夏の日陰ぐらし

幸先よし吉

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楽しみ木曜日、ピザデート

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「待った?」

「ううん、5分くらいだけ」

e子が待ち合わせ場所に来る。
今日はなんか、でっかいピアスをつけてた。

「なんか、でっかいピアスだね」

「えっ、どう?似合ってるでしょ」
e子がニコリとして同意を求める

「うん、良いと思うよ
お店すぐ近くだから行こっか」



結局、食事は駅から8分くらいのピザ屋さんに決めた
以前e子がクアトロフォルマッジが好きだと言っていたからだ。
ハチミツをかけて食べるピザは僕も好きだった。

「それで、最近はどんな感じ?」

ピザを一切れ取り寄せて、僕の方から切り出す。

「いや、それは私のセリフだけどね!
私が、最近のイヌロボはどうなのかなって心配になって、ご飯に誘ったんだから。
前まではさ、結構定期的に連絡くれてたじゃん。オススメの映画教えて~、とかさ」

あー、たしかにそうかも。
でもあんまり聞いてばっかじゃ申し訳なくて。
それに与えてもらうばかりで、僕からe子には何も与えられていないことに気付いて、
それが嫌になったんだよ、、

「あー、ごめん。何か、オススメの映画ある?」

なるべく冗談っぽく答えたけど、ヘラヘラ笑いのような、申し訳ないような、変な表情になってしまったような気がする。


「そうだねー、最近のオススメは、ジュラシックワールド・炎の王国かな??ベタ過ぎ??」

e子が少しニヤリとする

「ベタ!それはベタ過ぎるよ。それは初対面の人に無難にオススメするやつじゃん。好きな映画でショーシャンクの空って答えるのと同じだね」

「えー?そう??まっ、いいや。それで、イヌロボは最近どうなの?ちなみに私は、占いサボテン屋さんをしているよ」

話を戻された。e子は自分の知りたいことをはぐらかさせはしない派だった。っていうか、、

「占いサボテン屋さんって何??」

思わず少し笑ってしまう。
あっ、食べてたピザの欠片が口から出そう。


「良いでしょ?占いサボテン屋さん。要するに、実家の洋食屋さんでウェイトレスとして働いてるんだけどね、私はサボテン販売と占い担当なの」


「うーん、分からん」


「サボテンってのは、ウチの店の端っこの方で、サボテン販売コーナーを作ったのよ。それで、サボテンを買ってくれた人に占いをしてあげてるってわけ。まあだから、割高に設定しても売れるんだよね。付加価値ってやつだね」

「そっ、かあ、、」


e子は話を続ける。

「あのね、サボテンに興味を示す人って、心に悩みや迷いを抱えてる人が多いのよ。安らぎを求めてるはずなのに、トゲトゲに惹かれるなんて笑っちゃうよね。
それでそういう人がいたら、占ってあげましょうか、って声をかけると大抵は食いつくの。それで最後にサボテンをお買い上げいただくのよ」


「なるほど、、っていうか、e子って占いなんてできたんだ」

「そう、知らなかった?なんか、共感覚ってあるじゃん。音に色がついて見えるみたいな!
それが私の場合、人の話す言葉が色のグラデーションになって見えるの。
音程じゃなくて、ニュアンスとか感情に色がついてるのよ」


何それ。

「知らなかった。良いね。じゃあ、僕のことも占えるの?」

「うん、そのために来たからね」
e子はふふふ、と笑った。
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