の中からコメを取り出し、洗っていく。100名を満腹させるのは、ご飯を炊くのが一番手っ取り早い。何を作ろうか、メニューはまだ考えていない。

 ハンバーグ、オムライス、カレーライス、スパゲティ、在庫を確認しながら、思いつく料理を列挙していく。

 そして思いつくまま、それらの料理を一気に作り始めた。



しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜

みおな
ファンタジー
かつて、稀代の魔術師と呼ばれた魔女がいた。 魔王をも単独で滅ぼせるほどの力を持った彼女は、周囲に畏怖され、罠にかけて殺されてしまう。 目覚めたら、三歳の幼子に生まれ変わっていた? 国のため、民のために魔法を使っていた彼女は、今度の生は自分のために生きることを決意する。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...