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現代フィクション
4木下くらら
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北原くららは、木下正治との結婚式を一か月前にしたある日、どうしても会いたい人がいて、その人たちに会うためには、木下にすべて話さなければならないことがある。
いつ、本当のくららさんにカラダを返さないといけない日が来るかわからないから。
木下との結婚式が間近に控えていることを知れば、怒って婚約破棄しかねない。事件の全容が明らかとなった今のうちに、話しておかなければならないことがある。
思えば夏美の恋はいつもHから始まる恋、大吾とも一ノ瀬さんとも、そして木下さんも。だからきちんと自分の気持ちを伝えないまま、気づけば相手と深い仲になっているという調子。
今までは、それでも良かったんだけど、今はくららさんのカラダを間借りしているようなものだから、結婚する前にきちんと話して了解を取ったうえで、一ノ瀬さんと大吾のご両親、それと夏美の両親にお別れのご挨拶がしたいということだったのだ。
木下にその話をすると、にわかには信じがたいと言った表情でマジマジと顔を見てくる。
「北原のご両親は、ご存知なの?」
夏美は首を横に振り、何度となく言おうとしたけど、北原母が頑として受け入れてくれない。
「あなたは、まぎれもなくくららちゃんよ。お腹を痛めて産んだ私が言っているんだから間違いないわ。」
でも最終的には、正治さんは信じてくれたのだ。記憶を失う前と後では人格に大きな差があったという。それって、けなされてる?ま、いいけど。
「でも俺は、記憶を失ったくららを愛した。それでいいと思っている。失ったくららの記憶などどうでもいいんだ。だけど、君が加藤夏美だというのなら話は別だ。きちんと加藤夏美としてお別れの挨拶へ行ってこい。そして、くららとして嫁いでほしい。」
「ありがとう。正治さん。」
「ただし、一ノ瀬だったか?最後の恋人に会う時は、俺も一緒についていくよ。」
結局、正治さんは、藤崎大吾のご両親と会う時も、加藤夏美の両親と面会するときも、みんなついてきたのだが。信用されてない?ってことないよね。
夏美の魂を持つくららは、久しぶりに丸の内のオフィスを訪ね、受付に監査部の一ノ瀬さんを希望する旨の手続き書類を書く。入館証を出してもらうためである。
しかし、一ノ瀬は、夏美が死んだ後、退職したらしい。
うそ?今は何処へ?
仕方なく、一ノ瀬が住むマンションへ向かうと、まだ表札が上がっていたので、ホッとする。
玄関チャイムを鳴らしても留守のようだったため、近くの喫茶店で帰りを待つことにする。
マンションの部屋の明かりが灯ったことを見計らい、再度、玄関チャイムを鳴らすとドアが開く。
「!……夏美?」
北原くららの姿をした夏美がわかったようだ。
「一ノ瀬さん、ご無沙汰しています。加藤夏美です。」
「本当に?ずいぶん、容貌は変わったみたいだが、確かに夏美のにおいがする。」
ん?におい?
細かいことは気にしないでおこう。
「入ってもいいですか?」
「ああ、コーヒーでいいか?」
「あ、じゃぁ私が……。」
勝手知ったる一ノ瀬の台所に立つくらら
「え……と、そちらは?」
「申し遅れました経済産業省の木下と申します。夜分に恐れ入ります。」
「ああ、あの事件のことですね。島村が外為法に違反していることは社内では以前から噂として、ありましたが、まさか政治家がらみの疑獄にまで発展するとは思っておりませんでした。」
そこへ、コーヒーを淹れたマグカップを3人分出す。
「しかし驚いたな、夏美が魂として生きていたなんて……、どうしてすぐに会いに来てくれなかったんだい。」
「ごめんなさい、一ノ瀬さんとのデートの約束があった日、覚えていますか昨年のクリスマスイヴの日、その日に北原くららさんのカラダを借りて、蘇ってしまったものだから、周りには、まだ入院している最中で、医師に看護師、それに北原の両親がそろっていて、病院を抜け出すことができなかったのよ。」
「ふーん、今は北原くららという名前になったんだね。ひょっとして、くららさんも経産省の人?」
「はい、木下さんの同僚です。」
「そして二人は結婚するの?」
「え?どうしてそれを?」
「僕が夏美さんを見るときと同じ目をして、くららさんを見ているからさ。愛し合っているんだね。幸せになってください。……今ね、会社を辞めて公認会計士の勉強をしているんだ。夏の試験に通ればいいんだけど……。何年かかるやら?どのみち、あの会社は、倒産は免れないでしょう。株主総会での突き上げも待っているし、1年間全貿易取引を禁止されたら、いくら大所帯でももちませんよ。だったら、退職金が出るうちに身の振り方を考えたってことですよ。」
聞かれもしないことまで、ペラペラ話す。黙って聞いているうちに、なんとなく大吾と喋っているような気分になる。ひょっとして、一ノ瀬さんのカラダを大吾が借りてる?まさかね。いつから?
