フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

21 魔の領域 4

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 裏庭に林立する石塔の影から次々と敵が現れる。
 どれもこれもフードマントをまとった物ばかり。それが10や20ではない……裏庭を埋め尽くさん勢いだ。
 敵の群れを前に、タリンがあざけり笑った。
「へえ、頭数でそうってか。雑魚どもが面白えじゃねえか。オレの剣にブッた斬られたい奴から並んで来いやあ!」

 現れた敵は次々とフードマントを脱いだ。
 どれもこれも長いローブを羽織はおって錫杖やワンドを手にする者ばかり。詳細な職業クラスは異なれど、どれも呪文の使い手揃いである。
 敵の群れを前に、タリンはちょっと感心した。
「へえ……魔術師系をよくこんなに集めたな。魔法攻撃メインの部隊とは意表を突かれたぜ」

 敵が全て現れた時、その数は50を超えていた。
 そして全てがローブを羽織った魔術師だった。ゴブリン、オーク、ダークエルフ、人間の屑や不死怪物アンデッドモンスター……種族は違っても職は魔術師系である。
 敵の群れを前に、タリンは心底不思議そうに首を傾げた。
「へえ? 前衛まで全部魔術師って……戦士系職に集団夜逃げでも決行されたのか?」
「いや、明確な作戦の方向性で選んだ結果だ」
 疑問をはっきりと否定する影針えいしん
 だがタリンは納得しかねて追及する。
「でもこれ、バランス悪くねえか?」
「確かにな。だが貴様らを潰す一戦だけに集中するなら悪くはなかろう」
 影針えいしんは自信をもって断言した。

 では彼の作戦とは?

 高い所に立ったまま、影針えいしんは静かに、落ち着いて、ガイ達をゆっくりと見渡す。
「攻撃呪文に非常によくある特性として……物にもよるが、格上だろうとある程度は当たる呪文は多い。属性抵抗無しでは完全に無傷で済ます事ができない物がな。そして高い抵抗を各属性に満遍なく持つ装備はそうそう存在しない」
 それを聞いて驚くレレン。
「負傷させる確実性の高い攻撃だけを、延々と重ね撃つ。そうして我々を倒そうという魂胆なのか!?」
「その通り。強い必殺技の大好きなお前では考えもしなかった戦法だろうがな。そいつらは高位の呪文など知らないが、最低限の範囲魔法は習得している奴ばかりだ。そして得意とする属性も千差万別」
 影針えいしんはレレンを小馬鹿にするかのような口調でそう告げた。
 個々のレベルは今のガイ達に比べればたいした事はないだろう。しかし彼らに求められているのは総合――最低限をクリアした上での合計なのだ。

「でもこれ前衛スタートの魔術師どもは死ぬんじゃねえか?」
 タリンの疑問ももっとも。
 なにせ全員が魔術師職なので、一番近い所にいる連中も魔術師職だ。魔術師でもレベルや装備によっては接近戦対策もできようが、低レベル連中にそんな事を望むべくもない。
 だからこそ魔術師職の者達は戦士系職を前衛に立たせ、その後ろにいる物なのだ。
 しかし……影針えいしんの返答は冷ややかだった。
「どうせ貴様らに被害無しで勝つ事などできん。戦士だろうが数を集められるレベルの奴らでは食い止める仕事もできん。ならば被害前提で多少のダメージは与えられる奴らを出すのみ。一太刀で倒されようが、その前に僅かでもダメージを与えられれば儲け物という事よ」

 開幕即殺される奴らは死んどけ。
 それが影針えいしんの考えだった……!

 なおよく見れば、後ろから押されて最前列に立たされているのはゾンビメイジやスケルトンソーサラーといった不死怪物アンデッドモンスターだった。
 まぁ感情の無い奴らだから文句を言う気は無いようだ。


 だがそこに批難めいた声がとぶ。
「「マスタールーパー……今は影針えいしんか。そちら同士で戦うのは勝手だが、ポリアンナ様は巻き込まんで貰うぞ。我らは今後もこの居留地で暮らすでな」」
 ダブルヘッドオーガーの村長だった。両の顔は明らかに機嫌が悪い。
 影針えいしんは「ふん」と鼻をならし、興味もなさそうに応えた。
「ならば引き離しておけ」
 それに憤慨するのが他ならぬポリアンナ自身だ。
「勝手な事を!」
 そう言って剣を抜こうとするが、村長が「まぁまぁ」と押しとどめようとする。

 そしてそんな彼女にシャンリーも声をかけた。
「いえ、ここは自分の安全を第一に考えなさい。兄上の真実をご両親に確かめるのでしょう?」
 そう言われ、ポリアンナの顔に無念と歯がゆさが浮かぶ。
 だが結局、彼女は剣を抜かなかった。
「くっ……すいません」
 詫びる彼女を村長がガイ達から引き離す。

 距離が十分になったと見るや――
「魔法火力完全燃焼部隊、やれい!」
 影針えいしんの声が裏庭にとどろいた!
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