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学園
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ロバート・ローランドは失敗したのだが、何がいけなかったのかいまだにわからずにいたのである。
別宮で次の日、目覚めたら、ジャッキーの姿はなく、寝室のベッドは使われた形跡がないことから昨夜のうちに帰ったことが判明したのである。
さよならも言わずに帰ってしまったことが解せない。ジャッキーは、そんな娘ではない。
何か怒らせるようなことをしたか?
とにかく、王都へ戻って、事情を聴こうとしたが、王都の屋敷があったと思われる場所は、既に解約済みで空き地の看板がぶら下がっていたのだ。当然のことながら、大学へも中退の手続きが取られ、どこかの大学に転入したらしいということは、わかったが行き先は不明のままであったのだ。
それは確かに避暑地に招いて、ゆくゆくは、ジャッキーを頂こうとは思っていたが、何も初日から襲うなどとは、考えてもいない。それを初日の夜に突然、帰ってしまうなんて、どうしたのだろう?
あの日は、久しぶりに身も心も満たされ、少々寝つきは悪かったが、ぐっすり寝られ満足していたというのに。
彼女に逃げられたことがバレると、また母上のヒステリーが酷くなり、父上の女狂いが始まる。それで父上に子供でもできたとあらば、王位継承権の地位まで危ぶまれるというもの。
思い切って、隣国の王城を訪ねてみることにしたのである。
ジャッキーのように、転移魔法ができたらいいのだが、そうだ!あの美味しいスイーツをアイテムボックス持ちに持たせて、持って行こう。きっと喜ぶぞ。
移動手段は、馬車か馬、馬で行くと早いが、お尻が痛くなるし、ヘルニアが心配だし、馬車は揺れるし、悩んだ挙句、馬で行くことにした。一刻も早くジャッキーに会って、どうして帰ってしまったかを聞き出したいから。
コーネリアル国の王都に到着する。ローランド国と違い、海があるから、浜風が気持ちよく吹いている。
王城に着いて、王女殿下に面会したいと申し込んでも、「何用か?」とあのラブホの支配人ではない執事だった男が前面に出てきて、会わせてくれない。
「なぜ、あの夜、帰ってしまわれたのか、理由だけでもお聞かせ願いたい。」と粘ったところ、最後に出されたホットチョコレートの中身が毒か薬かの混ぜ物が入っていたので、帰ったという返事が来たのである。
ウソ!同じものをロバートも飲んだが、そんなことは気づかなかった。すぐ避暑地に戻り、料理長を締め上げたら、あっさり、陛下はいつもあのホットチョコレートをご所望されるから、同じものをお出ししました。と白状する。
で、あのホットチョコレートに何を入れた?としつこく食い下がると、なんと媚薬を仕込んで入れたと白状したのだ。
それをいち早く察知したジャッキーは、あの日、早々に帰ったのだとわかる。
それにしても、ジャッキーには、ますます叶わないと思ってしまう。薬学や薬、毒にまで精通している王女殿下など見たことがない。ますますジャッキーのことを好きになっても、もうジャッキーは手の届かないところへ行ってしまった後。
もう取り返しがつかないということに、まだ気づかないでいる。
そうこうしている間に、夏休みが終わり、フランドル地方の新しい大学に転入することが決まったのだ。ローランド大学から、一般教養などの履修中及び履修免除のデータが新しい大学に送られたので、スムーズに1年生の後期からこちらのフランドル大学で学べるようになったのである。
ベルソ村のだだっ広い空き地にあの別宮を出し、そこから通うことにする。
こちらは、ラブホなどの不埒な噂は出てこず、隠蔽魔法もかけず平穏そのもの。異空間通路は、そのまま王城と繋がったままなので、城の者も自分の国の一部であるから、出入りが頻繁である。