わからないけど、そういうことなら、くららが夏美だって、わかると思う。
「これから藤崎さんの、元婚約者のご両親にも挨拶に行こうと思っています。そして、加藤夏美さんの両親にも。」
「それは止めた方がいいんじゃない?両家とも大事な息子と娘を失ったのだから、そっとしておいた方がいいと思うよ。」
これで決定的となる。一ノ瀬さんのカラダに大吾が乗り移っている。
もう両家の両親に、挨拶を済ませている。夏美の両親は、魂として夏美が生きていることを嬉しく思うと言ってくれ、正治さんに頭を下げて「娘をよろしく」と言ってくれたのだ。
藤崎さんのご両親は、「息子の大吾の無念を晴らしてくれて、ありがとう。」と涙を流されたのだ。
たぶん殺された直後に、一ノ瀬さんのカラダに乗り移ったんだ。あのラブホの夜から、おそらく……。だから、あの日帰りを送ってくれようとした。つじつまが合ってくる。
「それでは、私たちはこれで。」
コーヒーのマグカップを洗い、そそくさと帰ることにした。
玄関先で大吾(一ノ瀬さん)が言った言葉が耳に反芻している。
「不思議だよね、取り締まられる側の人間が取り締まる側へ回るなんてさ。」
あの非常階段に落ちていた携帯電話は、偶然だったのだろうか?大吾は夏美が殺されることを見越して、あの携帯電話を非常階段に置いたのか?
考えているうちに、もう官舎へ着いた。
その夜は、木下の家へ泊り、思いっきり喘ぎ、イヤなことを忘れることにしたのだ。
そして朝になってから、昨日の一ノ瀬が藤崎大吾の魂を持つことを正治さんに話したのだ。
「不思議なことがあるんだね。でも、もう君は俺だけのくららだよ。どこにも行かないでくれ。」
出勤前にまた抱かれた、というより赤ちゃんみたいに甘える正治さんをあやすように抱いた。
そして結婚式を迎える。
北原の父とともに歩くヴァージンロード、出来れば加藤の父と歩きたかったけど、くららさんの分まで幸せになります。
それから10年、北原の父は退官した。くららはまだ、本来のくららさんにカラダを返すこともなく、またくららさんの失われた記憶を取り戻すこともなく、まだ経産省にいる。
正治さんとくららは二人そろって、課長に昇進して、毎日忙しく過ごしている。
正治さんとの間に3人子供を作り、幸せです。
夏美としては、果たせなかった幸せを確実に掴んだのだ。
いつ、本当のくららさんにカラダを返さないといけない日が来るかわからないから。
木下との結婚式が間近に控えていることを知れば、怒って婚約破棄しかねない。事件の全容が明らかとなった今のうちに、話しておかなければならないことがある。
思えば夏美の恋はいつもHから始まる恋、大吾とも一ノ瀬さんとも、そして木下さんも。だからきちんと自分の気持ちを伝えないまま、気づけば相手と深い仲になっているという調子。
今までは、それでも良かったんだけど、今はくららさんのカラダを間借りしているようなものだから、結婚する前にきちんと話して了解を取ったうえで、一ノ瀬さんと大吾のご両親、それと夏美の両親にお別れのご挨拶がしたいということだったのだ。
木下にその話をすると、にわかには信じがたいと言った表情でマジマジと顔を見てくる。
「北原のご両親は、ご存知なの?」
夏美は首を横に振り、何度となく言おうとしたけど、北原母が頑として受け入れてくれない。
「あなたは、まぎれもなくくららちゃんよ。お腹を痛めて産んだ私が言っているんだから間違いないわ。」
でも最終的には、正治さんは信じてくれたのだ。記憶を失う前と後では人格に大きな差があったという。それって、けなされてる?ま、いいけど。
「でも俺は、記憶を失ったくららを愛した。それでいいと思っている。失ったくららの記憶などどうでもいいんだ。だけど、君が加藤夏美だというのなら話は別だ。きちんと加藤夏美としてお別れの挨拶へ行ってこい。そして、くららとして嫁いでほしい。」
「ありがとう。正治さん。」
「ただし、一ノ瀬だったか?最後の恋人に会う時は、俺も一緒についていくよ。」
結局、正治さんは、藤崎大吾のご両親と会う時も、加藤夏美の両親と面会するときも、みんなついてきたのだが。信用されてない?ってことないよね。
夏美の魂を持つくららは、久しぶりに丸の内のオフィスを訪ね、受付に監査部の一ノ瀬さんを希望する旨の手続き書類を書く。入館証を出してもらうためである。
しかし、一ノ瀬は、夏美が死んだ後、退職したらしい。
うそ?今は何処へ?
