番とあれこれしてみた

沙耶

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二話

「御木様ー!」

と、言われながら車を降りるのはもう慣れた。
生まれながらのアルファで、上流家庭に産まれ、自らも上位種であるから、それはもう仕方のないことだ。


車を降り、教室へ入れば、隣の席に座っていた男が本から目を離す。


「紫苑、おはよう。」

天パの金髪そして、世にも珍しい緑の瞳を持つコイツは俺と同じ、上位種のアルファだ。

メガネの奥にきらめくその瞳は純粋に見えるが、コイツだってアルファ。
支配者としてのコイツは、恐ろしいと皆言う。

「アルト、おはよう。」

アルト・セラ。
クオーターで、幼馴染。
家同士も仲が良く、物心つく頃には二人一緒だった。

「紫苑、あれ…使ったんだって?」

「はあ…もう情報回ってるのか…」

「珍しいな~と思ってさ、紫苑耐性結構あるでしょ。これだった?」

そうやって見せてくるアルトの手。
小指って…。彼女の意味を指すそれは、俺達アルファの世界では運命の番を意味するのだ。

「これ。」

同じように小指を見せる。


「マジ?」

「本気とかいてマジ。」

驚いたように目を開くアルトを尻目に、あのときのことを思い出す。


それは、この前のことだ。
窓を少し開けながら夕方、車に乗り帰宅していたら、甘い、体を熱くするようなそんな匂いがしてきた。

上位アルファに、オメガの匂いはあまり効かず、むしろ、自分の香りで平伏させるといわれている程に、上位アルファは全人類の頂点に立つ強者なのに…。


「くっ、んっ。」


意識を、持っていかれそうになった。

あの甘い香り。
あの、孕ませたいという欲求。

運命だ。

すぐにわかった。

すぐにでも車を止めさせ、運命を追いかけたかったが、自分自身も体が興奮し緊急抑制剤を打ち込まなければならず、結果として、運命を逃した。

アルトの言っていたあれは、緊急抑制剤のことだろう。俺達にとって常備しているものであっても、使うことは滅多にない。


「遅かったか…!」

悔しさと絶対に捕まえてやるという本能で、辺りを我武者羅に探したが、見つからず、未だにこの腕の中へ抱き込めていないのだ。


「そっか、紫苑、見つけれなくて残念だったね。」

「この気持ちがわかるか。」

「まあ、でも、良かったんじゃない?実際にいるってわかったわけだしさ。」


運命を見つけられず、他のパートナーを選ぶ者も存在する中で、運命を見つけられただけでも、自分は幸せ者なのだろう。


「僕も早く会いたいな~運命の番。」


「アルトは、どんな子なんだろうな。」


「どんな子だっていいよ。居てくれれば、それだけで。」

「まあ…そうだな。」

「一人かもしれないし、家族が優しいかもしれない。どんな状況にいるのかすらわからないけど、僕が迎えに行くまで、ただ、無事でいてほしい。本当、それだけだよ。」



夢から来た王子とか、冷徹な支配者とか、色々な言い方をされるアルトだけど、なんだかんだいって、優しいんだよな。


と、思う俺である。



今高校2年の俺らが通う高校は都内トップ、日本トップにアルファ、オメガ率が高い高校だ。

そんな中通ってくるベータの大半はすでにアルファの側近登録を済ませている「認可ベータ」で残りは「認可ベータ」になることを求める「就活ベータ」と呼ばれる人間たちだ。


オメガは、番に心配されてこの高校に入れられた者や、ベータ同様に番探しにきた者など理由が多岐に渡ることが多く、事情も様々だ。

実際に、この学校で運命の番が見つかる者は多いし、ベータも優秀なので認可ベータも増えるしで、毎年倍率は高い。


「紫苑様、こちらが今日の書類です。」

今書類を渡して来たこのベータも、この高校で見つけた。

「見ておく。」

「よろしくお願いします。」


山田太郎・花子の二人、ベータであるが入籍できる年齢を迎えた瞬間に入籍すると熱く語るカップルである。

お互いに愛し合っているので、俺のフェロモンにやられることもないだろうと踏んだが、そのとおりになって、すでに認可も終えた。


「アルトも、今日は生徒会の会議に出ろよ、一応副会長なんだから。」

「わかってるって。」

音楽を愛すアルトは、生徒会役員になったが、どうせ上位種だから決まっていたことでしょ?と、早々に仕事を投げてしまっていた。

以降、仕事の時間を音楽室でピアノを弾くことに費やすアルトの側近ベータは、アルトの仕事の肩代わりをしているので、大変そうな様子が見て取れるが、盲信してしまっているようだ。



「今頃何をしてるのか…」

窓から外を見上げた。


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