女官や護衛には、シフト表があり、変形労働時間制になっている。ベルソムラで朝夕3時間勤務をした後は、次の日は休日でその次の日は王城で8時間労働するというようになっている。
ただ王女殿下に付いている影は、どのような労働時間になっているかは、把握できていない。
フランドル大学では、身分や名前を偽らず、ジャクリーン・コーネリアルの本名で通学することにしたのである。
ローランド大学では、伯爵令嬢の触れ込みで入学しても、すぐにバレてしまったから、それでロバート王太子殿下に目をつけられてしまったのだから、今回は、本名で行く。もう一人の女性として、愛していただかなくてもけっこうですわ。どうせ、政略と大して変わらないですもの。
まだ政略のほうかもマシかもしれない。政略で相手の女性に媚薬など仕込まないわよ。
ロバートはいくら、「知らなかった」と謝罪しても、どうだかわからない。そんなこと後から取ってつけた言い訳の可能性が高いわ。だいたい未婚の婚約者でも恋人でもない女性を、あんなふしだらな館へ連れて行き、あのネグリジェだって、恥ずかしくなるような代物なのよ。
ベルソ村に出した別宮のことは棚に上げている。めったに外観を目にすることがないからわからないでいる。お城の使用人は、住めるだけでありがたいと思っているし、ジャッキー自身の出入りは、すべて異空間を通っていくか、転移魔法でひとっとびするから外観がどんなふうに他から見えるか考えていない。
そんなこんなで、フランドル大学に素性を出して、通うことに、最初オリエンテーションから受ける。少し、ローランド大学と勝手は違うが、似たようなもので必須に語学と一般教養、専門教養の概論をとり、余った時間は、各自自由研修で研究室を覗きに行ってもいいらしい。
ジャッキーがジャクリーンの名前で大学に通うことになってから、どうもキャンパス内がうるさい。王女殿下にすり寄ってくるものが多数いるからで、婿養子に来たがる者ばかりではない。将来の出世や仕事に利用しようと思う輩が大勢いて、少々ウザイ。
これならやはり、素性を伯爵令嬢にした方がマシだったかもしれない。
それにその大学には、公爵令嬢が既に在学していて、今までは、その公爵令嬢が王女様気取りで学内を闊歩していたらしい。それが本物の王女殿下が来られてからは、形無しになり、シュンとしていたらまだいいのだが、妙に対抗心を燃やされてくるから、たまったものではありません。
ジャッキーは普段着で通学しているにもかかわらず、その公爵令嬢は、毎日、夜会かと思われるような豪華なドレスが通学しているのだ。今までは、それで自分がチヤホヤされていたからだと思うけど、今は本物が質素で偽物が豪華という逆転の構図になっている。
ジャッキーは、だって勉強しに来ているのですもの、あの令嬢は何が目的で来られているのかしらね。きっと、男漁りに違いない。
このフランドル大学は王立大学なのであるが、場所がフランドル領に立っているもので、その名前が付いている。彼女の名前は、エリーゼ・フランドル公爵令嬢で、学園には領地の家から通っているらしい。
それでドレスをいっぱい持っているのね。
ある日のこと、ジャッキーはエリーゼから声をかけられる。わ!宣戦布告かしら?
「ジャクリーン王女殿下、初めまして。わたくしエリーゼ・フランドルと申す公爵令嬢なのでございますが、今度、領地で舞踏会を行いますので、王女様にできればご臨席を賜りたく……。」
「お断りします。」
「え?田舎貴族の舞踏会など出られないと仰せでございましょうか?」
「いいえ、そういうことであれば、まずは王城の父国王に判断を仰ぐのが筋でございますから、わたくしの一存で一貴族の舞踏会に参加することはできませんのよ。」
ジャッキーは、こういうめんどくさい話は嫌いだ。だから、即決でお断りしたので、田舎者だからとバカにしたわけではない。
「それでは、同じ学友として、非公式の形でも無理でございましょうか?」
