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1.お姉様と国王暗殺未遂事件

18.お姉様と女王様

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 黒い人影が兄さんに近づく。光るナイフ。レオ兄さんの寝ているベッドに向かって鋭い刃が振り下ろされる。

「危ない、兄さん!」

 俺は天井裏で叫んだ。途端――

 ドサドサドサドサッ!

 天井の床が抜け、俺は屋根裏から真っ逆さまに落ちたのだった。

「あたたたたたたたた!」

「いたい!」

 俺とヒイロは重なるように下の兄さんの部屋に転がり落ちた。

「このデカい脂肪の塊を早くどかせ」

 ヒイロはなぜか俺の胸を思い切り揉みしだく。痛たたた!

「待て待てそんなことしてる場合か! それよりも兄さんを――」

 ヒイロに乳を揉まれつつも兄さんが寝ているベッドを見る。
 黒ずくめの怪しい影が兄さんに向かってナイフを振り下ろそうとしたものの、兄さんはナイフの柄を掴み、すんでのところで暗殺を免れたようだ。

「兄さん!」

 俺が叫ぶと、兄さんは暴漢の腹部を蹴り上げる。暴漢と共に、ナイフは床に転がる。呻きながら床にうずくまる人影。

「貴様、レオ王子ではない!?」

 顔を上げる暴漢。その顔には見覚えがあった。銀髪のツインテールを揺らして叫ぶるメイド。暴漢はメイドのシュシュだったのだ。

「やはりあなたが犯人ですか」

 言いながら兄さんと思われた人間が顔に手を当てる。白い光とともに顔から剥がれ落ちる無数の糸。見る見るうちに、レオ兄さんの顔はアオイの顔に変わっていった。アオイが変身魔法で兄さんになり変わっていたのだ。

「アオイ!」
 
 叫ぶと、アオイは少しだけ笑顔を見せた。

「おのれ! レオ王子はどこへやった!」

「ここにはいない。最初からこの城へ来ていたのは私だよ」

 アオイが冷静に告げる。そ、そうだったのかー!

「さ、観念してお縄に」

「クソッ!」

 するとシュシュはナイフ片手に襲いかかってくる。俺はそれを避けると彼女の右手をねじりあげた。

「きゃん!」

 シュシュが可愛らしい悲鳴を上げる。

「言え! グンジ叔父さんはどこだ?」

「痛たたた! ちっ、地下の隠し部屋よっ! そこの暖炉の隠し通路から行けるっ!」

 シュシュは俺のすぐ後ろにある暖炉を指さす。どうやら俺を狙ったの後方の隠し通路から逃げるためだったらしい。
 素直に白状したので、俺はシュシュの手を離してやると、ポンポンと頭を撫でた。

「あんがとよ。あんたのこの綺麗な手は暗殺なんか似合わない。もう二度とこんなことすんじゃねーぞ?」

 そう言ってウインクしてやると、シュシュの顔が見る見るうちに茹でダコのように赤くなってゆく。

「はい。お姉さま♡」

 恍惚の表情で俺を見つめてくるシュシュ。

「一体何人妹が増える?」

 呆れ顔をするヒイロ。そんな事言われても、自然に増えていくのだから仕方がない。

「お姉さま、こっちです!」

 アオイが暖炉の隠し通路のドアを開けながら叫ぶ。

「お、おう!」

 しかし俺が暖炉に近づいた瞬間、本棚の隠し扉から、武器を持った黒づくめの男たちがわらわらとはい出てくる。その数、ざっと見積もって二十人くらいだろうか。
 しまった。他にも隠し通路はあったか。

「ふふふ、今こそ私の紅蓮暗黒剣の力を見せる時」

 ヒイロがウキウキした顔で刀を構える。が――

「貴方たち!」

 そこへ現れたのは黒いマントを羽織ったアビゲイル義姉さんだった。
 俺は慌てふためいた。ここで義姉さんに何かあったら大変だ!

「義姉さん、危ないぜ! 部屋に戻って……」

「いいえ、その必要はないわ」

 不敵に笑うアビゲイル義姉さん。数10人の敵に囲まれているというのに、その顔は余裕に満ちている。

「え? 義姉さん?」


 するとアビゲイル姉さんが黒いマントを颯爽と脱ぎ捨てる。



 そこに現れたのは


 豊満な肉体に沿うように作られた黒い革製のボンテージ!
 踏まれただけで絶頂してしまいそうな踵《かかと》の高いニーハイブーツ!
 そしてその腕には、しなる黒いムチ!



「死にたいのは、どこのどいつだい?」


 真っ赤な唇がニヤリと笑う。


 えーと??

「ね、ねねね姉さん??」

 俺はあんぐりと口を開けるしかない。
 なんなの? 痴女なの? 女王様なの??


「アビゲイル様は昔、私たちと一緒に冒険者をやっていたんだ」

 ヒイロが解説してくれる。
 い、いやいや、冒険者って、こんなのだっけ? SMクラブの女王の間違いじゃなくて?

「ほら、昔からレベルの高い装備は露出度が高いと相場が決まっていますし」

 アオイもフォローする。
 そ、そうなのか? それなら仕方ない……のか?

「ここは私に任せて早くお行きなさい!」

 アビゲイル姉さんが叫ぶ。

「あ、ああ!」

 俺は我に返るとヒイロ、アオイとともに暖炉の隠し通路へと急いだ。
 隠し通路のドアを閉めると、ドアの向こうから

「ひー!!」
「許してください女王様ー!!」
「ぶって! もっとぶってください!」

 と言う声が聞こえてきた。
 楽しそうで何よりである。



 
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