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 ツタンカーメン族の長だけが、俺の愛人になるのかと思っていたところ、なんと!全員が愛人になってくれるそうだ。おお!これはハーレムか?毎晩、違う女を抱ける?たとえ、ツタンカーメンは黄金人だが、水に浮かなくても人魚として生きられなくても、これはぜひいただいておこう。

 「ぬし様、今宵はわちきを抱いて、ありんす。」

 なんだ!? そんな遊郭のような言葉は?
 一気に、前世ニッポン人だったころの記憶がよみがえる。俺は遊郭など一度も言ったことがないしがない安サラリーマンだった。女には縁がなく、童貞を喪失した相手が人魚だっただけで、人魚の息子として転生してしまったのだ。

 うっひょーっ!役得だ。

 ツタンカーメン族と人魚には、共通点があることがわかったのである。ツタンカーメン族には、金。黄金は毒にも薬にもなる。人魚の鱗も毒にも薬にもなる。俺は最高の相手と出会ったのだ。

 お互いが本能を使って、探し当てた相手であるとわかった夜は燃えたぜ。

 砂の上に建てた金閣寺?金堂?を砂に隠すように命じて、いったんツタンカーメンをおふくろに会わすことにしたのだ。

 もし、沈んだら、俺の魔法を全部使ってもいいと思える相手だったから。バーバラには悪いけど、俺は本気だ。

 金は水に沈む。ツタンカーメンは意外にも浮いたのである。泳ぐことができなかったので、砂漠だからね。泳ぎを教えて、一人ずつ俺がお姫様抱っこをして連れて行くことにする。こういう時に浮袋かビーチ板があれば、便利だと思うが仕方がない。息継ぎができるかどうか心配だったので、顔の周りだけ。空気の袋で覆ってやった。

 俺の嫁は、誰でもおふくろに預ける。それが条件で、俺は地上にいる。
 俺が抱いた女はすべて、水中でも息ができたが、まだ閨を共にしていない女は、目は開けられても息ができないらしく、その日から、俺は頑張った。

 それを思えば、バーバラは人魚にあこがれるだけあって、人魚の素質があったようだ。まだ閨を共にしていないのに、水中で息ができるのであるから、前世はきっと人魚だったに違いない?

 おふくろのところへ、次々とツタンカーメンを送り込んでいたら、バーバラがふくれっ面で文句を言ってきた。

 「俺の嫁を虐めたら、食うからな。」

 「マーマンに食われるなら、本望です。」

 げ!気持ち悪い女だ。
 誰かほかの奴に食ってもらおう。

 誰か適当に空腹の奴がいないか探していると、おふくろが

 「バーバラなりの愛情表現なのだから、目くじら立てなさんな。もしかして、ツタンカーメンを虐めるようなことがあれば、その時は、アタシが食べてあげるわよ。」

 俺の嫁のことは、おふくろに任せてあるので、黙って、騎士団に戻る。ツタンカーメンは、そのうち、行き来ができるようになったようで、盗賊討伐のための水路から、ちょくちょく砂漠と海底を行ったり来たりするようになったのである。そして、砂漠で悪党どもがいないかを監視してくれるようになったのだ。

 騎士団に戻った俺が次に向かったのが、海だ。最初から、わかっていたら、ついでに討伐してくるものを。騎士団は俺が留守をしている間、野営をしていたのだ。金閣寺にオアシスに河川があるから、今までの野営と異なり、格段に処遇が良い。

 砂漠にまた、船を出し、馬を乗せ、大海原に向かう。

 今度の盗賊は、船を自在に扱う海賊のような仕事(?)をしているようだ。

 俺は今までのような船に仕掛けをすることは止める。相手は船乗りだから、船のプロフェッショナル。下手な小細工などすぐ見破られるからだ。馬を乗せている船を、陸地近くの浜辺に停留させ、騎士の乗る船だけを置きに向かわせる。

 あいつら、俺のマーメイド号に向かって、大砲を撃ってきやがったが、風魔法でうまくかわす。

 水魔法で龍を作り、反撃する。龍の咆哮は、雷魔法を仕込んでいる。とどめに、俺は、鱗を一枚海に投げ入れる。合図だ。とばかりにクラーケンが海底から顔を出し、海賊船の船体に巻き付き、沈めていく。

 沈没前に海に飛び込んだ海賊は、人魚が食らう。その人魚の群れの中にバーバラの姿を見つけたのだ。食っているのかどうか、わからないが他の人魚の群れと行動を共にしているようだ。

 俺の前では、気持ち悪いだけのメスガキだけど、いいところがあるではないか!

 フィリップ団長も気づいたみたいで

 「今、確かにバーバラ姫様を見たような気がする?はて?しばらく王宮に出仕していないから、ジュゴンをバーバラ姫と見間違えたか?でもなぜ?バーバラ姫様に見えたのだろう?」

 首をかしげているが、何も言わない。

 「きっと団長は、ご家族を恋しく思っていらっしゃるから、王都にいるバーバラ姫様の幻が見えたのでしょう。」

 マークが助け船を出してくれた。

 「うむ。確かに、今まではこんなことはなかったが、ツタンカーメン族とイチャついているマーマンのせいで、嫁さんを思い出したのかもしれんな。」

 「え?俺のせいですか?」

 わざと驚いてみせる。

 そして俺たちは、海賊討伐とアジトの捜索を終わらせてから、王都へ向け出発したのである。
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