フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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1章

2 早くも再会 1

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 茂みに隠れ、ガイは魔物の部隊をしばし窺う。彼らは何かを探しているようだった。
(歩兵だけか。ケイオス・ウォリアーが同行してないならなんとかなる)
 数は多いが下級の魔物ばかりだ。今のガイは負ける気など全くしなかった。
 いや、確実に勝てる。
(なんとか、は、なる‥‥けど‥‥)

 ガイ一人でも確実に勝てる。
 ただし‥‥昨日拾ったレア素材で造った珠紋石じゅもんせきを容赦なく使えば、だ。
 結構値の張る物を景気よく消費すればの話だ。

 そう考えるとどうにも戦いたくないのだ。
 高価な物資を消費して戦う理由がガイには無い。

(逃げればよくね?)
 当然の結論に至り、ガイはイムを懐に忍ばせると、茂みの中を移動した。


(まぁ町に報告だな)
 そう考え、ガイは下山を決める。
 しかし森を抜けないうちに、少し離れた所から悲鳴が聞こえた。
(こんな時に!)
 苛立ちはしたが流石に見捨てるわけにはいかない。手強い敵がいない事を願いつつ、ガイは声の方へ走る。


 そこは両岸が砂利の河原だった。
 ローブを纏った少女が一人、ゴブリンやオークの兵に囲まれている。
 それを確認すると、ガイは木陰から飛び出した。皆の視線が集まるが、既にガイは珠紋石じゅもんせきを手にしている。
 そんな事を知るわけもなく、魔物の兵達はガイに向かってきた。

 赤い輝きを帯びた珠紋石じゅもんせきをガイは投げつける。結晶は真っすぐ飛び、敵先頭の直前で――爆発!
【ファイアーボール】の呪文、それもかなり強力な破壊力が敵兵士達を飲み込んだ。


 この世界の魔法には1~7の、七段階の呪文レベルがある。1は駆け出しの魔法使いでも習得できる物で、最高位の7は達人級マスタークラスと呼ばれる者達でようやく使いこなせる魔術の奥義だ。
 その中で【ファイアーボール】は火領域のレベル3に属し、これを使えて魔術師はようやく火力担当アタッカーを名乗れる、中級ながら一つのライセンスのような呪文だ。

 しかしただ「使える」だけでは一人前とは言えない。
 どれほどの威力段階パワーレベルで使えるのか、それも重要な要素だ。
 術者の力量レベルや、効果を補助する何種類かの技能スキルの影響により、同じ魔法でも知識として覚えただけの術者と練達の術者とでは天と地の威力差が生じる。


【ファイアーボール】を籠めた珠紋石じゅもんせきでガイが発動した呪文は――炎と轟音を巻き起こし、敵を吹き飛ばした!
 この威力でこの呪文を使える術者は大きな都市でもそう何人もいるものではない。

 少女を囲んでいた残りの魔物が、予想外の光景に息を飲んで立ち竦んだ。
 そこにガイは無慈悲な第二の投擲。今度は魔領域2レベル呪文の石。それは放物線を描き、魔物どもの頭上へ飛んだ。
 球が宙で砕け、【マジックミサイル】が降り注ぐ!
 それは魔物を次々と撃ち抜きはしたが、少女は避け、かすり傷ひとつ追わせなかった。この威力と精度もまた、そうそう見る事のできない物だ。

 強力な範囲攻撃魔法の連続に、下級の魔物どもはことごとく倒れた。なんとか生きていた奴も二、三匹いたが‥‥重傷を負って呻いてふらついており、まともな戦闘など望むべくもない。
 それらが次々とガイの短剣に切り裂かれ、倒れた。同レベルの戦士に及ばないとはいえ、ガイとて近接戦闘が全くできないわけではないのだ‥‥が。

(それにしても調子がいい。体が思う以上に動く!)
 敏捷性、反射速度、攻撃の精度、籠もる力。その全てが、ガイ自身が把握しているよりも一段階上のパフォーマンスを発揮していた。
 原因にはすぐに思い至る。
 昨日造って自らに使った、異界流ケイオスのレベルを上げる飴玉。それによって増幅された内的なパワーが己の全能力を後押ししているのだ。
 能力の絶対値でいえば、ガイは別に超人になったわけではない。上級の冒険者には、今のガイでも到底及ばぬだろう。だが自分自身ではっきり自覚できる程度には確実に強化されていた。
 その力を以てすれば‥‥重傷を負った下級の魔物兵ごときには、もはや万に一つの負けも無かった。


「ハッ、ざっとこんなもんだぜ」
 最後の敵を倒し、ガイは緊張による汗を拭う。
(一応、ドロップ漁ってみるけど‥‥まぁ赤字だろうなぁ)

 中級の魔法を発動させる珠紋石じゅもんせきともなれば、低レベル向けの依頼の稼ぎを一つで吹っ飛ばしかねない。中級とはいえ、並の人間から見れば必殺の威力を広範囲にばら撒く破壊兵器だ。当然、それに見合った価格になる。
 ガイの場合は拾った素材から自分で造ったので金銭的な元手は僅かだが、それはそれで時間や手間というコストがある。こんな遭遇戦でほいほい使うのを惜しむのは当然なのだ。

 高価なアイテムを二連発した事を苦く思いながら、囲まれていた少女へ声をかけた。
「大丈夫かい? て、ああ!」
「ガイ‥‥」
 その少女は先日別れた元パーティのメンバー、魔法使いのララだった。


 なぜここにいるのか。
 どうして魔王軍に襲われていたのか。
 他のメンバーはどうなったのか。
 色々と疑問のわく状況ではあるが、ガイが真っ先に考えたのは——

(やっぱ逃げれば良かった‥‥!)

 これは仕方があるまい。
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