前世記憶持ちの悪役令嬢は聖女様呼ばわりされることが嫌で嫌で仕方がない～乙女ゲームのヒロインにゲームクリアしてもらうために奮闘する

青の雀

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新しい出会い

25.非常口

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　後1週間で夏休みが始まる。１学期の成績が発表されると、同率１位でキャサリン王女とジャクリーン、次いで２位がエルモア、やはり前々々世の医者陣は強い。それに加え、前々世では、ジャクリーンはお妃教育を経験している身なので、その知識もバカにならない。

　エルモアとキャサリン王女はステディな関係になっている。相手が王女殿下であるからか、二人の仲は公認で初日のような寮母は一人もいなく、不純異性交遊とはみなされないでいる。

　エルモアは卒業したら、官吏登用試験を目指し、ブルオード国で就職するつもりのようだ。

　今回ばかりは、ゲームクリアしてほしい。だってみんな笑顔で幸せになってほしいから。前世も幸せだったけど、結局、GAME　OVER　になってしまったから。でもマーロン様の本性が知れて、今世は良かったことなのかもしれない。

　あのままズルズル結婚していたら、隠し子がわんさか出てくるかもしれなかったから。

　エルモアは夏休み、キャサリン嬢と二人で過ごすため、オルブライト国に帰らないらしい。

　ジャクリーンだけが帰る予定なのだが、侍女と護衛の騎士だけが馬車で帰ることが虚しい。

　マンションのほかの出入り口はと言えば、この部屋はもともと角部屋だったのでベランダの角を曲がったところから、あるにはあるが……。その窓とジャクリーンのアナザーライト家のクローゼットをくっつければ、移動できなくもない。

　でも、使用人にマンションの存在が知られてしまう。どうせ、車輪が壊れた時、ドワーフのオジサンが来てくれたことで、バレているようなものだけど。

　ま、いいっか。みんなが楽に安全に移動できるのなら、今更バレたところで、どうってことないよね？

　それとも今、出入りしているベランダには非常口があり、避難梯子が設置されているけどこれを伝って、出入りもできるような気がする。

　この方が不特定多数を？いや、特定多数の誤りだけど部屋の中に入れるよりはマシかもしれない。

　一応、女性の部屋だし、まあ、今のところ、シャルマン様との愛の巣になってはいるけど。

　問題は、アナザーライト家のどこにそれを仕掛けるか。天候が悪い時に雨に濡れるのは、ごめんだから。できれば屋内で、目立たないところがいい。

　とりあえず避難梯子を使って、アナザーライトのジャクリーンの部屋のクローゼットに行ってみる。

　クローゼットの中から、誰もいないことを確認して、扉を開ける。

　あのマンションの方が鳴れているから、机は、書斎机の方が使い勝手がよく今では、マンションの机でしか勉強しない。ベッドも、寮のベッドにほとんど寝ないで、マンションのベッドの方が、スプリングが利いていて、寝やすい。何よりもシャルマン様という抱き枕があるからかもしれない。

　懐かしいはずの自分の部屋がなぜだか他人の部屋のようにも思えてくる。

　そろりと廊下に出てみた。誰もいない。廊下を降り、ウロウロとしているとお母さまに見つかった。

　「あらー？もうジャッキーちゃんは夏休みに入ったの？エルモアは一緒じゃないの？」

　「いえいえ、ちょっと様子見がてら戻ってきたのですけど、うーん。お父様はまだで
ございますわよね？」

　「そうなのよ。今日は遅くなるみたいなことを言っていらしたわ。」

　「じゃ、またあとで、出直してきますわ。」

　「え？もう帰っちゃうの？」

　ジャクリーンは、実母のことをあまり信用していない。美人かもしれないけど、頭のネジが緩い。

　こういうことは、まだお父様の方が信頼できる。

　それで、そのままクローゼットの中から避難梯子を通って、マンションの部屋に入ると、もうシャルマン様が来ていらした。

　慌てて、シャルマン様にお茶をお出しする。

　「夏休み、規制するのにどうしようかと思って。」

　「どうする？って？」

　「わたくしだけが馬車にも乗らず移動できるのが心苦しくて、それで、みんなとこの部屋の中を通らずにアナザーライト家に帰れないものかを思案しておりましたの。」

　「うむ。そうだね。マンションの部屋の部分ではない外側の……、それならあっち側のベランダを遣えばいいのでは？」

　ああ、やっぱりシャルマン様はこの部屋が角部屋だということを気づいていらっしゃったみたい。

　「でも、それなら部屋の中が見えるのではないかしら？」

　「カーテン引けば、見えないよ。」

　「そうよね？それもいいわよね。そしたら、馬車も馬だけ切り離してオルブライト家に戻せるし。非常口の避難梯子を遣うのはどうかな？と思っていたのよ。」

　「へ？そんなものあった？」

　「うん。裏のベランダの隅にあるのだけど、さっき、それを遣ってアナザーライトの家に行ってきたのだけど、お父様がまだ帰っていらっしゃらなくて。」

　「今日はまたあとで行くつもりなのか？」

　「え？でもすぐ帰ってくるわ。待ってて、独り寝なんてイヤよ。」

　「わかったよ。いくら親父さんでも婚約者が一緒に寝ていると知ったら、気が悪いだろ？後で来るよ。それに今日のは、イボイボを買ってきたのだ。」

　「そう、楽しみにしているわ。また、後でね。」

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