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第3話 神のセットアップ
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素直に答えるべきか、否か。
メリアが悩んでいると、グラーツも悩み始めてしまった。
「……やはり目視で作ったのがよくなかったかな……」
「そういう問題ではない……っていうか目視で作ったの、この下着!? まあそうか。サイズなんか公表してないしね。それにしては随分とサイズ合ってるけど……」
「ええ」
自らの目を指差しつつグラーツはニヤリと笑う。
「僕には女性のサイズが見ただけで分かるという特殊能力があるんです」
「よくあるやつね。宴会芸で話題になるやつだわ」
下着のサイズがピッタリ合うような正確さは凄いけど……。
「しかしメリア団長のその口ぶり……、ってことは僕の作った下着、着てくれてるんですね!」
「…………………………」
認めていいのか? 悪いのか?
逡巡し押し黙るメリアにグラーツは畳みかける。
「サイズは合ってます? 着心地は? ホックは背中と前とどっちがいいですか? あ、ホックといえば二日目に届けたブラってホックにちょっとした工夫をしたんですが分かりました? そういえば谷間の部分にアクセントとしてクリスタルビーズをつけてみたんですがやっぱりいらないですかね? ブラひもは取れる方がいいですか?」
「ちょ、待て待て待て待て。なにその熱意!?」
「僕は……女性用下着が好きなんです! 特にブラジャーが!」
「まあそうでしょうね」
彼の今の格好は男性用女性用下着……とにかくブラジャーとショーツを素肌の上に身につけているだけという変態形態である。
あれをわざわざ自分で開発したというのだから堂に入っている。
「だから僕は自分でブラジャーとショーツを作ったんです。でもまだだ……まだ足りない」
彼は自らのブラジャーの前で拳を握りしめた。
「下着はその人の基本となるものです。いい下着を身につければそれだけで自信に繋がる。そうすれば日常の動きにだって変化する。現に団長……、団長だって僕の下着を身につけて訓練の成績がよくなっている!」
「なっ、何故それを……!?」
「ふふん、見ていれば分かりますよ。僕が下着を届けてすぐに団長の動きのキレがよくなったんですからね……。つまり団長は僕の下着を身につけている! そして動きのキレがよくなったから嬉しいんだ!」
「ぐぬぅ……」
まさに起こったことを言われ、メリアはぐうの音も出なかった。
「ならば団長。見てみたくはないですか、まだ見ぬ頂にある最高のセットアップ……神のセットアップを!」
「神の……セットアップ……?」
また変なことを言い出しやがったぞ、この変態……。
「ええ。それを着ればスタイルが良くなって自信に溢れ、姿勢も矯正され、動きのキレがよくなってさらに寝付きも良くなり朝もすっきりお目覚めしてお通じもよくなる! そんな人間生活の根底を服の下からしっかり下支え……神のセットアップ!」
「あー、ごめん。私寝るときはブラ外す派だから」
「別に昼間だけでも大丈夫ですよ。寝ているときより起きているときの方が長いし、それによって体幹が下着の感覚を覚えますから」
「そんなもんかしらね」
「そんなもんです。とにかく! 僕は神のセットアップを作りたい。だけど目視では限界がある。だから実際に測りたい、感じたい……僕は団長の下着姿のデータをとりたい!」
「それが私を助ける条件ってわけね?」
ギシ……と天井から吊された網がきしる。そろそろ縄が食い込んできて痛いので、はやくこの茶番を終わらせたいところである。
「そうです! 団長、あなただって本当は欲しいはずだ。僕の愛のセットアップが! そう僕の愛が!」
グラーツに熱を込めた視線で見つめられ――メリアの心臓は不意にドキッとしてしまった。
(え? な、なにこれっ!)
いちど意識してしまえば止まらず、メリアの顔はどんどん赤くなっていく。
「ふふふ、図星ですね。顔が真っ赤ですよ団長……。分かりますよ。僕の愛と神のセットアップ、欲しいですよね!」
「そんなんじゃないけどぉ……」
まさか神のセットアップなんかじゃなくて理想に燃えるグラーツにときめいてしまったんた――なんて、それこそ言えるわけがない。
というかこいつ、どさくさに紛れて告白してないか?
