1 / 27
1.
しおりを挟む
「いやぁ!死なないでぇ」
「落ち着けロアンヌ、今は安らかに眠らせてあげることの方が大切だよ。ロアンヌがいつまでも嘆き悲しんでいたら、ロバートも天国で安心して暮らせないだろう」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
わたくしの名前は、ロアンヌ・クロイセン公爵令嬢。半年前に愛する婚約者のロバートを失ってからは、毎日のように嘆き悲しんで暮らしている。
愛するロバートは領地へ向かう途中、がけの崩落により馬車の事故でなくなってしまった。齢17歳のこと。
幼いときから、政略で結ばれた婚約だったが、ロバートとの仲は睦まじく、学園を卒業したら結婚式を挙げることを楽しみにしていた矢先だという。
今は、学園の3年生で、ロアンヌは卒業後、修道院に入るか、新たな結婚相手を見つけるかの選択肢を迫られている。いつまでも泣いてばかりでは行けないことは重々承知しているのだが……。
ロアンヌとロバートの共通の友人に王太子殿下のリチャード様がいらっしゃるが、婚約者を失ったロアンヌに何かと気遣いを見せてくださり、ありがたく思っていたのだが、ここのところリチャード様の婚約者であらせられるクリスティーヌ様から辛く当たられることが多くなってきている。
「婚約者のいる殿方に、話しかけるとは何事ですの!それでもクロイセン公爵家の令嬢とは……」
いやいや、別にロアンヌから殿下に話しかけたことなどない!殿下からお声がけをされるので、返事をしているだけだというのに。変な誤解をなさらないで!と言いたい。
「クリスティーヌいい加減にしないか!君の声が廊下の端にまで響き渡っているではないか!ロアンヌ嬢から話しかけられたことなど一度たりともない!変な誤解は、ロアンヌ嬢に失礼だろっ!」
「だって、ロアンヌ嬢は明らかに殿下に色目を使っておりますでしょう?それなのに、殿下はわたくしよりも、ロアンヌ嬢を選ぶとおっしゃるのでございますか?」
「いや、そんなことは言っていない。ただ、君の態度があまりにも悪いと学園長から注意が届いている。この前もロアンヌ嬢の制服にわざとインクを瓶ごとぶっかけたと聞く。そして、その前には、ロアンヌ嬢の食事の中に虫をわざと入れたと聞く。どうして、君は、そんな愚かなことをするようになったのだ?昨年までの君は、誰からも慕われる優しい令嬢だったではないか?今では、立派な意地悪令嬢に成り下がっている!」
「そんな……濡れ衣ですわ。このロアンヌ嬢が殿下の気を惹くため、そのような嘘をでっち上げて吹聴なさっているのです!」
「俺の側近、護衛騎士、同じクラスの生徒の目撃者はたくさんいる」
他の生徒は、皆、遠巻きにして、3人の話に聞き耳を立てている。正確には、殿下とクリスティーヌ様との話なのだが、その場に居合わせたロアンヌは、帰るに帰れない状態になり、オロオロするばかりなのだ。
「それにロバートは俺の親友だったことを君が一番よくわかっているではないか?親友の婚約者が嘆き悲しんでいる姿でいるのを黙って見過ごせと言うのか?君は、いつからそんな薄情な女になってしまったのだ?」
「では、殿下は本当にロアンヌ様に対して、親友の婚約者としてしか、見ておられぬということでしょうか?」
「……、……もちろん、そうだとも」
「その微妙な間はなんですの?悔しいっ!」
しばらくぼんやりしていると、クリスティーヌ様の怒りの矛先が、再びロアンヌを襲う。クリスティーヌは手に持っていた扇子で、ロアンヌを引っ叩いた。
「きゃぁっ!」
慌てて、リチャードが止めに入ろうとカラダを動かしたとき、どこからともなく甘えた声で、殿下の腕にぶら下がっている女の子を発見!
「「誰?この娘……、いつの間に」」
その娘のことは、リチャード殿下も初見らしく、戸惑っている。
「だ、誰だ?君は、どこから、入ってきた?おい!護衛、この女をつまみ出せ!」
教室の外にいた護衛は、慌てて殿下の腕にぶら下がっている女子生徒を引きはがすと、強引に廊下の外の外まで連れて行く。
「放しなさいよぉ!助けてぇ、リチャード!」
3人は、あっけにとられながら、その後ろ姿を見送る。
「落ち着けロアンヌ、今は安らかに眠らせてあげることの方が大切だよ。ロアンヌがいつまでも嘆き悲しんでいたら、ロバートも天国で安心して暮らせないだろう」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
わたくしの名前は、ロアンヌ・クロイセン公爵令嬢。半年前に愛する婚約者のロバートを失ってからは、毎日のように嘆き悲しんで暮らしている。
愛するロバートは領地へ向かう途中、がけの崩落により馬車の事故でなくなってしまった。齢17歳のこと。
幼いときから、政略で結ばれた婚約だったが、ロバートとの仲は睦まじく、学園を卒業したら結婚式を挙げることを楽しみにしていた矢先だという。
今は、学園の3年生で、ロアンヌは卒業後、修道院に入るか、新たな結婚相手を見つけるかの選択肢を迫られている。いつまでも泣いてばかりでは行けないことは重々承知しているのだが……。
ロアンヌとロバートの共通の友人に王太子殿下のリチャード様がいらっしゃるが、婚約者を失ったロアンヌに何かと気遣いを見せてくださり、ありがたく思っていたのだが、ここのところリチャード様の婚約者であらせられるクリスティーヌ様から辛く当たられることが多くなってきている。
「婚約者のいる殿方に、話しかけるとは何事ですの!それでもクロイセン公爵家の令嬢とは……」
いやいや、別にロアンヌから殿下に話しかけたことなどない!殿下からお声がけをされるので、返事をしているだけだというのに。変な誤解をなさらないで!と言いたい。
「クリスティーヌいい加減にしないか!君の声が廊下の端にまで響き渡っているではないか!ロアンヌ嬢から話しかけられたことなど一度たりともない!変な誤解は、ロアンヌ嬢に失礼だろっ!」
「だって、ロアンヌ嬢は明らかに殿下に色目を使っておりますでしょう?それなのに、殿下はわたくしよりも、ロアンヌ嬢を選ぶとおっしゃるのでございますか?」
「いや、そんなことは言っていない。ただ、君の態度があまりにも悪いと学園長から注意が届いている。この前もロアンヌ嬢の制服にわざとインクを瓶ごとぶっかけたと聞く。そして、その前には、ロアンヌ嬢の食事の中に虫をわざと入れたと聞く。どうして、君は、そんな愚かなことをするようになったのだ?昨年までの君は、誰からも慕われる優しい令嬢だったではないか?今では、立派な意地悪令嬢に成り下がっている!」
「そんな……濡れ衣ですわ。このロアンヌ嬢が殿下の気を惹くため、そのような嘘をでっち上げて吹聴なさっているのです!」
「俺の側近、護衛騎士、同じクラスの生徒の目撃者はたくさんいる」
他の生徒は、皆、遠巻きにして、3人の話に聞き耳を立てている。正確には、殿下とクリスティーヌ様との話なのだが、その場に居合わせたロアンヌは、帰るに帰れない状態になり、オロオロするばかりなのだ。
「それにロバートは俺の親友だったことを君が一番よくわかっているではないか?親友の婚約者が嘆き悲しんでいる姿でいるのを黙って見過ごせと言うのか?君は、いつからそんな薄情な女になってしまったのだ?」
「では、殿下は本当にロアンヌ様に対して、親友の婚約者としてしか、見ておられぬということでしょうか?」
「……、……もちろん、そうだとも」
「その微妙な間はなんですの?悔しいっ!」
しばらくぼんやりしていると、クリスティーヌ様の怒りの矛先が、再びロアンヌを襲う。クリスティーヌは手に持っていた扇子で、ロアンヌを引っ叩いた。
「きゃぁっ!」
慌てて、リチャードが止めに入ろうとカラダを動かしたとき、どこからともなく甘えた声で、殿下の腕にぶら下がっている女の子を発見!
「「誰?この娘……、いつの間に」」
その娘のことは、リチャード殿下も初見らしく、戸惑っている。
「だ、誰だ?君は、どこから、入ってきた?おい!護衛、この女をつまみ出せ!」
教室の外にいた護衛は、慌てて殿下の腕にぶら下がっている女子生徒を引きはがすと、強引に廊下の外の外まで連れて行く。
「放しなさいよぉ!助けてぇ、リチャード!」
3人は、あっけにとられながら、その後ろ姿を見送る。
11
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
絶対に好きにならないと決めたのに。
流雲青人
恋愛
地味目な女子高生、岸田時雨(きしだ しぐれ)はある日の放課後、保育園へ妹を迎えに行ったその帰り道に公園で学校一の人気者、槙野伊織(まきの いおり)と小さな女の子に出会う。
この偶然の出会いから始まった二人の関係――
正反対な二人のすれ違ったり、歩み寄ったりな物語
※大賞候補に残ったようです(*^^*)
奨励賞を頂きました。有難い!
応援して下さった皆様、投票して下さった皆様、本当にありがとうございました。
背徳の恋のあとで
ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』
恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。
自分が子供を産むまでは……
物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。
母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。
そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき……
不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか?
※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。
ヒロインは辞退したいと思います。
三谷朱花
恋愛
リヴィアはソニエール男爵の庶子だった。15歳からファルギエール学園に入学し、第二王子のマクシム様との交流が始まり、そして、マクシム様の婚約者であるアンリエット様からいじめを受けるようになった……。
「あれ?アンリエット様の言ってることってまともじゃない?あれ?……どうして私、『ファルギエール学園の恋と魔法の花』のヒロインに転生してるんだっけ?」
前世の記憶を取り戻したリヴィアが、脱ヒロインを目指して四苦八苦する物語。
※アルファポリスのみの公開です。
悪役令嬢は高らかに笑う
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
婚約者に愛想を尽かされる為、これから私は悪役令嬢を演じます
『オーホッホッホッ!私はこの度、婚約者と彼に思いを寄せるヒロインの為に今から悪役令嬢を演じようと思います。どうかしら?この耳障りな笑い方・・・。きっと誰からも嫌われるでしょう?』
私には15歳の時に決まった素敵な婚約者がいる。必ずこの人と結婚して幸せになるのだと信じていた。彼には仲の良い素敵な幼馴染の女性がいたけれども、そんな事は私と彼に取っては何の関係も無いと思っていた。だけど、そんなある日の事。素敵な女性を目指す為、恋愛小説を読んでいた私は1冊の本に出合って気付いてしまった。何、これ・・・この小説の展開・・まるで今の自分の立ち位置にそっくりなんですけど?!私は2人に取って単なる邪魔者の存在なの?!だから私は決意した。小説通りに悪役令嬢を演じ、婚約者に嫌われて2人の恋を実らせてあげようと—。
※「カクヨム」にも掲載しています
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる