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第21話 側仕えは主君を守りたい
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「まあ、ロマンティックですこと。でもそれってこんなふうに剣を突きつけながら言う台詞かしら?」
「こうでもしないとあんたは話も聞いてくれないからな。いっとくが、俺が最初に結婚を望んだのはあんただ」
「それは、ごめんなさい。でも私は王女、流浪の騎士であるあなたの好意には応えることはできないのです」
「うるさい。こっちにはこっちの事情ってもんがあるんだ。いいか、あんたと俺は女神に愛を誓いながらキスをするんだ。それだけでいい、それだけで俺はこの仮面とおさらばできる」
「それはどういうことかしら」
「そういうゲームをしてるんだよ、俺は。『忘れられし愛の女神』とかいう忌々しい女神とな」
え……?
とソールーナは思わず聞き耳を立てる。
そんなこと、ちっとも知らなかったから。
「俺は聖女と愛を誓いながらキスをしなくちゃならないんだよ。そうすればこの仮面をとっても力が失われない。だからお前は俺を助けると思って俺に愛を誓えばいいんだ!」
リュクレスはフィメリアに向け、剣を振り下ろす。
ソールーナの全身の毛穴がざわっと開いた。
「させないっ!」
ソールーナは起き上がりざまにリュクレスに横から体当たりしたのだ。
「姫様は殺させませんっ!」
だがさすがは歴戦の旅の騎士。ソールーナの体重の乗った体当たりくらいではびくともしない。
かえってソールーナは片手で抱えられてしまった。
「……っ!」
それでつい先ほどのキスのことを思い出してしまうが、今はそれどころではない。フィメリアの命がかかっているのだ。
「殺すんじゃない、愛を誓わせキスするだけだ」
ソールーナはもがいて腕の戒めを解こうとするが、かえってぎゅっと腕の力が強くなる。
「じゃあどうして剣で切りつけるんですか!」
「峰打ちにして気絶させて縄で巻くためだ」
「とてもそうは見えませんでしたが。姫様に乱暴したら許しませからね!」
「お前はどっちの味方なんだよ」
「私は姫様の側仕えです。姫様をお守りするのが私の仕事です!」
「いいだろう。邪魔をするならお前を斬る」
「やってみるがいいです。私はただじゃあ斬られませんからね!」
腕の中でもがきながら、ソールーナは覚悟を決める。もしここで斬られたってフィメリアは絶対に守る――たとえ首だけになったとしても、噛みついて動きを邪魔してやる……と闘志を燃やす。
リュクレスは片腕でソールーナを抱えたまま、じっと彼女を見下ろしている……。
「おやめなさい、二人とも」
二人の間にあった緊迫した膠着を解いたのは、フィメリアのため息交じりの一言だった。
「ご夫婦なんですから、こんなことで喧嘩しては駄目よ。少し落ち着きましょう?」
「あんたが俺を愛しキスしてくれりゃそれで済む話なんだよ」
「それがね、そういうわけにもいきませんのよ」
フィメリアはいたずらっぽく笑ってみせる。
「わたくし、婚約が決まりましたの」
「こうでもしないとあんたは話も聞いてくれないからな。いっとくが、俺が最初に結婚を望んだのはあんただ」
「それは、ごめんなさい。でも私は王女、流浪の騎士であるあなたの好意には応えることはできないのです」
「うるさい。こっちにはこっちの事情ってもんがあるんだ。いいか、あんたと俺は女神に愛を誓いながらキスをするんだ。それだけでいい、それだけで俺はこの仮面とおさらばできる」
「それはどういうことかしら」
「そういうゲームをしてるんだよ、俺は。『忘れられし愛の女神』とかいう忌々しい女神とな」
え……?
とソールーナは思わず聞き耳を立てる。
そんなこと、ちっとも知らなかったから。
「俺は聖女と愛を誓いながらキスをしなくちゃならないんだよ。そうすればこの仮面をとっても力が失われない。だからお前は俺を助けると思って俺に愛を誓えばいいんだ!」
リュクレスはフィメリアに向け、剣を振り下ろす。
ソールーナの全身の毛穴がざわっと開いた。
「させないっ!」
ソールーナは起き上がりざまにリュクレスに横から体当たりしたのだ。
「姫様は殺させませんっ!」
だがさすがは歴戦の旅の騎士。ソールーナの体重の乗った体当たりくらいではびくともしない。
かえってソールーナは片手で抱えられてしまった。
「……っ!」
それでつい先ほどのキスのことを思い出してしまうが、今はそれどころではない。フィメリアの命がかかっているのだ。
「殺すんじゃない、愛を誓わせキスするだけだ」
ソールーナはもがいて腕の戒めを解こうとするが、かえってぎゅっと腕の力が強くなる。
「じゃあどうして剣で切りつけるんですか!」
「峰打ちにして気絶させて縄で巻くためだ」
「とてもそうは見えませんでしたが。姫様に乱暴したら許しませからね!」
「お前はどっちの味方なんだよ」
「私は姫様の側仕えです。姫様をお守りするのが私の仕事です!」
「いいだろう。邪魔をするならお前を斬る」
「やってみるがいいです。私はただじゃあ斬られませんからね!」
腕の中でもがきながら、ソールーナは覚悟を決める。もしここで斬られたってフィメリアは絶対に守る――たとえ首だけになったとしても、噛みついて動きを邪魔してやる……と闘志を燃やす。
リュクレスは片腕でソールーナを抱えたまま、じっと彼女を見下ろしている……。
「おやめなさい、二人とも」
二人の間にあった緊迫した膠着を解いたのは、フィメリアのため息交じりの一言だった。
「ご夫婦なんですから、こんなことで喧嘩しては駄目よ。少し落ち着きましょう?」
「あんたが俺を愛しキスしてくれりゃそれで済む話なんだよ」
「それがね、そういうわけにもいきませんのよ」
フィメリアはいたずらっぽく笑ってみせる。
「わたくし、婚約が決まりましたの」
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