仕方なく、一ノ瀬が住むマンションへ向かうと、まだ表札が上がっていたので、ホッとする。
玄関チャイムを鳴らしても留守のようだったため、近くの喫茶店で帰りを待つことにする。
マンションの部屋の明かりが灯ったことを見計らい、再度、玄関チャイムを鳴らすとドアが開く。
「!……夏美?」
北原くららの姿をした夏美がわかったようだ。
「一ノ瀬さん、ご無沙汰しています。加藤夏美です。」
「本当に?ずいぶん、容貌は変わったみたいだが、確かに夏美のにおいがする。」
ん?におい?
細かいことは気にしないでおこう。
「入ってもいいですか?」
「ああ、コーヒーでいいか?」
「あ、じゃぁ私が……。」
勝手知ったる一ノ瀬の台所に立つくらら
「え……と、そちらは?」
「申し遅れました経済産業省の木下と申します。夜分に恐れ入ります。」
「ああ、あの事件のことですね。島村が外為法に違反していることは社内では以前から噂として、ありましたが、まさか政治家がらみの疑獄にまで発展するとは思っておりませんでした。」
そこへ、コーヒーを淹れたマグカップを3人分出す。
「しかし驚いたな、夏美が魂として生きていたなんて……、どうしてすぐに会いに来てくれなかったんだい。」
「ごめんなさい、一ノ瀬さんとのデートの約束があった日、覚えていますか昨年のクリスマスイヴの日、その日に北原くららさんのカラダを借りて、蘇ってしまったものだから、周りには、まだ入院している最中で、医師に看護師、それに北原の両親がそろっていて、病院を抜け出すことができなかったのよ。」
「ふーん、今は北原くららという名前になったんだね。ひょっとして、くららさんも経産省の人?」
「はい、木下さんの同僚です。」
「そして二人は結婚するの?」
「え?どうしてそれを?」
「僕が夏美さんを見るときと同じ目をして、くららさんを見ているからさ。愛し合っているんだね。幸せになってください。……今ね、会社を辞めて公認会計士の勉強をしているんだ。夏の試験に通ればいいんだけど……。何年かかるやら?どのみち、あの会社は、倒産は免れないでしょう。株主総会での突き上げも待っているし、1年間全貿易取引を禁止されたら、いくら大所帯でももちませんよ。だったら、退職金が出るうちに身の振り方を考えたってことですよ。」
聞かれもしないことまで、ペラペラ話す。黙って聞いているうちに、なんとなく大吾と喋っているような気分になる。ひょっとして、一ノ瀬さんのカラダを大吾が借りてる?まさかね。いつから?
わからないけど、そういうことなら、くららが夏美だって、わかると思う。
「これから藤崎さんの、元婚約者のご両親にも挨拶に行こうと思っています。そして、加藤夏美さんの両親にも。」
「それは止めた方がいいんじゃない?両家とも大事な息子と娘を失ったのだから、そっとしておいた方がいいと思うよ。」
これで決定的となる。一ノ瀬さんのカラダに大吾が乗り移っている。
もう両家の両親に、挨拶を済ませている。夏美の両親は、魂として夏美が生きていることを嬉しく思うと言ってくれ、正治さんに頭を下げて「娘をよろしく」と言ってくれたのだ。
藤崎さんのご両親は、「息子の大吾の無念を晴らしてくれて、ありがとう。」と涙を流されたのだ。
たぶん殺された直後に、一ノ瀬さんのカラダに乗り移ったんだ。あのラブホの夜から、おそらく……。だから、あの日帰りを送ってくれようとした。つじつまが合ってくる。
「それでは、私たちはこれで。」
コーヒーのマグカップを洗い、そそくさと帰ることにした。
玄関先で大吾(一ノ瀬さん)が言った言葉が耳に反芻している。
「不思議だよね、取り締まられる側の人間が取り締まる側へ回るなんてさ。」
あの非常階段に落ちていた携帯電話は、偶然だったのだろうか?大吾は夏美が殺されることを見越して、あの携帯電話を非常階段に置いたのか?
考えているうちに、もう官舎へ着いた。
その夜は、木下の家へ泊り、思いっきり喘ぎ、イヤなことを忘れることにしたのだ。
そして朝になってから、昨日の一ノ瀬が藤崎大吾の魂を持つことを正治さんに話したのだ。
「不思議なことがあるんだね。でも、もう君は俺だけのくららだよ。どこにも行かないでくれ。」
出勤前にまた抱かれた、というより赤ちゃんみたいに甘える正治さんをあやすように抱いた。
そして結婚式を迎える。
北原の父とともに歩くヴァージンロード、出来れば加藤の父と歩きたかったけど、くららさんの分まで幸せになります。
それから10年、北原の父は退官した。くららはまだ、本来のくららさんにカラダを返すこともなく、またくららさんの失われた記憶を取り戻すこともなく、まだ経産省にいる。
正治さんとくららは二人そろって、課長に昇進して、毎日忙しく過ごしている。
正治さんとの間に3人子供を作り、幸せです。
夏美としては、果たせなかった幸せを確実に掴んだのだ。
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