つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して-

halsan

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狭すぎる我が家

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 村役場の大事な仕事の一つである「御用聞き」は無事終了。
 自宅前に千里の分身であるワンボックス車を横付けすると、玄関の鍵を開ける。

「あ、ゲンボクちゃん、分身の車を一旦消すから、その前に荷物は全部降ろしてくれるかな」

 千里の指示に従って、俺たちはそれぞれの買物を降ろし始めた。
 アリスは着替えのバリエーション、小町はたくさんのお菓子、エミリアは高圧洗浄機一式。
 高圧洗浄機?
 これは村の備品にするとエミリアには言ったはずだ。
「エミリアお前、なんで洗浄機を役場に置いてこなかったの?」
「土日に早速こいつを試してみたくてさ」
 さいですか。

 それじゃあ大きな荷物も降ろすとしよう。
「小町、冷凍庫も降ろすぞ」
 ところが小町は抗議の声を上げた。
「冷凍庫は車内に置きたいの」
 やっぱり車内で千里の話を聞いていなかったか。

「千里の車には冷凍庫が標準装備になるから、これは小町が自由に使えるんだ」
「車とおうちの両方に置けるの?」
「ああそうだ」
 キラキラした瞳で俺を見返す合法ロリがたまらねえ。
 
「ところでゲンボクちゃん、これもあたしが降ろしてもいいのかい?」
 意地悪そうな微笑みはやめろエミリア。
「それは俺が降ろす」
 幸いなことにエミリア以外は自分の荷物に集中していて俺の手元は気にしていない。
 今のうちに奥に片づけてしまおう。 

 うーん、さすがに2DKの部屋で五人は狭いな。
 ちゃぶ台も五人で囲むと両隣りょうどなりの肩が当たるだろうし、いっぱいいっぱいだ。

 やっぱり引っ越しをすることにしよう。
 しかし、ここはど田舎。
 空家への物理的な荷物の移動は可能でも、電気ガス水道関連の申請が非常に面倒なんだ。
 とりあえず明日明後日でめぼしい物件を見つけておき、「信金さんの日」に引っ越しも済ませるとしよう。

 すると台所から小町が顔を出した。 
「ゲンボクちゃん、今日はお刺身でいいかな。あとね、アラのお味噌汁なの」
 今日仕入れた魚を早速捌くつもりだな。
 刺身に捌いた残りのアラも味噌汁にして最後まで楽しめるようにするのはさすが料理上手。
「いいよいいよ小町」
 料理も献立も小町に任せておくと安心だ。

 続けてエミリアと千里が高圧洗浄機を抱えてやってきた。
「なあゲンボクちゃん、ちょっとだけこれを試してきてもいいかい?」
「ボクも一緒に行きたいのだけれどさ」
 まるで子供だな。
「夕食までには帰ってこいよ」
「わかったよゲンボクちゃん!」
「わかったゲンボクちゃん!」
 と、二人で玄関から飛び出して行ってしまった。

 俺とアリスは二人っきりで取り残された。
 いい機会だからあれを配る段取りを済ませてしまおう。
「アリス、ちょっとちゃぶ台に来い」
 小町の横で片づけものをしていたアリスがそそくさと俺のところにやってくる。
「なんですかゲンボクちゃん?」
「実はこれなんだけれどな」
 アリスの前に並べたのは御茶碗とお椀と箸のセットが四人分。
「お前だったらどれを誰のにする?」
「そうですね、私なら」

 すごいな、俺がイメージしていたのとぴったり同じだ。
「そしたらそれでいこう」
 するとアリスは少し驚いたような表情を見せた。
「私が決めてしまってもいいのですか?」
「俺もその割り当てがいいと思っていたんだよ」
 あれ? 妙にうれしそうだな。
 何か誤解したか?

「私に決めさせていただいてありがとうございます。今後も皆の指導は私にお任せください」
「お、おう」
 そうきたか。
 でもまあアリスならば、皆のリーダーを任せても大丈夫だろう。
 
 現在小町は夕食の準備中。
 アリスは小町の手伝い。
 アリスは料理が苦手だと言っていたが、皿を並べたり盛り付けたりするのは問題ないらしい。
 エミリアと千里は高圧洗浄機を持って外に飛び出していったまま。
 
「ゲンボクちゃん、そろそろご飯なの」
「ああわかった」
 それじゃエミリアと千里を呼びに行くかな。

 玄関を出てみると、エミリアが隣の空き家に高圧洗浄機を向けているのが見えた。
 ただそれを千里は止めようとしているようだ。
 
「何してんだお前ら?」
「ゲンボクちゃん! これはあたしの期待以上だよ! ごらんよこの外壁がどんどん綺麗になっていく有様ありさまをさ!」
 そんなに掃除が楽しいのかエミリアは。

 一方で千里はなぜかおろおろしている。
「エミリア、それ以上連続で使用するとモーターが焼けちゃうから! マニュアルにも連続稼働は30分って書いてあっただろ! ああ、もうやめてあげてー!」
 こいつら、いいコンビだな。
 
「エミリア、その辺にしとけ。千里も夕食だ、ちゃんと片付けておけよ」
「わかったよ、明日も頑張るよゲンボクちゃん!」
「ボクもよくわからないけど頑張るよゲンボクちゃん!」
 よしよし。
 
 エミリアと千里が高圧洗浄機とホースと延長ケーブルを抱えて戻ってきたときには、既にちゃぶ台には夕食の配膳がなされていた。

「配膳ができました。本当に私から席を皆に指示してもいいのですか? ゲンボクちゃん」
「ああ任せた」
 するとアリスは三人に指示を出し、彼女たちを順にちゃぶ台に座らせていく。
 こうやって座ってみるとやっぱり窮屈だな。

「小町はこの柄が好きなの」
「よかったな小町」
「ゲンボクちゃん、これって?」
「とりあえず専用のお茶碗とお椀と箸だ。これから少しずつ増やしていこうなエミリア」
「これ、使っていいの?」
「それは今日からお前のものだ千里」
「皆さん、ゲンボクちゃんに感謝なさいね」
 満面の笑顔でアリスがそう宣言する。
 自身も目の前のお茶碗たちを優しく愛でながら。
 ホント表情が豊かだよなアリスは。
 
 それではいただきます。
 小町はちゃぶ台のサイズを考慮したのか、ご飯とお味噌汁以外のおかずは大皿に盛っている。
 お醤油皿も皆で一つ。
 相変わらず幸せそうにご飯をむアリス。
 満足のいく出汁が取れたのだろうか、お味噌汁をすすりながらほっこりしている小町。
 刺身にワサビを乗せ、醤油にワサビが触れないよう、器用に食べるエミリア。
 周りをきょろきょろしながら、アリスたちのまねをし、料理を口に運んだ後に幸せそうな表情をする千里。

 こうして今日の食事も無事終了した。
 あ、せっかく買ってきた酒を出すのを忘れた。
 まあ、今からでも遅くないか。
 ビールは明日にして、今からウイスキーでも舐めるかな。
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