1 / 4
1.
しおりを挟む
剣持美鈴は、大病院グループ剣聖会の跡取り娘なのだが、自身は医療の道に進まず、経営の道に進むため、アメリカに留学してMBAを取得する。
お金持ちで、美人で、頭が良くて、世間の羨望も反感も一身に集める美鈴にも好きな男性がいた。
相手に思いを伝えることもなく、その初恋相手は、中学の時に両親を事故で亡くし、そのまま進学せずに卒業してしまった。
名前は、谷口正憲君で、とても頭のいい子だった。目がとても澄んでいて、今でいうところのイケメンな顔立ちをしていたと思う。
以来、一度も顔を合わせることもなく、現在に至っているが、美鈴はアメリカへ渡ってから、大学院の同級生と同棲経験があり、処女ではない。
時折、初恋相手のことが頭を過ぎることはあるけど、もう記憶の片隅に追いやられていて、思い出すことはほとんどなかったのに、突然、美鈴の記憶から手が伸び出してくるような感覚に捉われ、その後、懸命に谷口君を探すことになろうとは、夢にも思ってもみなかったこと。
そのきっかけとなったのは、ある日、一通の往復はがきが舞い込んだことから始まる。それは、大学の同窓会のことで、会場は都内のホテルで会ったが、美鈴の自宅からは小一時間かかる場所に建てられた別館で行われるというもの。
この本館なら徒歩5分で行けるところなのに、なんでわざわざ遠方のホテルにしたのだろうと、疑問や不満はあったが、久しぶりにみんなと逢える喜びが勝ってしまって、不覚考えずに出席のところに〇をつけ、投函する。
美鈴の住まいは、いわゆる豪華タワーマンションで、東京の夜景が一望できる。そこを親元から離れ、一人暮らしをしていて、今まで不自由を感じた生活は送っていなかった。お金はあるし、通勤は、会社の運転手付きの車が毎朝、迎えに来る。お手伝いさんを雇い、週に3回掃除をしてもらっている。
料理は自炊だが、元々家事に抵抗がない美鈴は息抜きで料理もしている。
ブランド物、高級品や金目のものは、実家に置きっぱなしにしていて、たまにパーティなどで必要があれば、取りに帰るから、わざわざセキュリティが高いマンションに住む必要もないが、近頃は家政婦さんでも窃盗を働く人がいると聞いているので、信用できる紹介所からの派遣でも、やはり用心するに越したことはないだろう。
ほとんどこのタワーマンションは、寝に帰るだけ、時々、趣味程度の料理を作るから、まあこれで十分だと思っている。
美鈴は、幼いころから何不自由なく暮らしてきて、そのうえ、MBAを取得してから、就職しても早々に出世コースに乗り、運よくCEOになれたものだから、美人だけど、鼻持ちならないイヤな女になってしまっている。
もうこればかりは、自分の意思は関係なく周りから、そのような態度を求められた結果の集大成の様になってしまったので、今更これを訂正する気はない。
それで大学の同級生に今の美鈴を自慢してやろうと、意地悪根性が芽生え、出席に〇を付けたのだ。
「私は、こんないい年収を貰って、こんないいところに暮らしているのよ」と自慢するために。
でも、そんな思惑は開始10分間で打ち砕かれてしまう。
男の子たちは、年相応にそれなりに出世していたけど、女の子は完全にオバサン化していて、話す内容も子供の自慢と旦那の不満と姑さんの悪口ばかりで、正直、美鈴の自慢話に耳を傾けてくれる人は誰もいない。
それに不満や悪口を言っている割には、嬉々として嬉しそうに話していることが癪に障る。
その笑顔から、美鈴よりは100倍も幸せよ。と言っているのが窺えるからだ。
たまらなくなり、お手洗いに立つ。その洗面所で悔し涙を洗い流す。私だって、楽して、この地位に就いたわけではない。イヤな客相手に愛想笑いをして掴んだ仕事も両手で数えきれないぐらいある。それなのに……、結婚したい!でも、実家に言えば、今でも山ほどの縁談が来るけど、そんなお仕着せでは、同級生のような笑顔にはなれない。そえrはわかっている。