メリアが悩んでいると、グラーツも悩み始めてしまった。
「……やはり目視で作ったのがよくなかったかな……」
「そういう問題ではない……っていうか目視で作ったの、この下着!? まあそうか。サイズなんか公表してないしね。それにしては随分とサイズ合ってるけど……」
「ええ」
自らの目を指差しつつグラーツはニヤリと笑う。
「僕には女性のサイズが見ただけで分かるという特殊能力があるんです」
「よくあるやつね。宴会芸で話題になるやつだわ」
下着のサイズがピッタリ合うような正確さは凄いけど……。
「しかしメリア団長のその口ぶり……、ってことは僕の作った下着、着てくれてるんですね!」
「…………………………」
認めていいのか? 悪いのか?
逡巡し押し黙るメリアにグラーツは畳みかける。
「サイズは合ってます? 着心地は? ホックは背中と前とどっちがいいですか? あ、ホックといえば二日目に届けたブラってホックにちょっとした工夫をしたんですが分かりました? そういえば谷間の部分にアクセントとしてクリスタルビーズをつけてみたんですがやっぱりいらないですかね? ブラひもは取れる方がいいですか?」
「ちょ、待て待て待て待て。なにその熱意!?」
「僕は……女性用下着が好きなんです! 特にブラジャーが!」
「まあそうでしょうね」
彼の今の格好は男性用女性用下着……とにかくブラジャーとショーツを素肌の上に身につけているだけという変態形態である。
あれをわざわざ自分で開発したというのだから堂に入っている。
「だから僕は自分でブラジャーとショーツを作ったんです。でもまだだ……まだ足りない」
彼は自らのブラジャーの前で拳を握りしめた。
「下着はその人の基本となるものです。いい下着を身につければそれだけで自信に繋がる。そうすれば日常の動きにだって変化する。現に団長……、団長だって僕の下着を身につけて訓練の成績がよくなっている!」
「なっ、何故それを……!?」
「ふふん、見ていれば分かりますよ。僕が下着を届けてすぐに団長の動きのキレがよくなったんですからね……。つまり団長は僕の下着を身につけている! そして動きのキレがよくなったから嬉しいんだ!」
「ぐぬぅ……」
まさに起こったことを言われ、メリアはぐうの音も出なかった。
「ならば団長。見てみたくはないですか、まだ見ぬ頂にある最高のセットアップ……神のセットアップを!」
「神の……セットアップ……?」
また変なことを言い出しやがったぞ、この変態……。
「ええ。それを着ればスタイルが良くなって自信に溢れ、姿勢も矯正され、動きのキレがよくなってさらに寝付きも良くなり朝もすっきりお目覚めしてお通じもよくなる! そんな人間生活の根底を服の下からしっかり下支え……神のセットアップ!」
「あー、ごめん。私寝るときはブラ外す派だから」
「別に昼間だけでも大丈夫ですよ。寝ているときより起きているときの方が長いし、それによって体幹が下着の感覚を覚えますから」
「そんなもんかしらね」
「そんなもんです。とにかく! 僕は神のセットアップを作りたい。だけど目視では限界がある。だから実際に測りたい、感じたい……僕は団長の下着姿のデータをとりたい!」
「それが私を助ける条件ってわけね?」
ギシ……と天井から吊された網がきしる。そろそろ縄が食い込んできて痛いので、はやくこの茶番を終わらせたいところである。
「そうです! 団長、あなただって本当は欲しいはずだ。僕の愛のセットアップが! そう僕の愛が!」
グラーツに熱を込めた視線で見つめられ――メリアの心臓は不意にドキッとしてしまった。
(え? な、なにこれっ!)
いちど意識してしまえば止まらず、メリアの顔はどんどん赤くなっていく。
「ふふふ、図星ですね。顔が真っ赤ですよ団長……。分かりますよ。僕の愛と神のセットアップ、欲しいですよね!」
「そんなんじゃないけどぉ……」
まさか神のセットアップなんかじゃなくて理想に燃えるグラーツにときめいてしまったんた――なんて、それこそ言えるわけがない。
というかこいつ、どさくさに紛れて告白してないか?
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