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第二章
第8話【挿絵あり】
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刃物が私に刺さらなかったと確認するや、ダタライは正面扉を開ける。
逃げ出そうと足を踏み出した彼は、目の前の光景に気力を失ったのか、あるいは私の麻酔が効いたのか、がくんと崩れ落ちた。
「アンティギア王国騎士団がお前達を捕らえる。これから神の下で罪を暴き、裁きを受けろ」
白い馬に乗ったルシオが言い、騎士達に捕まえるよう合図した。
ダタライはもう動かなくなっていて、数人の騎士が彼を担ぎ上げる。
ふと、ルシオの隣を見るとスタンディ伯爵も捕らえられていて、上手くいったのだと悟った。
私が囮になっている間、ギル達はスタンディ伯爵の方を叩いていたのだ。
ルシオに近付き、屋敷内で手に入れた古い羊皮紙を渡す。
「これは?」
「ダタライ密輸団と伯爵のお金の流れが書いてある帳簿です。ちょっとした証拠になると思って回収してきました」
ルシオはふっと笑って、ありがとうと羊皮紙を受け取る。
「良い証拠になると思うよ」
ふいに後ろから強く抱き締められる。
「心配しましたよ、君が命を失う事になるんじゃないかって気が気ではありませんでした」
ギルの手が震えている事に私は気付くと、自分の手を重ねた。
「ごめんなさい。でも、私は死なないから。貴方を看取るまでは」
笑って言うと、ギルは柘榴色の瞳を揺らしながら微笑んだ。
「いつの間にこんなじゃじゃ馬になってしまったんだろう?」
呆れるような、感心するようにギルは言う。
私達のやり取りを傍で見ていたルシオが遠慮がちに声を掛ける。
「君達二人のおかげで助かったよ。俺の首も飛ばずに済む。どんなお礼をすればいいのか……」
「謝礼金は相場の五倍でお願いします、陛下」
お金にがめついと思われようが、大事だから貰えるものは貰っておこう!
「君は逞しいね。そういう所も私の愛すべき妻の良いところだけど」
ギルは言うと、私の頬にキスをした。
ルシオは私達に手を振り、馬を旋回させ、騎士団を引き連れて王都へと戻って行った。
その後、裁判にかけられ、スタンディ伯爵家は取り壊しのうえ、当主とダタライは処刑される事になった。ベロニカは事件には関わっていなかったが、家が取り壊しになったので修道院に送られる事になった。
私達はと言うと――。
「急いで! 列車が行ってしまうわ」
ポウポウと甲高い汽笛の音が響くホームで慌てふためく私。その後ろを走るリヒト。前にはギルは手招きをして、列車に乗っていた。
今日から私とギルの婚約記念旅行が始まる。自分の父親であるルシオの危機をギルが救ったと知ってから、気持ちに変化があったのだろう、リヒトは私達の婚約を歓迎してくれたのだ。
結婚式を挙げる前に三人で旅行したいというリヒトの願いを聞き入れ、今日から皆が行ってみたいところを巡って行く旅が始まる。
無事に列車に乗り込むと、すぐに発車した。発車時刻ギリギリだったらしい。開始早々、スケジュールが乱れるところだった。
私は指定席に座って談笑していた。ふと、ギルにリヒトに向かって話をする。
「リヒトは弟か妹だとどちらが欲しいですか?」
「気が早すぎない?」
まだ結婚式も済ませていないというのに、ギルはもう家族計画について話している。
「私は、バーバラに無理をさせない程度に大家族を作りたいと思っていますよ」
言いながらギルは私にウインクする。何だ、そのウインクは。
リヒトは口元を押さえながら品よく笑っていた。
「ふふっ、そうだ。僕が司婚者をやるから結婚式の予行練習をしてみましょうよ」
リヒトの提案にギルは乗り気だ。鞄の中から白い羽織ものを出すと、私の頭に乗せる。
「ウェディングベールのつもり?」
私はくすくすと笑って言った。ギルもリヒトも楽しそうでそれぞれの役になりきっている。
「新郎ギルバードさん。あなたは新婦バーバラ様を妻とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、死が二人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
リヒトがギルを真っすぐ見て問いかける。
ギルは真面目な顔で頷くと、力強く答えた。
「はい、誓います」
「では、新婦バーバラ様。あなたは新郎ギルバードさんを夫とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、死が二人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
リヒトは私を見る。
「はい、誓います」
「では、誓いのキスを」
リヒトは微笑んで言う。え、列車の中でキスまでするの!? と慌てる私にギルはウェディングベールの代わりにしていた羽織ものを取る。
そして、私に微笑みかけながら口づけをした。
柔らかなギルの唇を感じながら私は心の中で誓う。
死が私達を分かつまで、私はギルもリヒトも愛し続ける。
~あとがき~
最後までお読みいただきありがとうございました!
