忍び

エバゴン

文字の大きさ
1 / 1

幕開け

しおりを挟む
 やめとけって、今度ばかりはまずくないか、かわいそう~等様々な声が聞こえてくる。繰り返し、繰り返し。みんなが見ている。僕を。痛いな、そう思っている。まぁ、いつものことだから多少は慣れているが痛いものは痛い。今の現状を伝えると教室の窓をでた先のベランダ的な場所から突き落とされそうなのだ。
 「痛い」いつもなら言わずに我慢していたことを言った。次の瞬間、僕は落ちた。一瞬、何が起きたのか全く分からなかった。でも、落ちている。死ぬ瞬間はゆっくりだなぁ~、そう思いながらさっき言った言葉を取り消したいとも思った。言わなけりゃ、いつも通り殴られ蹴られて事は済んだのに無駄な発言だった。後悔だ。
 覚悟を決めたその時、全身に感じたことのない痺れを感じた。僕は死ななかった。何故だが説明したいが、どうお伝えすればよいのやら。心臓のあたりから全身の先という先まで、伝わってゆく痺れ。痛みではない。ただ、自由を感じれた。それは、何も出来なかった身体が想像を遥かに超える能力を発揮したから。
 地面に手をつき、ひょいっと姿勢を直した。すごい高揚感と上からの驚きの眼差し。やつらの声が聞こえてくる。他愛のことだ。やつらが走ってくる。感じる。第六感だ。
 負ける気がしなかった。降りて来て再び襲ってくる、やつらを一人づつ絞めた。こんなにも弱かったのかと思った。周りからは悲鳴が聞こえてくる。どうでもよかった。俺が悪いのか?いいや、そんなことはない。
 そう思った。でもそうはいかなかった。どうやら、勝った俺が悪いらしい。子供の世界では勝ったやつが罪を背負う。大人の世界では反対だというのに。だが、どうということはなかった。警察沙汰になり、面倒な一週間を過ごしたが気にしなかった。何故って?当然さ!死にかけで得た力。その力を使いたくて、うずうずしているからさだ。いくらでも説教を受けてやるよ。
 「自由だ」つい思ったことを言ってしまった。署を出たばかりで隣にいた親に聞かれてまたも怒られた。しかし、本当のことさ。自由なのだ。これから何をしようか!ネガティブな人生からおさらば。レッツポジティブライフ!少し大袈裟だが、間違っていない。虐められた日々はもうこない。むしろこちらからいける。まぁ、やつらと同じことなど決してしないがな。
 その日の夜、静かに外へ出た。興奮を形にするためだ。走ったとにかく走ってみた。速い、速すぎる。脚に力を入れるだけでバケモノのように速い。すぐに近くの大きな公園にたどり着いた。
 自分の成長が怖いとか、ここまで誰かに見られていないだろうかなんてことも気にしなかった。なによりも興奮が止まらない。
 速さの次は力だ。きっとあるはずだ。そう思いながら、拳を木に当てた。全力で。
 「うわっ」近くの木もまとめてぶっ飛んだ。ヤバイ。そう思ったが、またも興奮が上回った。公園にある全てを壊していった。どうしてなんて聞かれても今の俺には答えられない。だって興奮しているから。
 全身に汗をかいた。これまでは怯えからくる汗だったが、今は違う。全身から溜まりに溜まっていた汗が出てくる。地面に水溜まりができるくらいにだ。
 あっという間に公園を破壊した。速さと力のおかげだ。破壊された公園を見て、少しを気を抜いた。一気に全身にどっと疲れを感じた。とりあえず、帰ろう。1時間せずに暗いうちに家路に着いた。
 「明日から何をしようかな」期待と興奮に満ちた面持ちで天井を見つめていた。その日はすぐに寝た。
 

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

使い捨て聖女の反乱

あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

処理中です...