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オフィスラブ
8.挨拶2
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帰りの新幹線、美織は社長に感心しきっている。
「社長、素晴らしかったですわ。あの返し、最高です。ブラボーです。」
「は?また、社長呼びに戻っているぞ。」
「そんなこと、どうでもええやないですか?とにかく、さっき、お父ちゃんが泊っていけ、言うたときの返しが最高によかったのですから。」
「明日、仕事があります。といったことか?」
「そうです。あそこで、はい。と返事してしもたら、京都では信用失くしますさかい。社長は、京都の天才ですわ。」
「え?……ということは、本心から誘ってくださったのではないのか?」
「当たり前どっしゃろ?なんぼ、私の婿殿でも、初対面の人間を泊めるわけあらへん。ぶぶ漬けの現代版て、とこやな。」
「はぁ……、京都って、聞きしに勝る怖いところだね。でも、そんなところからお嫁に来てくれて、ありがとう。」
社長の言葉に美織は、ズキリと胸が痛む。
本当の結婚だったら、どんなに良かったことか。
おまけに両親を騙すようなことまでして。まあ、それもこれもビジネスのため。離婚するとき、社長から莫大な財産分与と慰謝料がもらえるらしいから、それまで頑張る。つもり……。
離婚したら、生まれ故郷の京都へ帰って、会計事務所でも開こうかな?そう。美織は何を隠そう。会計士補の資格を持っている。2年間、どこかの監査法人で実務研修を受ければ、3次試験の受験資格を満たし、合格すれば、晴れて独立開業ができる。それに3次試験に合格すれば、税理士資格をもらえるから、併せて、開業登録して、中小企業の税務もできる。
そう。この結婚ビジネスは、悪いことばかりではない。ただ、これ以上、社長のことが好きにならないように自分の気持ちにいかに蓋をするかが目下の課題となるというところ。
まあ、今のところ、全然、余裕だけどね。
「駅に着いたら、このまま俺の両親に会ってくれるか?」
「ええ。そのつもりで、お振袖を着てきたのよ。早く済ませっちゃって、おべべを脱ぎたいわ。」
「あはは。そりゃ、楽しみだな。」
「ダメよ。高いものなのだから、粗末にしては、ご先祖様に申し訳が立たない。」
「美織。大事にされているな。京都という街からも、愛されていることが今日ハッキリとわかったよ。美織が京都人魂を大切にしていることも、見ていて分かった。俺と結婚してくれて、ありがとう。」
「なによ。それ。なんか企んでいる?」
「あはは。まいったな……。」
八重洲口から、タクシーを拾い、前社長のご自宅に向かう。
前社長は、美織の振り袖姿を見て、感嘆の声を上げる!
「素晴らしい美貌に品格がある。これなら、次のCMモデル、嫁でいいのではないか?十分、務まる。」
「あなた、美織さんに失礼ですよ。美織さん、ようこそ来てくれたわね。こんな舅と息子だけど、よろしくお願いね。これから、姑と嫁ではなくて、母と娘のように仲良くしていきたいわ。」
「はい。お義母様!」
「可愛い。それにしてもくぁいくて、食べたいぐらいだわ。」
「オイオイ、儂の嫁でもあるのだぞ。」
「なに、言っているのですか!正彦の嫁さんでしょうが!ボコっ。」
驚いていると、お義母様がお義父様に手を挙げている。
「いてっ!」
「驚いただろ?ウチの両親は、いつも、あんなだ。だから、俺は美織と温かい家庭を作りたいと思ってさ。」
もう、美織は、作り笑いを浮かべるだけで、精一杯。
っひょっとしたら、美織はすごい所へ嫁に行ったのかもしれないと、今更ながらに疑問符を浮かべる。
それから一度、自分のマンションに帰り、おべべを脱いで、きちんと和紙に包み、再び着替えて、世田谷ファミリーとの会食場所に向かう。
マンションの外には、正彦さんが迎えに来てくれていた。
「お待たせしました。」
ペコリと頭を下げると、正彦さんは、顔が赤い。