お金持ちで、美人で、頭が良くて、世間の羨望も反感も一身に集める美鈴にも好きな男性がいた。
相手に思いを伝えることもなく、その初恋相手は、中学の時に両親を事故で亡くし、そのまま進学せずに卒業してしまった。
名前は、谷口正憲君で、とても頭のいい子だった。目がとても澄んでいて、今でいうところのイケメンな顔立ちをしていたと思う。
以来、一度も顔を合わせることもなく、現在に至っているが、美鈴はアメリカへ渡ってから、大学院の同級生と同棲経験があり、処女ではない。
時折、初恋相手のことが頭を過ぎることはあるけど、もう記憶の片隅に追いやられていて、思い出すことはほとんどなかったのに、突然、美鈴の記憶から手が伸び出してくるような感覚に捉われ、その後、懸命に谷口君を探すことになろうとは、夢にも思ってもみなかったこと。
そのきっかけとなったのは、ある日、一通の往復はがきが舞い込んだことから始まる。それは、大学の同窓会のことで、会場は都内のホテルで会ったが、美鈴の自宅からは小一時間かかる場所に建てられた別館で行われるというもの。
この本館なら徒歩5分で行けるところなのに、なんでわざわざ遠方のホテルにしたのだろうと、疑問や不満はあったが、久しぶりにみんなと逢える喜びが勝ってしまって、不覚考えずに出席のところに〇をつけ、投函する。
美鈴の住まいは、いわゆる豪華タワーマンションで、東京の夜景が一望できる。そこを親元から離れ、一人暮らしをしていて、今まで不自由を感じた生活は送っていなかった。お金はあるし、通勤は、会社の運転手付きの車が毎朝、迎えに来る。お手伝いさんを雇い、週に3回掃除をしてもらっている。
料理は自炊だが、元々家事に抵抗がない美鈴は息抜きで料理もしている。
ブランド物、高級品や金目のものは、実家に置きっぱなしにしていて、たまにパーティなどで必要があれば、取りに帰るから、わざわざセキュリティが高いマンションに住む必要もないが、近頃は家政婦さんでも窃盗を働く人がいると聞いているので、信用できる紹介所からの派遣でも、やはり用心するに越したことはないだろう。
ほとんどこのタワーマンションは、寝に帰るだけ、時々、趣味程度の料理を作るから、まあこれで十分だと思っている。
美鈴は、幼いころから何不自由なく暮らしてきて、そのうえ、MBAを取得してから、就職しても早々に出世コースに乗り、運よくCEOになれたものだから、美人だけど、鼻持ちならないイヤな女になってしまっている。
もうこればかりは、自分の意思は関係なく周りから、そのような態度を求められた結果の集大成の様になってしまったので、今更これを訂正する気はない。
それで大学の同級生に今の美鈴を自慢してやろうと、意地悪根性が芽生え、出席に〇を付けたのだ。
「私は、こんないい年収を貰って、こんないいところに暮らしているのよ」と自慢するために。
でも、そんな思惑は開始10分間で打ち砕かれてしまう。
男の子たちは、年相応にそれなりに出世していたけど、女の子は完全にオバサン化していて、話す内容も子供の自慢と旦那の不満と姑さんの悪口ばかりで、正直、美鈴の自慢話に耳を傾けてくれる人は誰もいない。
それに不満や悪口を言っている割には、嬉々として嬉しそうに話していることが癪に障る。
その笑顔から、美鈴よりは100倍も幸せよ。と言っているのが窺えるからだ。
たまらなくなり、お手洗いに立つ。その洗面所で悔し涙を洗い流す。私だって、楽して、この地位に就いたわけではない。イヤな客相手に愛想笑いをして掴んだ仕事も両手で数えきれないぐらいある。それなのに……、結婚したい!でも、実家に言えば、今でも山ほどの縁談が来るけど、そんなお仕着せでは、同級生のような笑顔にはなれない。そえrはわかっている。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる