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結局、クリスティーヌは、ロアンヌに刺客を送ると発言したことを咎めだてられ、リチャードとの婚約破棄に同意せざるを得なくなる。
「そんな……知らなかったのよ。ロアンヌ様が殿下の子を宿していたなんて、でも間違いなく殿下との子なのでしょうね?」
「それは、一体どういう意味だ?貴様は、どこまで俺とロアンヌのことを愚弄いたすか?」
ロアンヌは、結婚してから、一歩もお城の外へ出たことはない。そのことは、城で働いている者にとっては当たり前に知っている共通認識なのだが、クリスティーヌは、あのイジメの後、すぐロアンヌが王家に嫁いだことを知らない。
そもそもロアンヌが結婚するに至った原因がクリスティーヌのいじめだということに気づかないでいる。
王族と婚姻をするときは、その娘は純潔でなければならず、初夜のシーツの血痕がその証明をすることになっている。
ロアンヌとの初夜は、都合10数回に及んだが、バッチリ血痕が染みついているものだったので、見事セーフとなったわけで、考えてみれば、よく10数回もコトに及べたと感心してしまう。
それだけお互い相性が抜群に良かったとしか言えない。それとも、誠心誠意、リチャードに気に入られようとロアンヌがご奉仕していたかのどちらかだと思うが、やはり相性だという気がする。
クリスティーヌが正妃としての婚約者の地位を退いたことにより、ロアンヌは正室へ繰り上がる。
世の中わからないもの、一時は修道院へ行くとまで、思いつめていた令嬢が、新しい結婚相手に王太子殿下が名乗りを上げてくださったおかげで、人生が大きく変わってしまった。
それでも、最初は、リチャード殿下にはクリスティーヌ様という筆頭公爵家の令嬢が婚約者としていらっしゃったので、側室として、妾としての御寵愛に過ぎなかったというのに。
ロアンヌとしては、たとえ妾としてでも、若い男の慰み者になる方が、はるかにマシな縁談で、喜んでその身を捧げたものだから、瓢箪から駒というか、棚から牡丹餅というべきか、なんという幸運に恵まれたのだろうか。
クリスティーヌは、学園を卒業せずに修道院に行くことになった。さもなければ、むち打ちの刑が待っていたので、今までさんざん他人を扇子で叩いてきたが、自分が鞭で打たれるなど、絶対に嫌だ。
それで早く修道院に行くことにしたのだ。
刺客という不穏な言葉を使ったにもかかわらず、クリスティーヌは罪人用の馬車ではなく公爵家が用意した馬車に乗り、修道院へ行く。それがいけなかったのか、修道院へ行く道すがら、山賊に襲われ、クリスティーヌは、山賊に辱めを受け、性奴隷として異国の地へ売り飛ばされてしまったと後で聞いた。
もし罪人用の馬車で行っていたら、山賊に見向きもされず、修道院で平穏な一生を送れたものを。
自業自得とはいえ、あまりにむごい運命の岐路に絶望するしかない。
クリスティーヌは自身のプライドを守るため、自害を謀ろうとするが、山賊は、クリスティーヌに舌を噛み切られぬよう猿轡を噛ませ、国境を超えた。
そして、二度と生まれ故郷の土を踏むことなく、異国で果てる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
クリスティーヌが学園から去ったおかげで、いたって平穏な日々を送ることができた。とも限らない。
それは春から転入してきた男爵家の庶子、クリスティーヌがキンキン声で叱責をしていた男爵令嬢のリリアーヌが、クリスティーヌの婚約者の地位を奪取せんとばかりに張り切って、リチャードに猛アプローチをかけている。
もうリチャードには、ロアンヌという愛妻がいるとも知らずに、今日も今日とて、リチャード殿下の付きまといをしている。
クリスティーヌのように、他人を害して、優位に立とうとしないので、無害ではないが、放任して好きにさせている。
家に帰れば、愛妻が「今日は早く出たいって、お腹を蹴りましたわ」なんて、行ってくれるから、学園でのことなど、上の空でいるのだ。
「ねえ、私を側室にしてくださらない?だって、クリスティーヌ様があんなことになってしまっておいでで、殿下もお寂しいでしょう」
「間に合っている」
「まったぁ~、強がっちゃって、こういう時は、遠慮なんてしていたら損するだけですよ。どうぞ、ピチピチの私を味見してみてくださぁい」
「ピチピチなら、城にいる」
「っもうぅ、可愛くないなぁ。素直にリリアーヌが欲しいと言っちゃいなさぁい」
「間に合っている」
「どうしたら、リチャード様の心を掴めるのかしら?」
「そうだな、俺は勉強ができて、優しくて、礼儀正しくて、従順な素直な娘が良いなぁ」
「ええーっ!そんな女性いませんよ。殿下の前で猫をかぶっているだけですよ」
たとえロアンヌの猫かぶりでも構わない。猫かぶりは、やがて本物の愛に移る可能性を秘めている。一生懸命ロアンヌが努力してくれている姿ほど、愛おしいものはない。それでこそ、苦労して手に入れた甲斐があるというもの。
「そうか?でも、猫かぶりも面白いものだぞ」
ロアンヌは、まさにリチャードの理想とする女性だ。結婚してから、リチャード好みに育て上げたところもあるが、ロアンヌは、それに耐え、よくついてきてくれたと思う。それだけで勲一等に準じる。だから離婚する気はない。一生添い遂げたいと本気で思っているのだ。
