死者からのロミオメール

青の雀

文字の大きさ
19 / 27

19.

しおりを挟む
 イソフラボン領のことを調べれば調べるほど、謀反の疑いが濃くなってくる。筆頭公爵だったことをいいことにして、やりたい放題、好き放題をしているのだ。

 イソフラボン家はイソフラボン領だけでなく、例えば、ルクセンブルグ家のような廃位となった貴族の領地までも、我が物にして、王国内に点々と領地を拡大していたことがわかる。

 さすがにルクセンブルグ家の領地にまでは、まだ手を出せていないものの。それぞれの第2、第3、第4の領地にいる騎士を合わせた総数は3万もの大軍にのぼるということが分かったのだ。

 3万もの大軍で一気に王都を目指されたら、ものの数日で陥落することは目に見えている。

 イソフラボンの狙いはわかっている。国王であるアウグストの首を狙い、筆頭公爵の復権というより、王国の乗っ取りを企てていることは明白である。

 クリスティーヌが婚約破棄されたうえ、修道院送りになったことがよほど堪え、さらに修道院へ行く途中、盗賊に襲われ、護衛騎士は皆殺しにされ、クリスティーヌは辱めを受け、国外へ攫われたことに怒りを感じていることは明白なことだったのに、そのことについて、王家は表立って、外交問題に上げず、見て見ぬふりをしていたことに対する憤懣がこのクーデターの要因になっていると思われる。

 クリスティーヌが口だけであったとしても、ロアンヌを亡き者にしようとしたこと、第1王子の生母は国母そのものであり、それに加え、学園での様々ないじめに加担していたことも明白で、婚約破棄後、どこかに嫁に行けばいいものを敢えて良しとせず。修道院送りを甘んじて受け入れたことはイソフラボン自身の意思であったにかかわらず、逆恨みもいいところである。

 近日中にイソフラボンを王城に呼ぶことにして、王都にあるイソフラボン邸の周りに見張り所を設けることにする。一番いいのは、クロイセン家に騎士団を派遣することとだが、1万名もの騎士団を配備することなど、可能かどうか計り知れない。

「うーん。そうですわね。我が家に1万名でございますか?庭までテントでも張ってくださるというのなら、たぶん大丈夫かと思います」

 ロアンヌは、のんきそうに言うが、ここはやはりクロイセン家の執事か家令あたりに直接聞いた方が無難なことは間違いないだろう。

 時と場合によれば、ルクセンブルグ邸を拝借してもいいだろう。それこそお化けが出るかもしれないが、背に腹は代えられない。

 ここの所、体調が悪かったロアンヌは、懐妊していたことが分かったのだ。それも悪阻が終わりかけの安定期に入るまで、気が付かなかったというから恐れ入る。

 この前のフランダース夫人から、「少しお顔がふっくらされましたわね」と言われるまで、なんだかいろいろなことがあり過ぎて、すっかり月のものが来ていないことに気づいていなかった。

 リチャード殿下からも、国王陛下からも、何より王妃陛下から、怒られた。

「ロアンヌ、あなたはもう一人のカラダではございませんことよ。ウイリアムの母であることを忘れてはなりません。あなたに何かあれば、お腹の子供も一緒に亡くなるということをわからなければなりませんわ」

「はい」

 なんといっても、王太子の役目は子供をできるだけ多く産むことにあるから、仕方がないとはいえ、まるで鶏卵のように産みまくるというのも納得がいかないような……?

 そこに愛はあるんか?

 某CMのようなことを思ってしまうけど、リチャード殿下は間違いなく、ロアンヌのことを愛してくれているということはわかっているつもり。

 体調が悪かったのも、ロバートが夢枕に立ったからではなく、妊娠初期の体調の悪さだと納得する。

 今日から、また頑張らなくっちゃ。元気な赤ちゃんを産むために、たまには散歩や日光浴も大事。政務のことは、リチャードに任せて、ロアンヌは出産の時を待ち望むことにする。

  イソフラボン公爵圖齊は、王城に呼ばれたことに最初は、筆頭公爵の復帰か叙勲だと勘違いしていたらしく、嬉々として参上したのだが、それが騎士の数が多すぎると指摘されてから声を荒げて王国の在り方を抗議してくるようになった。

「だいたい、あんまりではないか?クリスティーヌをこともあろうに婚約破棄するばかりか、罪人にしてしまうなど……、確かにあの娘は、気はキツイし、我がままで自分勝手なところはあるが、クリスティーヌは心底リチャード殿下に惚れていたというのに」

「しかし、王太子妃に刺客を送ると発言して、学園時代には、数多のいじめがあり、他の女子生徒や王太子妃を叩くこともあったのだ。罪人でなければ、それでは修道院送りではなくむち打ち刑の方が良かったと申すのか?」

「そんな……、それこそあまりにもむごいではありませんか!クリスティーヌは心底、リチャード殿下を愛していたというのに」

「俺には、そう見えなかった。毎日、顔を合わせるたびにイヤミばかりを言われていた記憶しかない」

「子供が好きな子を苛めるということは、よくあることでございます。それと同じです。クリスティーヌは、まだ身も心も無垢だったのです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください

こじまき
恋愛
【全3話】公爵令嬢ツェツィーリアは、婚約者である公爵令息レオポルドから「真実の愛を見つけたから婚約破棄してほしい」と言われてしまう。「そう言われては、私は身を引くしかありませんわね。ただし最低限の礼儀として、あなた方の愛が本当に真実の愛だと証明していただけますか?」

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

伝える前に振られてしまった私の恋

喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋 母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。 第二部:ジュディスの恋 王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。 周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。 「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」 誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。 第三章:王太子の想い 友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。 ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。 すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。 コベット国のふたりの王子たちの恋模様

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...