「わたくしとエリーゼ様は、今が初対面でございますれば、そのような令嬢をご学友と申せますでしょうか?同じ学部でもなければ、語学のクラスも異なります。ただ、王女とたまたま同じ大学だからと言う理由だけで、参加を強要される筋合いではございませんわね。」
言い方は、優しいけど、内容はキツイ。
エリーゼ様は、いつもの強気と違い、ガックリと肩を落とされ、その横をすり抜けて、次の講義の教室に向かう。
あんなケバイ公爵令嬢と衣装対決なんて、困るもの。対外的に王女は豪華な衣装を着ているが、いつもは本当に質素な普段着しか着ない。別宮のクローゼットと王城のクローゼットは繋がっているが、そんな豪華な衣装は、公式行事以外は袖を通さないことが普通なのだ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
エリーゼは、フランドル公爵邸の中で、困っている。
兄に王女殿下とご学友だと言ってしまったから、今度の舞踏会にお誘いします。と断言した以上、今さら王女様は来られないとは、言いにくい。
確かに同じ大学の学生というだけで、王女様と個人的に親しくもなんともないから、それに王女様は、公の人で一般人とは異なる。だから不用意に誘ったエリーゼが悪い。
同じ大学の学生という身分だから、つい気安くお声がけ仕舞ったことも失敗したのである。
やはり、お父様を介して、国王陛下に話を通していただこうかしら。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
今日は、お天気がいいので、ベルソ村の周辺をお散歩してみようかしら。子供の頃はお散歩が日課だったけど、最近は、とんとご無沙汰しているのである。
あの頃はお母様と体幹を鍛えるのを競争するように必死でやっていましたわ。今となってはいい思い出だけど。
おかげでいつもは転移魔法での移動だけれど、今でも少々歩いたぐらいでは、息も切れないし、ずいぶん丈夫になったと思うわ。
体幹は体の基本だから、屋台骨みたいなもの。体が健康だと心も健康になる。心が健康だと、正常な判断ができるようになるから、すべてうまくいく。
お散歩途中に偶然、マーカス兄さまに出会ってしまった。
「やぁ!ジャッキー、元気だった?」
「マーカス兄さま、どうされましたの?」
「ジャッキー付きの護衛を任じられてさ、これからベルソ村へ行くところだったんだけど、どうしてここにいるの?」
「お散歩ですわ。」
「へぇー、まだ続けているんだ。偉いね。」
「うふふ。今日はお天気がいいから、久しぶりにね。」
そのまま、とりとめもないことを話して、ベルソ村に戻るとき、突然、マーカス兄さまが
「そう言えば、今、ジャッキーが通っている大学のある所、俺の学園時代の同級生の領地にあるんだよ。そういえば、今度舞踏会をすると言っていたけど、ジャッキー行くの?」
「行かないわ。お誘いを受けたけど、王女としてはいけないもの。」
「だったら、俺の妹として行けばいいよ。たまにはジャッキーも気晴らしが必要だと思うぜ。」
別宮で次の日、目覚めたら、ジャッキーの姿はなく、寝室のベッドは使われた形跡がないことから昨夜のうちに帰ったことが判明したのである。
さよならも言わずに帰ってしまったことが解せない。ジャッキーは、そんな娘ではない。
何か怒らせるようなことをしたか?
とにかく、王都へ戻って、事情を聴こうとしたが、王都の屋敷があったと思われる場所は、既に解約済みで空き地の看板がぶら下がっていたのだ。当然のことながら、大学へも中退の手続きが取られ、どこかの大学に転入したらしいということは、わかったが行き先は不明のままであったのだ。
それは確かに避暑地に招いて、ゆくゆくは、ジャッキーを頂こうとは思っていたが、何も初日から襲うなどとは、考えてもいない。それを初日の夜に突然、帰ってしまうなんて、どうしたのだろう?
