人生の忘れ物~マッチングアプリで再会を果たす

青の雀

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 AIがマッチングした相手ってどんな男性だろう。期待と不安が綯い交ぜになっている。

 美鈴はけっこうタカビーな条件を提示したので、よほど包容力がある男性なのかもしれない。

 美鈴の出した条件は、院卒もしくはそれに準ずる学歴、身長180センチ以上、年収1000万円以上、デート代は、すべて男性持ち、性格は温厚でレディファーストをしてくれる人、語学は英語以外にもう一か国語喋れること、週に1回以上のデートは確保すること……などなどである。

 こんな男性、本当に存在するのだろうか?

 いたとしたら、口先だけの詐欺師野郎か?それともAIをおちょくっているとしか考えられない!

 チャットでは、偽名を使っている。

 チャットのやり取りは、そこそこ楽しかったけど、実際に会ってみる勇気は持ち合わせていない。

 相手の男性の職業は医師、自撮りした写真を添付してきやがった。美鈴と同い年の割には、老けて見えるところも不自然で、誰か別の男性の写真ではないかと疑う。

 でも、登録するときに運転免許証やマイナンバーカードの提示を求められたし、年齢はごまかしようがないとも思う。

 まあ、美鈴はOLということで登録しているけど、似たり寄ったりのようなものかな?

 登録するとき心理テストのようなものもしたし、一度会うことになったのだが???でも、心配は尽きない。いきなりホテルへ行くということもないだろうから、気楽にいけばいいとは思っているが、やっぱりいろいろと身構えてしまう。

 一応、デートの日は、勝負下着を着けていくことにする。って、何考えているんだ?

 いやいや、そういう意味ではなく、そういう意味も含めて、何か大きな契約の時は、いつも必ず勝負下着を着けていくことにしているので、今日もそのつもりで着ていくだけ。いくら理論武装しても、運だけはどうしようもない。その運を後押しするという意味を込めて、いつも真っ赤な勝負下着を着て行っている。

 大学入試の時も、卒論の口頭諮問の時も、入社試験の時も、役員面接の時も、ここぞというときの後押しをしてくれている。

 今まで勝負下着を着て行って、外したことなど一度もない。

 婚活を始めて、今度ばかりは勝負下着を着る。なぜなら、もしかして悪い男だった場合、勝負下着を着て行かないことで後悔するのがイヤだから。

 今までは、大手が主催する「出会いの場」だったから、安心しきっていたのよ。

 当日までにエステに行き、リンパマッサージをしてもらおう。やっぱりこういうのは第1印象が大事だからね。それに美容院にも行って、手軽のできるヘアアレンジも習っておこうと思っている。

 それには1回でエステと美容院が済む資生庵ビューティサロンが便利なので、予約を入れておく。



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 ここまで気合を入れるほどの事があったのか?とつくづく思うが……、まあ、ダメ元という言葉もあるし、気楽にいこう。なんて、全然気楽ではない!

 明日、会うと思ったら、緊張して、一睡もできなかったし、今日は映画観て、喫茶店でお茶して、それから食事するだけのデート。その後はタクシーに載せられて帰る予定なのだけど、めちゃくちゃ緊張して、もう汗だく。

 出かける前にシャワーを浴びて、顔をパシパシと叩く。一応ALL P を飲んでいこうか?映画の最中に爆睡しても困るから。でもお茶の時にコーヒーなどカフェインが入っている者は飲めないという弱点もあるし……いやいや、美鈴はコーヒー中毒ではないので、カフェで他のものを注文すればいいし。だから、飲まなくても大丈夫。そう、これは、ビジネスなのだから。

 ビジネスと思えば、少々のことは辛抱できる。今までも、これからもずっと。
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