王配狙いで悪役令嬢にされ婚約破棄~社会勉強のため伯爵家へ養女に行った王女殿下が立派な女王陛下となるまで

青の雀

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 バーナード国王の遺言で、ジャクリーンが女王として、王位に就くことが決まる。もうこれでレオンハルト様との夫婦仲は最悪。

 別にジャクリーンが王位を望んだわけでもないのに、前国王陛下も罪なことをする。でも、前国王もレオンハルトは婿にやったのだから、という言い分らしい。

 何より、ジャクリーンがバーナード国王夫妻の命の恩人で、大変感謝されていたのだから仕方がない。

 コーネリアルでの王女としての仕事は、王配のレオンハルトがやり、バーナードの女王の補佐は、グレイス公爵にお願いすることにしたのである。

 グレイス公爵と言えば、クーデター前までレオンハルト様の婚約者であった女性で、浮気しているのか?とひと悶着はあったが、優秀な女性のようなので、またバーナード国のことは詳しいから、初の民間からの女性登用に成功したのである。

 コーネリアルの父は、喜んでいる。戦わずして、バーナード国が手に入ったも同然だから。

 それからというものバーナード国は男女平等の国として、世界に馳せる。それからは、コーネリアルに生まれようとも、バーナードに生まれようとも優秀な女性であれば、どんどん登用されるようになったのだが、エリーゼ・フランドル嬢もその中の一人として、数え上げられるようになったのである。

 同じ大学だからと、ジャクリーンと張り合っていた令嬢だったが、大学で教職課程を取り、教員をしていたはずなのに、学園内暴力のあおりを受け、退職したことをきっかけに、コーネリアルの登用試験に合格し、今や官僚となっている。

 エリーゼは、大学卒業後、いったん隣の領地の侯爵家に嫁ぐものの旦那様が早死になさって、一人娘では家督が継げないため、教員の仕事を続けたのである。

 その仕事も学園内暴力のため、追放されてしまい途方に暮れているとき、バーナード国は男女平等をうたっていて、しかも女王陛下がコーネリアルのジャクリーン王女殿下だということがわかり、思い切って、バーナードの登用試験に受けたのである。

 試験合格したぐらいでは、ジャクリーンに逢えるはずもないと諦めていたら、入城式の際、

 「あら、あなた様は、確かエリーゼ・フランドル公爵令嬢ではございませんか?」

 なんと!女王陛下自ら、お声がけしていただきまして、もう大感激です。同期入城組の中でも一目置かれる存在になれましたのも、ひとえにジャクリーン陛下のおかげでございます。

 「ジャクリーン陛下、お久しゅうございます。」

 「まぁ!やっぱりエリーゼ様だったのですね。懐かしいわ。大学の同級生でしたものね。あとでわたくしのお部屋へ来て頂戴。いろいろ昔話がしたいわね。」

 「ありがたき幸せに存じます。」

 なにもジャクリーンは、エリーゼのことを懐かしく思っただけで、声をかけたのではない。これは、男子入城者に対するけん制である。

 女王だと、舐められる。レオンハルト様がいるにもかかわらず、何をどう勘違いするのかハニートラップを仕掛けてくる輩までいるため、女性でなければ、出世の見込みがないよ、と示すためである。

 ひょっとしたら、レオンハルト様の意を酌んで仕掛けてきているのかもしれない。何か不手際があれば、足を引っ張り、引きずりおろそうとしている節がある。

 だから登用試験に合格した者の身元調査は徹底して行うようにしている。それで、今回のエリーゼのことは、最初から知っていて、わざとその場で気づいた風を装ったのである。

 男尊女卑、この世界では女王に就任しても、そのようにみられる。女はバカぐらいがちょうどいい。女に学問はいらない。学園卒の男と大学卒の女で、釣り合いが取れる。

 既得権からか、どうしてここまで女を下に見るのだろうか。女王という地位に就いても、そのように思われているのだから、ジャクリーンは、だからこそ、バーナード国は女尊男卑とまではいかなくても、せめて男女平等にしたいと思っているのだ。

 ジャクリーンは昔、コーネリアル国のサニーバード伯爵家で騎士団長の家に養女として言っていた経験から、剣の腕前は相当なもので、新人教育でこれを取り入れることにしたのだ。

 大腿四頭筋を鍛えることが手っ取り早く、ランニングなんて無茶な事させません。ウォーキングです。

 養父のサニーバード騎士団長から女性騎士を派遣してもらい、新人の指導をしてもらっている。

 ジャクリーンがフランドル大学に通っていた頃の護衛、マーカス兄さんの今は、もう偉くご出世されて、一個師団長をされている。ご結婚もされて、2男1女のお父様になられている。

 聖女様の義兄が、出世できないはずがない。その頃、バーナード国とコーネリアル国の国境付近で大規模な橋の架け替え工事が行われることになったのだ。

 この入札に関して、最低入札価格が異常に高い。レオンハルト様が見積もりを出されたみたいだけど、最初から業者が決まっているかの疑いがある。

 それを指摘したのが、バーナード国で、最初にジャクリーンの肝いりで作られた会計検査院である。

 価格カルテルか入札談合の疑いがあるとの指摘で、ジャクリーンはそのことを父コーネリアル国王に進言する。

 「なにっ!? それは真か?レオンハルトはたぶん、おそらく談合にはかかわっていないのだと信じる、……信じたい。あれはあれでよくやってくれていると思っていたのだが……、第3者の目からすると、おかしいと言われても仕方がない価格設定になっている。」

 父は婿のレオンハルト様に事情を聴き、入札の担当から外されたのである。

 そうなるとますます居心地が悪いのがレオンハルト様、自分の国の王にもなれず、元自分の国だったところの第3機関から入札価格の適正さを疑われ、担当から外されてしまうことなど、あってはならないことだから。

 王配でなければ、処罰されているところである。レオンハルトには少しばかり、心当たりがあったのだ。入札価格を決めるにあたり、複数の業者から聞き取り調査をしたから、その時、その価格を提示されたばかりか、他の業者もこぞって、その価格を言ってきたものだから、それが相場かと勘違いしてしまったのである。

 レオンハルトは昔からヘタレなのである。だからあっけなく弟にクーデターを起こされ、自分は国外逃亡、暗殺者を差し向けられるも、それを助けてくれたのが妻のジャクリーン、おまけに自分の両親までもが、ジャクリーンの手により救出されたのだから、頭が上がらない。

 それで先の国王が崩御されて、遺言でジャクリーンを指名されても文句の一つも言えないでいる。

 国王も、レオンハルトが王の器でないことを見抜いていたのだ。だから嫁を指名したのである。

 今さら妻と離縁しても帰るところがない。どれだけ罵られても、妻にくっついて王配の立場を死守しなければならないのである。

 もちろんジャクリーンは、レオンハルト様と離縁する気などさらさらない。たとえ髪結いの亭主であったとしても、文句も言わずに王配の仕事をしてくれて、二人の王子の父親だから。

 でもレオンハルト様が男としての自信を失いかけていることは、薄々感じていたのだ。

 夜は同じ寝室で寝ているから、なんとなくわかる。それに最近は、あっちの方もとんとご無沙汰で、お互いに背中を向けて寝ている。

 なんとなく、以前より増して、うつろな目をしていることが多い。そこでジャクリーンは、レオンハルト様に、ある提案をする。

 その日も寝室で、もう寝る準備をしているときにお風呂から上がったばかりのレオンハルト様と鉢合わせをする。

 「ねぇ、レオ様、少しお話したいことがありましてよ。今、よろしいかしら。」

 ギョっとした顔で妻をみつめるレオンハルト様、ついに……離縁を切り出されるかと思い、覚悟を決める。

 「実はね、コーネリアル国でも会計検査院を設立してはどうかと思うのよ。それでまたレオ様のお仕事が増えるかもしれないけど、レオ様に院長を引き受けてもらえないかしらね。」

 「え?俺でいいのか?」

 「だって、経営学修士をお持ちなのだから、適任だと思うのよ。他の人にはそうそう任せられないお仕事ですわ。」

 「談合を見破られなかった俺に?」

 「そんなこと、口裏合わせされたら、誰でも見破られないことよ。わたくしにはレオ様が必要なの。お願い。力になってちょうだい。助けて。」

 「水臭いこと言うな。愛しているよジャッキー、君のためなら、どんなことでも仕事が増えたって平気だよ。」

 その夜は、本当にお久しぶりに熱い夜となりましたわ。また、子供ができたらどうしよう……なんて、心配しながら。

 恥かきっ子って、言うのよね。言われた方は堪らないわね。

 橋の入札は棚上げされることが決まる。どこかのでも業者に発注しないと、老朽化していて危ない。

 困っていると、学園の同級生だったファイン・カーペンターズが名乗り出てくれて、随意契約をすることにしました。これで一件落着となる。

 ファインは、あれから大学で建築学を極め、世界的に有名な建築家になっていたのである。そのファインが格安で、橋の工事の受注を引き受けてくれたから大助かりです。

 「昔、ジャッキーちゃんから受けた御恩に報いるときがきて、よかったです。」

 政略で婚約していたヘンリー・バーグナーとの婚約破棄による違約金で、奨学金制度を作ったんだっけ。

 それで平民の子供でも大学に行けるようになり、ファインのような成功者を生み出せたのだ。

 あの夜からというもの毎晩のように、レオンハルト様から求められるようになり、すっかり自信を取り戻せられたことは、いいのだが。

 レオンハルト様31歳、ジャクリーン29歳で、高齢出産とまではいかないけれど、やっぱりと言うべきか、ついにと言うべきか、4人目を孕んでしまうことになったのである。

 今、子供を産めば、レオンハルト様は、バーナードの王配としての仕事とコーネリアルの王配の仕事、それに加えて会計検査院のお仕事と3人分のお仕事が降ってくるというのに、

 「ジャッキーが可愛くて、愛しくて堪らないから、ごめんね。愛しているよ。」

 上の王子はまだ10歳だから、お仕事をさせるわけにはいかない。コーネリアルは父王が健在だから、王配の仕事は休ませてもらうとしても、バーナード国の女王補佐はグレイス公爵だが、彼女も先頃出産したばかりで補佐がいない状態。会計検査院のお仕事は、代わりがいない。

 会計検査院のほうは、名誉職みたいなものだけど、レオンハルト様はそのお仕事が大変気に入っているようで、休めとは言いづらい。

 ジャクリーンは、自分が懐妊したことをきっかけに産前休業、産後休業、育児休業、看護休暇を新たに導入し、働く女性に優しい職場づくりを目指すことにしたのである。
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