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侯爵令嬢として転生
9.デビュタント
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気が付くと12歳に戻っている。
第1王子様との婚約式まで1か月を切った。でも今世は、泣いて喚いて、お断りするつもりなのだ。
今世もお兄様と双子みたい。いつもべったりとジャクリーンにくっついている。そういえば、前世も前々世もずっとそうだった。
でも、今世で少し違うところがあるとすれば、エルモア兄様は双子に生まれたくなかったということなのに、来世では絶対に双子はイヤだと言い張っているところ。なぜかしらね。
ジャクリーンは、頼れるお兄様が大好きなのだけど。お兄様の側からすれば、そうでもないみたい。
1か月後、婚約式になったけど、朝から大泣きに大喚き散らし、「絶対イヤだ。」と訴えて、兄も一緒になって、「反対する。」と言ってくれたおかげで、無事婚約式は取りやめになった。超うれしい。
オルブライト陛下は、「また気が変わったらで、いいよ。」とおっしゃってくださり、その場はそれで終わる。
そして15歳になった時、前世で隣国のブルオード国の第1王子様の名前なんて言ったかしら?ヴィンセントだわ。そう、ヴィンセント様がプロポーズしてくださったのだわ。
だから今度は、隣国の王立学園に留学してみようかしらね。そのことを父のアナザーライト侯爵に告げて、許可を得ると、どういうわけか漏れなく付いてくるのがエルモアで、結局、兄と二人で留学することになった。
15歳で社交界デビューをして、それからブルオード国へ旅立つ予定。
社交界デビューのパートナーは前世、エドモンド王子だったけど今世は兄のエルモアと踊ってもらうことになる。
でも双子で踊ったら、美しすぎて、まぶしすぎて、さぞかし目立つことだろう。
ここに独身美男美女がおります、との宣伝も兼ねて二人で踊るため、ダンスの練習に余念がない。
いよいよデビュタント当日、白いドレスに白いタキシード姿の二人で手を取り合う。
二卵性双生児のはずが、二人で並んでいるととてもよく似ているように思える。
前々世のニッポンでなら、そのままウエディングのCMになれそうな二人。
1曲目が終わるとそのまま飲み物などのテーブルへ行くのだが、二人の前には、紳士、淑女が列を成していた。
そのまま30人ぐらいと踊り、さすがに疲れて、へたりこむ二人、それでもやはりエルモアの方が男性だからか、体力が違う。
ジャクリーンの前に飲み物を差し出してニッコリ微笑む。
「もう、今日は踊らない。足が棒になってしまったわ。」
「もう帰ろうか?でも、エドモンド殿下とまだ踊っていないけど、いいの?」
「は?嫌よ。あんな浮気者。」
「それは魅了魔法にかかっていた前世のお話で、今はまだかかっていないだろ?それにさっきから、こちらをチラチラ見ている視線があるよ。気にならない?」
「ならない。」
「強情だな。前世は今頃、エドモンド様ぁと追い掛け回していたというのに。」
「黒歴史だわ。」
はぁーっとため息をついて、立ち上がり、帰り支度をしていると、エドモンド王太子殿下から、
「レディ・ジャクリーン、よければ、ラストダンスをわたしと共に……。」
手を差し出されたが、一瞥しただけで、
「疲れておりますので。」
踵を返す。エルモアは申し訳なさそうに、エドモンド殿下に臣下の礼をとり、ジャクリーンと同じように帰路につく。
エドモンド殿下は、しょんぼりしていて、どうやら、ジャクリーンに一目ぼれした様子で、勇気を振り絞って、声をかけたが断られガッカリしている。
その様子を遠目から眺めている人物がいる。
ジャクリーンは、馬車に乗り込むなら、怒っている。それをなだめているのがエルモア。
「ええいっ!胸糞悪い!」