一旦はここで終わりとなります。続きを書くかは未定ですが、少しでもこのお話を楽しんでくださると嬉しいです。励みになりますので感想やいいねなど、良かったらお願いします^^
逃げ出そうと足を踏み出した彼は、目の前の光景に気力を失ったのか、あるいは私の麻酔が効いたのか、がくんと崩れ落ちた。
「アンティギア王国騎士団がお前達を捕らえる。これから神の下で罪を暴き、裁きを受けろ」
白い馬に乗ったルシオが言い、騎士達に捕まえるよう合図した。
ダタライはもう動かなくなっていて、数人の騎士が彼を担ぎ上げる。
ふと、ルシオの隣を見るとスタンディ伯爵も捕らえられていて、上手くいったのだと悟った。
私が囮になっている間、ギル達はスタンディ伯爵の方を叩いていたのだ。
ルシオに近付き、屋敷内で手に入れた古い羊皮紙を渡す。
「これは?」
「ダタライ密輸団と伯爵のお金の流れが書いてある帳簿です。ちょっとした証拠になると思って回収してきました」
ルシオはふっと笑って、ありがとうと羊皮紙を受け取る。
「良い証拠になると思うよ」
ふいに後ろから強く抱き締められる。
「心配しましたよ、君が命を失う事になるんじゃないかって気が気ではありませんでした」
ギルの手が震えている事に私は気付くと、自分の手を重ねた。
「ごめんなさい。でも、私は死なないから。貴方を看取るまでは」
笑って言うと、ギルは柘榴色の瞳を揺らしながら微笑んだ。
「いつの間にこんなじゃじゃ馬になってしまったんだろう?」
呆れるような、感心するようにギルは言う。
私達のやり取りを傍で見ていたルシオが遠慮がちに声を掛ける。
「君達二人のおかげで助かったよ。俺の首も飛ばずに済む。どんなお礼をすればいいのか……」
「謝礼金は相場の五倍でお願いします、陛下」
お金にがめついと思われようが、大事だから貰えるものは貰っておこう!
「君は逞しいね。そういう所も私の愛すべき妻の良いところだけど」
ギルは言うと、私の頬にキスをした。
ルシオは私達に手を振り、馬を旋回させ、騎士団を引き連れて王都へと戻って行った。
その後、裁判にかけられ、スタンディ伯爵家は取り壊しのうえ、当主とダタライは処刑される事になった。ベロニカは事件には関わっていなかったが、家が取り壊しになったので修道院に送られる事になった。
私達はと言うと――。
「急いで! 列車が行ってしまうわ」
ポウポウと甲高い汽笛の音が響くホームで慌てふためく私。その後ろを走るリヒト。前にはギルは手招きをして、列車に乗っていた。
今日から私とギルの婚約記念旅行が始まる。自分の父親であるルシオの危機をギルが救ったと知ってから、気持ちに変化があったのだろう、リヒトは私達の婚約を歓迎してくれたのだ。
結婚式を挙げる前に三人で旅行したいというリヒトの願いを聞き入れ、今日から皆が行ってみたいところを巡って行く旅が始まる。
無事に列車に乗り込むと、すぐに発車した。発車時刻ギリギリだったらしい。開始早々、スケジュールが乱れるところだった。
私は指定席に座って談笑していた。ふと、ギルにリヒトに向かって話をする。
「リヒトは弟か妹だとどちらが欲しいですか?」
「気が早すぎない?」
まだ結婚式も済ませていないというのに、ギルはもう家族計画について話している。
「私は、バーバラに無理をさせない程度に大家族を作りたいと思っていますよ」
言いながらギルは私にウインクする。何だ、そのウインクは。
リヒトは口元を押さえながら品よく笑っていた。
「ふふっ、そうだ。僕が司婚者をやるから結婚式の予行練習をしてみましょうよ」
リヒトの提案にギルは乗り気だ。鞄の中から白い羽織ものを出すと、私の頭に乗せる。
「ウェディングベールのつもり?」
私はくすくすと笑って言った。ギルもリヒトも楽しそうでそれぞれの役になりきっている。
「新郎ギルバードさん。あなたは新婦バーバラ様を妻とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、死が二人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
リヒトがギルを真っすぐ見て問いかける。
ギルは真面目な顔で頷くと、力強く答えた。
「はい、誓います」
「では、新婦バーバラ様。あなたは新郎ギルバードさんを夫とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、死が二人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
リヒトは私を見る。
「はい、誓います」
「では、誓いのキスを」
リヒトは微笑んで言う。え、列車の中でキスまでするの!? と慌てる私にギルはウェディングベールの代わりにしていた羽織ものを取る。
そして、私に微笑みかけながら口づけをした。
柔らかなギルの唇を感じながら私は心の中で誓う。
死が私達を分かつまで、私はギルもリヒトも愛し続ける。
~あとがき~
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