フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

19 新たな守護者 8

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 村に凱旋するガイ達。
 機体から降りた所で村人達に囲まれた。
 皆が笑顔でガイに感謝を述べる。

 そんな中、ミオンが人々の間から近づいてきた。
「聞きたい事があるの」
 それに頷きつつ、ガイは周囲を見渡す。
一先ひとまず休んでからにしよう」

 歓喜と興奮で皆が忘れているが、激しい戦いと環境の変化で誰も彼もがクタクタなのだ。


――翌朝。ガイの家――


 ミオンは朝食の支度を終え、ガイの部屋へ向かおうとした。
 しかし途中で戸が開き、ガイがイムを肩に乗せて出てくる。
「おはよう」
 爽やかに微笑みながら声をかけてくるガイ。
 それを前にミオンは戸惑ってしまう。
「お……はよう。早いわね。いつもなら私が行くまで、目が覚めててもベッドにいるのに」

 ガイは……頬を掻きつつ照れ笑いを浮かべた。
「はは、バレてたんだ」

 少々恥ずかしそうではある。
 だがミオンには――
(今までなら、もっと焦ってたわ)
 そんな違和感があった。
 ほんの少しの不満も……。


――村の集会場――


 主だった面々が集まってから、ガイは軽く頭を下げた。
「皆、遅くなってすまなかった。でも竜神の力なら借りてきたよ。俺と機体のパワーアップがそれだ」
「苦戦していた兵隊怪獣を明らかに上回る力でしたな! 流石ガイ殿! 流石ガイ殿!」
 興奮して持ち上げまくる村長コエトール。

「よせやい」
 そう言って苦笑するガイを見て、やはりミオンは微かな不満を覚える。
(余裕があるわね)
 以前ならもっと感情任せに嫌がっていた筈だが……。

 だからというわけではないが、ミオンが真っ先にガイヘ意見した。
「ガイ。貴方が死から蘇った時、体に何の変化が起こったか教えて頂戴」

 周囲一同から「「「ええっ!?」」」と驚愕の声。
 彼らの大半はガイが危ういタイミングで戻ってきたとしか思っていなかったのだから当然だ。
「どどどどういう事ですかな?」
 動揺して呂律の回らなくなっている村長。

 彼らにガイは話す。
 故郷の村から帰る途中で受けた襲撃と、己が一度は命を落とした事を。
「死者の蘇生……そんな事ができるのですか!」
 スティーナが仰天する。いや、彼女だけでなくその場にいる者がことごとく。

 だがガイが言うには……
「いや、俺の場合は特別だ。俺は世界樹の番人だったから、特別なつながりができていたんだ。だから今まで、俺がレベルアップする度に木の方も成長が促進されていたのさ……ある意味、世界樹の一部を担っていたとでもいうか。番人というのは、そういうお世話係という事も含めての話だったんだ。そして今回の蘇生はより多くのパワーを共有し、それにより復活したという事だな」
 そして弟子に頼んだ。
「スティーナ、鑑定アイテムで俺を調べてくれ」

 スティーナはおっかなびっくりながらも魔法の片眼鏡でガイを窺う。
 その大きな瞳がさらに見開かれた。
「え……種族【ウルザルブルン】!? 人間、じゃない……」

 それを聞いて周囲がざわめく。
 ただ一人落ち着いているのはガイ自身。
「やはりか。なんとなくわかるんだよ。俺の中には世界樹から別れた維管束がもう一つの循環器系を造っている。二つ目の心臓として、最上位竜アークドラゴンから与えられた木行の秘宝【ミステルテイン】を中心にな」
 それを聞いてスティーナが考え込む。
「つまり……ある種の生体改造人間、ですか。単純に考えて、体内に流れるエネルギーが倍増しているという事ですね」

「木から全く別の実を生み出すのも、【ウルザルブルン】の力なの?」
 ミオンのその質問にガイは頷いた。
「ああ。世界樹は全ての植物の祖で、俺はその分身みたいな者になったからな。植物を通して別の植物を召喚している、とでも考えてもらえればいい。それを素材として珠紋石じゅもんせきを生成するのは、種族能力とクラス技能スキルとの合わせ技だけど」

「植物系の素材なら、場所を問わずいくらでも集めて珠紋石じゅもんせきにできるのか……」
 半ば呆けて聞くレレン。
 それにはガイは苦笑した。
「いや。流石に植物の無いダンジョン奥とかじゃ無理さ」
 しかしミオンは疑問を挟む。
「操縦席でも実の召喚はやっていたわよね?」
「イムの力で変形した機体内は『植物がある場所』判定だからな」
「それアリか!?」
 頷くガイに、タリンは思わず大声をあげていた。

「素材と……珠紋石じゅもんせきの相場が、崩壊待ったなし……」
 呆然と呟くスティーナ。
 それに対してガイは神妙な顔で答える。
「わかってる。外への影響は無いように抑えるよ」

 なんとか気を取り直したレレンが尋ねる。
「燃やされた木刀もまた造りなおしたのだな」
 ガイは腰の聖剣を手にした。
「ああ。今まで以上に使いこなせるようになった。これまでは珠紋石じゅもんせきの効果を聖剣での打撃に乗せていたけど、これからは2つの効果を融合させて直接撃つ事もできる」
「それがあの範囲攻撃か」
 腕組みして鍛冶屋イアンが夕べの戦闘を思い出した。

 敵全機に見舞われた、強烈な稲妻の豪雨を。

 村長がぶるぶると体を震わせる。
 感極まって大声をあげ、もはや拝み倒さんばかりだ。
「さ、さ、さ……流石ガイ殿おお! 世界樹もこの村の近くで復活! この村が今後の世界の中心じゃあ! 世界中の魔術師と錬金術師と薬剤師がカサカ村を聖地として崇め奉るぞおおお!!」


 彼の脳裏には、この田舎村へ大勢の知識人や巡礼者がやってきて発展する未来が映っているのだ。
 自分はその村――いや世界一の都会の中心で豪華な椅子に座りワイングラスをちゃぷちゃぷしている。
 カサカ村産まれカサカ村育ち、年に数回チマラハの街で食事と買い物をするのが楽しみで生きている村長には、大都会の名士になる事以上の夢は無いのだ。

 なお地主はガイだが、彼が村の運営にはまだまだ力量不足だと自分で考えているが故に、村長は引き続き村長職をガイの依頼でやっている。

 しかしそんな夢見る村長にガイから注意が。
「まぁまだしばらく秘密にしておいてくれ」
「え?」
 驚く村長にガイは頼む。
「どうせいつかはバレるだろうけど。急に話が大きく動くと周りも一気に動く。その対処で村が荒らされちまうぜ?」

 非常に残念ではある。
 しかし今の村長はガイの言う事なら命令でもお願いでも、自殺以外なら何でも従う所存だった。
「ぬぬぬう、確かに盗人ぬすっとが津波のごとく押し寄せますな。わかりました、今しばらく秘密にしましょうぞ」
 その横の席で農夫のタゴサックが頷く。
「まぁ元々隠し畑のさらに奥じゃ。他所者に教えるような事ではないわい」

 まさに生まれ変わったかのようなガイとその力に、集会場の騒ぎはなかなか収まりそうにない。
 その中でミオンは一人黙っていた。
 誰とも口を利かず、ガイを見つめる。
 どこか不満そうに。

(やっぱり、何か違う……)
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