「まぁまぁ、そう言わないで、エドモンド殿下から声をかけられたい令嬢は大勢いるよ。それともあのまま無視されたかった?」
「どうかなぁ。じゃあもう一度会場に戻ろうかしら?」
「落ち着いたら、その方がいいかもよ。後で不敬だとかなんだとか、文句を着けられるかもしれないし。」
「エドモンド様がいなければ……、文句は付けられないわよね?」
もう一度会場に取って返す二人。
最奥に王太子の姿があり、もう一度戻ってきたジャクリーンの姿に目を細める。
王太子が入り口まで、必死に歩を進めているのに、その前にジャクリーンに接触してきた男性がいる。よく見ると従兄のマーロン・ブラウデン。筆頭公爵の嫡男でジャクリーンより2歳年上。
よく見ると、二人は笑顔で話している。そして、次の曲が始まる時、マーロンはジャクリーンに手を差し伸べて、ダンスを一緒に踊る。
軽やかなステップに息はピッタリな様子で、観客も大喜びしている。曲が終わり、エドモンドが二人の後を追うと、二人はそのまま休憩室が通じる廊下のところまで、来ている。後ろから、声をかけると気まずそうなマーロンの顔とほんのり頬をピンク色に染めたジャクリーン。
「マーロン、その女性を紹介してくれないか?」
「ああ。レディ・ジャクリーン・アナザーライト様だ。少し踊りつかれたご様子だったので、別室で軽い飲み物でもと思っていたところだ。こちらは、エドモンド王太子殿下です。私の従弟にあたります。」
「初めまして。先ほどは、失礼いたしました。ジャクリーンと申します。」
「ああ、初めまして、できれば私とダンスをと思いまして。」
「少し、休んでからなら大丈夫だと思います。」
「さっきのダンス、見事だったろ?とても靴擦れができているとは、思えないステップだったろ?デビュタントだというのに、見事なものだ。」
「では、同い年ですか?」
「コラ!令嬢の年齢を軽々しく言うものではない。さ、ジャクリーン入ろうか?」
エドモンドは、そのままシュンとして項垂れている。エドモンドは、そのまま部屋の前で、マーロンとジャクリーンが出てくるのを待つ。
第1王子様との婚約式まで1か月を切った。でも今世は、泣いて喚いて、お断りするつもりなのだ。
今世もお兄様と双子みたい。いつもべったりとジャクリーンにくっついている。そういえば、前世も前々世もずっとそうだった。
でも、今世で少し違うところがあるとすれば、エルモア兄様は双子に生まれたくなかったということなのに、来世では絶対に双子はイヤだと言い張っているところ。なぜかしらね。
ジャクリーンは、頼れるお兄様が大好きなのだけど。お兄様の側からすれば、そうでもないみたい。
1か月後、婚約式になったけど、朝から大泣きに大喚き散らし、「絶対イヤだ。」と訴えて、兄も一緒になって、「反対する。」と言ってくれたおかげで、無事婚約式は取りやめになった。超うれしい。
オルブライト陛下は、「また気が変わったらで、いいよ。」とおっしゃってくださり、その場はそれで終わる。
そして15歳になった時、前世で隣国のブルオード国の第1王子様の名前なんて言ったかしら?ヴィンセントだわ。そう、ヴィンセント様がプロポーズしてくださったのだわ。
だから今度は、隣国の王立学園に留学してみようかしらね。そのことを父のアナザーライト侯爵に告げて、許可を得ると、どういうわけか漏れなく付いてくるのがエルモアで、結局、兄と二人で留学することになった。
15歳で社交界デビューをして、それからブルオード国へ旅立つ予定。
社交界デビューのパートナーは前世、エドモンド王子だったけど今世は兄のエルモアと踊ってもらうことになる。
でも双子で踊ったら、美しすぎて、まぶしすぎて、さぞかし目立つことだろう。
ここに独身美男美女がおります、との宣伝も兼ねて二人で踊るため、ダンスの練習に余念がない。
いよいよデビュタント当日、白いドレスに白いタキシード姿の二人で手を取り合う。