「そんな……知らなかったのよ。ロアンヌ様が殿下の子を宿していたなんて、でも間違いなく殿下との子なのでしょうね?」
「それは、一体どういう意味だ?貴様は、どこまで俺とロアンヌのことを愚弄いたすか?」
ロアンヌは、結婚してから、一歩もお城の外へ出たことはない。そのことは、城で働いている者にとっては当たり前に知っている共通認識なのだが、クリスティーヌは、あのイジメの後、すぐロアンヌが王家に嫁いだことを知らない。
そもそもロアンヌが結婚するに至った原因がクリスティーヌのいじめだということに気づかないでいる。
王族と婚姻をするときは、その娘は純潔でなければならず、初夜のシーツの血痕がその証明をすることになっている。
ロアンヌとの初夜は、都合10数回に及んだが、バッチリ血痕が染みついているものだったので、見事セーフとなったわけで、考えてみれば、よく10数回もコトに及べたと感心してしまう。
それだけお互い相性が抜群に良かったとしか言えない。それとも、誠心誠意、リチャードに気に入られようとロアンヌがご奉仕していたかのどちらかだと思うが、やはり相性だという気がする。
クリスティーヌが正妃としての婚約者の地位を退いたことにより、ロアンヌは正室へ繰り上がる。
世の中わからないもの、一時は修道院へ行くとまで、思いつめていた令嬢が、新しい結婚相手に王太子殿下が名乗りを上げてくださったおかげで、人生が大きく変わってしまった。
それでも、最初は、リチャード殿下にはクリスティーヌ様という筆頭公爵家の令嬢が婚約者としていらっしゃったので、側室として、妾としての御寵愛に過ぎなかったというのに。
ロアンヌとしては、たとえ妾としてでも、若い男の慰み者になる方が、はるかにマシな縁談で、喜んでその身を捧げたものだから、瓢箪から駒というか、棚から牡丹餅というべきか、なんという幸運に恵まれたのだろうか。
クリスティーヌは、学園を卒業せずに修道院に行くことになった。さもなければ、むち打ちの刑が待っていたので、今までさんざん他人を扇子で叩いてきたが、自分が鞭で打たれるなど、絶対に嫌だ。
それで早く修道院に行くことにしたのだ。
刺客という不穏な言葉を使ったにもかかわらず、クリスティーヌは罪人用の馬車ではなく公爵家が用意した馬車に乗り、修道院へ行く。それがいけなかったのか、修道院へ行く道すがら、山賊に襲われ、クリスティーヌは、山賊に辱めを受け、性奴隷として異国の地へ売り飛ばされてしまったと後で聞いた。
もし罪人用の馬車で行っていたら、山賊に見向きもされず、修道院で平穏な一生を送れたものを。
自業自得とはいえ、あまりにむごい運命の岐路に絶望するしかない。
クリスティーヌは自身のプライドを守るため、自害を謀ろうとするが、山賊は、クリスティーヌに舌を噛み切られぬよう猿轡を噛ませ、国境を超えた。
そして、二度と生まれ故郷の土を踏むことなく、異国で果てる。
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クリスティーヌが学園から去ったおかげで、いたって平穏な日々を送ることができた。とも限らない。
それは春から転入してきた男爵家の庶子、クリスティーヌがキンキン声で叱責をしていた男爵令嬢のリリアーヌが、クリスティーヌの婚約者の地位を奪取せんとばかりに張り切って、リチャードに猛アプローチをかけている。
もうリチャードには、ロアンヌという愛妻がいるとも知らずに、今日も今日とて、リチャード殿下の付きまといをしている。
クリスティーヌのように、他人を害して、優位に立とうとしないので、無害ではないが、放任して好きにさせている。
家に帰れば、愛妻が「今日は早く出たいって、お腹を蹴りましたわ」なんて、行ってくれるから、学園でのことなど、上の空でいるのだ。
「ねえ、私を側室にしてくださらない?だって、クリスティーヌ様があんなことになってしまっておいでで、殿下もお寂しいでしょう」
「間に合っている」
「まったぁ~、強がっちゃって、こういう時は、遠慮なんてしていたら損するだけですよ。どうぞ、ピチピチの私を味見してみてくださぁい」
「ピチピチなら、城にいる」
「っもうぅ、可愛くないなぁ。素直にリリアーヌが欲しいと言っちゃいなさぁい」
「間に合っている」
「どうしたら、リチャード様の心を掴めるのかしら?」
「そうだな、俺は勉強ができて、優しくて、礼儀正しくて、従順な素直な娘が良いなぁ」
「ええーっ!そんな女性いませんよ。殿下の前で猫をかぶっているだけですよ」
たとえロアンヌの猫かぶりでも構わない。猫かぶりは、やがて本物の愛に移る可能性を秘めている。一生懸命ロアンヌが努力してくれている姿ほど、愛おしいものはない。それでこそ、苦労して手に入れた甲斐があるというもの。
「そうか?でも、猫かぶりも面白いものだぞ」
ロアンヌは、まさにリチャードの理想とする女性だ。結婚してから、リチャード好みに育て上げたところもあるが、ロアンヌは、それに耐え、よくついてきてくれたと思う。それだけで勲一等に準じる。だから離婚する気はない。一生添い遂げたいと本気で思っているのだ。
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