「美織に見とれてしまって……。」
もう、どこから本当で、どこから嘘かわからない。誰か、助けてー。
「社長、素晴らしかったですわ。あの返し、最高です。ブラボーです。」
「は?また、社長呼びに戻っているぞ。」
「そんなこと、どうでもええやないですか?とにかく、さっき、お父ちゃんが泊っていけ、言うたときの返しが最高によかったのですから。」
「明日、仕事があります。といったことか?」
「そうです。あそこで、はい。と返事してしもたら、京都では信用失くしますさかい。社長は、京都の天才ですわ。」
「え?……ということは、本心から誘ってくださったのではないのか?」
「当たり前どっしゃろ?なんぼ、私の婿殿でも、初対面の人間を泊めるわけあらへん。ぶぶ漬けの現代版て、とこやな。」
「はぁ……、京都って、聞きしに勝る怖いところだね。でも、そんなところからお嫁に来てくれて、ありがとう。」
社長の言葉に美織は、ズキリと胸が痛む。
本当の結婚だったら、どんなに良かったことか。
おまけに両親を騙すようなことまでして。まあ、それもこれもビジネスのため。離婚するとき、社長から莫大な財産分与と慰謝料がもらえるらしいから、それまで頑張る。つもり……。
離婚したら、生まれ故郷の京都へ帰って、会計事務所でも開こうかな?そう。美織は何を隠そう。会計士補の資格を持っている。2年間、どこかの監査法人で実務研修を受ければ、3次試験の受験資格を満たし、合格すれば、晴れて独立開業ができる。それに3次試験に合格すれば、税理士資格をもらえるから、併せて、開業登録して、中小企業の税務もできる。
そう。この結婚ビジネスは、悪いことばかりではない。ただ、これ以上、社長のことが好きにならないように自分の気持ちにいかに蓋をするかが目下の課題となるというところ。
まあ、今のところ、全然、余裕だけどね。
「駅に着いたら、このまま俺の両親に会ってくれるか?」
「ええ。そのつもりで、お振袖を着てきたのよ。早く済ませっちゃって、おべべを脱ぎたいわ。」
「あはは。そりゃ、楽しみだな。」
「ダメよ。高いものなのだから、粗末にしては、ご先祖様に申し訳が立たない。」
「美織。大事にされているな。京都という街からも、愛されていることが今日ハッキリとわかったよ。美織が京都人魂を大切にしていることも、見ていて分かった。俺と結婚してくれて、ありがとう。」
「なによ。それ。なんか企んでいる?」
「あはは。まいったな……。」
八重洲口から、タクシーを拾い、前社長のご自宅に向かう。
前社長は、美織の振り袖姿を見て、感嘆の声を上げる!
「素晴らしい美貌に品格がある。これなら、次のCMモデル、嫁でいいのではないか?十分、務まる。」
「あなた、美織さんに失礼ですよ。美織さん、ようこそ来てくれたわね。こんな舅と息子だけど、よろしくお願いね。これから、姑と嫁ではなくて、母と娘のように仲良くしていきたいわ。」
「はい。お義母様!」
「可愛い。それにしてもくぁいくて、食べたいぐらいだわ。」
「オイオイ、儂の嫁でもあるのだぞ。」
「なに、言っているのですか!正彦の嫁さんでしょうが!ボコっ。」
驚いていると、お義母様がお義父様に手を挙げている。
「いてっ!」
「驚いただろ?ウチの両親は、いつも、あんなだ。だから、俺は美織と温かい家庭を作りたいと思ってさ。」
もう、美織は、作り笑いを浮かべるだけで、精一杯。
っひょっとしたら、美織はすごい所へ嫁に行ったのかもしれないと、今更ながらに疑問符を浮かべる。
それから一度、自分のマンションに帰り、おべべを脱いで、きちんと和紙に包み、再び着替えて、世田谷ファミリーとの会食場所に向かう。
マンションの外には、正彦さんが迎えに来てくれていた。
「お待たせしました。」
ペコリと頭を下げると、正彦さんは、顔が赤い。
「美織に見とれてしまって……。」
もう、どこから本当で、どこから嘘かわからない。誰か、助けてー。
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