二卵性双生児のはずが、二人で並んでいるととてもよく似ているように思える。
前々世のニッポンでなら、そのままウエディングのCMになれそうな二人。
1曲目が終わるとそのまま飲み物などのテーブルへ行くのだが、二人の前には、紳士、淑女が列を成していた。
そのまま30人ぐらいと踊り、さすがに疲れて、へたりこむ二人、それでもやはりエルモアの方が男性だからか、体力が違う。
ジャクリーンの前に飲み物を差し出してニッコリ微笑む。
「もう、今日は踊らない。足が棒になってしまったわ。」
「もう帰ろうか?でも、エドモンド殿下とまだ踊っていないけど、いいの?」
「は?嫌よ。あんな浮気者。」
「それは魅了魔法にかかっていた前世のお話で、今はまだかかっていないだろ?それにさっきから、こちらをチラチラ見ている視線があるよ。気にならない?」
「ならない。」
「強情だな。前世は今頃、エドモンド様ぁと追い掛け回していたというのに。」
「黒歴史だわ。」
はぁーっとため息をついて、立ち上がり、帰り支度をしていると、エドモンド王太子殿下から、
「レディ・ジャクリーン、よければ、ラストダンスをわたしと共に……。」
手を差し出されたが、一瞥しただけで、
「疲れておりますので。」
踵を返す。エルモアは申し訳なさそうに、エドモンド殿下に臣下の礼をとり、ジャクリーンと同じように帰路につく。
エドモンド殿下は、しょんぼりしていて、どうやら、ジャクリーンに一目ぼれした様子で、勇気を振り絞って、声をかけたが断られガッカリしている。
その様子を遠目から眺めている人物がいる。
ジャクリーンは、馬車に乗り込むなら、怒っている。それをなだめているのがエルモア。
「ええいっ!胸糞悪い!」
「まぁまぁ、そう言わないで、エドモンド殿下から声をかけられたい令嬢は大勢いるよ。それともあのまま無視されたかった?」
「どうかなぁ。じゃあもう一度会場に戻ろうかしら?」
「落ち着いたら、その方がいいかもよ。後で不敬だとかなんだとか、文句を着けられるかもしれないし。」
「エドモンド様がいなければ……、文句は付けられないわよね?」
もう一度会場に取って返す二人。
最奥に王太子の姿があり、もう一度戻ってきたジャクリーンの姿に目を細める。
王太子が入り口まで、必死に歩を進めているのに、その前にジャクリーンに接触してきた男性がいる。よく見ると従兄のマーロン・ブラウデン。筆頭公爵の嫡男でジャクリーンより2歳年上。
よく見ると、二人は笑顔で話している。そして、次の曲が始まる時、マーロンはジャクリーンに手を差し伸べて、ダンスを一緒に踊る。
軽やかなステップに息はピッタリな様子で、観客も大喜びしている。曲が終わり、エドモンドが二人の後を追うと、二人はそのまま休憩室が通じる廊下のところまで、来ている。後ろから、声をかけると気まずそうなマーロンの顔とほんのり頬をピンク色に染めたジャクリーン。
「マーロン、その女性を紹介してくれないか?」
「ああ。レディ・ジャクリーン・アナザーライト様だ。少し踊りつかれたご様子だったので、別室で軽い飲み物でもと思っていたところだ。こちらは、エドモンド王太子殿下です。私の従弟にあたります。」
「初めまして。先ほどは、失礼いたしました。ジャクリーンと申します。」
「ああ、初めまして、できれば私とダンスをと思いまして。」
「少し、休んでからなら大丈夫だと思います。」
「さっきのダンス、見事だったろ?とても靴擦れができているとは、思えないステップだったろ?デビュタントだというのに、見事なものだ。」
「では、同い年ですか?」
「コラ!令嬢の年齢を軽々しく言うものではない。さ、ジャクリーン入ろうか?」
エドモンドは、そのままシュンとして項垂れている。エドモンドは、そのまま部屋の前で、マーロンとジャクリーンが出てくるのを待つ。
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