あの日は、久しぶりに身も心も満たされ、少々寝つきは悪かったが、ぐっすり寝られ満足していたというのに。
彼女に逃げられたことがバレると、また母上のヒステリーが酷くなり、父上の女狂いが始まる。それで父上に子供でもできたとあらば、王位継承権の地位まで危ぶまれるというもの。
思い切って、隣国の王城を訪ねてみることにしたのである。
ジャッキーのように、転移魔法ができたらいいのだが、そうだ!あの美味しいスイーツをアイテムボックス持ちに持たせて、持って行こう。きっと喜ぶぞ。
移動手段は、馬車か馬、馬で行くと早いが、お尻が痛くなるし、ヘルニアが心配だし、馬車は揺れるし、悩んだ挙句、馬で行くことにした。一刻も早くジャッキーに会って、どうして帰ってしまったかを聞き出したいから。
コーネリアル国の王都に到着する。ローランド国と違い、海があるから、浜風が気持ちよく吹いている。
王城に着いて、王女殿下に面会したいと申し込んでも、「何用か?」とあのラブホの支配人ではない執事だった男が前面に出てきて、会わせてくれない。
「なぜ、あの夜、帰ってしまわれたのか、理由だけでもお聞かせ願いたい。」と粘ったところ、最後に出されたホットチョコレートの中身が毒か薬かの混ぜ物が入っていたので、帰ったという返事が来たのである。
ウソ!同じものをロバートも飲んだが、そんなことは気づかなかった。すぐ避暑地に戻り、料理長を締め上げたら、あっさり、陛下はいつもあのホットチョコレートをご所望されるから、同じものをお出ししました。と白状する。
で、あのホットチョコレートに何を入れた?としつこく食い下がると、なんと媚薬を仕込んで入れたと白状したのだ。
それをいち早く察知したジャッキーは、あの日、早々に帰ったのだとわかる。
それにしても、ジャッキーには、ますます叶わないと思ってしまう。薬学や薬、毒にまで精通している王女殿下など見たことがない。ますますジャッキーのことを好きになっても、もうジャッキーは手の届かないところへ行ってしまった後。
もう取り返しがつかないということに、まだ気づかないでいる。
そうこうしている間に、夏休みが終わり、フランドル地方の新しい大学に転入することが決まったのだ。ローランド大学から、一般教養などの履修中及び履修免除のデータが新しい大学に送られたので、スムーズに1年生の後期からこちらのフランドル大学で学べるようになったのである。
ベルソ村のだだっ広い空き地にあの別宮を出し、そこから通うことにする。
こちらは、ラブホなどの不埒な噂は出てこず、隠蔽魔法もかけず平穏そのもの。異空間通路は、そのまま王城と繋がったままなので、城の者も自分の国の一部であるから、出入りが頻繁である。
女官や護衛には、シフト表があり、変形労働時間制になっている。ベルソムラで朝夕3時間勤務をした後は、次の日は休日でその次の日は王城で8時間労働するというようになっている。
ただ王女殿下に付いている影は、どのような労働時間になっているかは、把握できていない。
フランドル大学では、身分や名前を偽らず、ジャクリーン・コーネリアルの本名で通学することにしたのである。
ローランド大学では、伯爵令嬢の触れ込みで入学しても、すぐにバレてしまったから、それでロバート王太子殿下に目をつけられてしまったのだから、今回は、本名で行く。もう一人の女性として、愛していただかなくてもけっこうですわ。どうせ、政略と大して変わらないですもの。
まだ政略のほうかもマシかもしれない。政略で相手の女性に媚薬など仕込まないわよ。
ロバートはいくら、「知らなかった」と謝罪しても、どうだかわからない。そんなこと後から取ってつけた言い訳の可能性が高いわ。だいたい未婚の婚約者でも恋人でもない女性を、あんなふしだらな館へ連れて行き、あのネグリジェだって、恥ずかしくなるような代物なのよ。
ベルソ村に出した別宮のことは棚に上げている。めったに外観を目にすることがないからわからないでいる。お城の使用人は、住めるだけでありがたいと思っているし、ジャッキー自身の出入りは、すべて異空間を通っていくか、転移魔法でひとっとびするから外観がどんなふうに他から見えるか考えていない。
そんなこんなで、フランドル大学に素性を出して、通うことに、最初オリエンテーションから受ける。少し、ローランド大学と勝手は違うが、似たようなもので必須に語学と一般教養、専門教養の概論をとり、余った時間は、各自自由研修で研究室を覗きに行ってもいいらしい。
ジャッキーがジャクリーンの名前で大学に通うことになってから、どうもキャンパス内がうるさい。王女殿下にすり寄ってくるものが多数いるからで、婿養子に来たがる者ばかりではない。将来の出世や仕事に利用しようと思う輩が大勢いて、少々ウザイ。
これならやはり、素性を伯爵令嬢にした方がマシだったかもしれない。
それにその大学には、公爵令嬢が既に在学していて、今までは、その公爵令嬢が王女様気取りで学内を闊歩していたらしい。それが本物の王女殿下が来られてからは、形無しになり、シュンとしていたらまだいいのだが、妙に対抗心を燃やされてくるから、たまったものではありません。
ジャッキーは普段着で通学しているにもかかわらず、その公爵令嬢は、毎日、夜会かと思われるような豪華なドレスが通学しているのだ。今までは、それで自分がチヤホヤされていたからだと思うけど、今は本物が質素で偽物が豪華という逆転の構図になっている。
ジャッキーは、だって勉強しに来ているのですもの、あの令嬢は何が目的で来られているのかしらね。きっと、男漁りに違いない。
このフランドル大学は王立大学なのであるが、場所がフランドル領に立っているもので、その名前が付いている。彼女の名前は、エリーゼ・フランドル公爵令嬢で、学園には領地の家から通っているらしい。
それでドレスをいっぱい持っているのね。
ある日のこと、ジャッキーはエリーゼから声をかけられる。わ!宣戦布告かしら?
「ジャクリーン王女殿下、初めまして。わたくしエリーゼ・フランドルと申す公爵令嬢なのでございますが、今度、領地で舞踏会を行いますので、王女様にできればご臨席を賜りたく……。」
「お断りします。」
「え?田舎貴族の舞踏会など出られないと仰せでございましょうか?」
「いいえ、そういうことであれば、まずは王城の父国王に判断を仰ぐのが筋でございますから、わたくしの一存で一貴族の舞踏会に参加することはできませんのよ。」
ジャッキーは、こういうめんどくさい話は嫌いだ。だから、即決でお断りしたので、田舎者だからとバカにしたわけではない。
「それでは、同じ学友として、非公式の形でも無理でございましょうか?」
「わたくしとエリーゼ様は、今が初対面でございますれば、そのような令嬢をご学友と申せますでしょうか?同じ学部でもなければ、語学のクラスも異なります。ただ、王女とたまたま同じ大学だからと言う理由だけで、参加を強要される筋合いではございませんわね。」
言い方は、優しいけど、内容はキツイ。
エリーゼ様は、いつもの強気と違い、ガックリと肩を落とされ、その横をすり抜けて、次の講義の教室に向かう。
あんなケバイ公爵令嬢と衣装対決なんて、困るもの。対外的に王女は豪華な衣装を着ているが、いつもは本当に質素な普段着しか着ない。別宮のクローゼットと王城のクローゼットは繋がっているが、そんな豪華な衣装は、公式行事以外は袖を通さないことが普通なのだ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
エリーゼは、フランドル公爵邸の中で、困っている。
兄に王女殿下とご学友だと言ってしまったから、今度の舞踏会にお誘いします。と断言した以上、今さら王女様は来られないとは、言いにくい。
確かに同じ大学の学生というだけで、王女様と個人的に親しくもなんともないから、それに王女様は、公の人で一般人とは異なる。だから不用意に誘ったエリーゼが悪い。
同じ大学の学生という身分だから、つい気安くお声がけ仕舞ったことも失敗したのである。
やはり、お父様を介して、国王陛下に話を通していただこうかしら。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
今日は、お天気がいいので、ベルソ村の周辺をお散歩してみようかしら。子供の頃はお散歩が日課だったけど、最近は、とんとご無沙汰しているのである。
あの頃はお母様と体幹を鍛えるのを競争するように必死でやっていましたわ。今となってはいい思い出だけど。
おかげでいつもは転移魔法での移動だけれど、今でも少々歩いたぐらいでは、息も切れないし、ずいぶん丈夫になったと思うわ。
体幹は体の基本だから、屋台骨みたいなもの。体が健康だと心も健康になる。心が健康だと、正常な判断ができるようになるから、すべてうまくいく。
お散歩途中に偶然、マーカス兄さまに出会ってしまった。
「やぁ!ジャッキー、元気だった?」
「マーカス兄さま、どうされましたの?」
「ジャッキー付きの護衛を任じられてさ、これからベルソ村へ行くところだったんだけど、どうしてここにいるの?」
「お散歩ですわ。」
「へぇー、まだ続けているんだ。偉いね。」
「うふふ。今日はお天気がいいから、久しぶりにね。」
そのまま、とりとめもないことを話して、ベルソ村に戻るとき、突然、マーカス兄さまが
「そう言えば、今、ジャッキーが通っている大学のある所、俺の学園時代の同級生の領地にあるんだよ。そういえば、今度舞踏会をすると言っていたけど、ジャッキー行くの?」
「行かないわ。お誘いを受けたけど、王女としてはいけないもの。」
「だったら、俺の妹として行けばいいよ。たまにはジャッキーも気晴らしが必要だと思うぜ。」
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