つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して-

halsan

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ひたすら洗い流すのがコツ

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 さて、既にお昼時なのだが、猪の解体ショーに中あてられて、エミリアとリザはすっかりと食欲を喪失している。
そこに帰ってきたのがビニール袋いっぱいの猪肉を抱えた小町。
 当然のことながら、血の匂いがぷーんと漂い、いよいよエミリアとリザの食欲をそいでいく。

「まさかお昼ご飯はそのお肉じゃないだろうね?」
 エミリアからの恐怖に震える問いに、小町はアホの子を見るような目で鼻を鳴らした。
「これからしばらくは血抜きなの。この状態で食べても美味しくないの」
「血抜き」と言う刺激的な単語に、エミリアとリザは再び硬直する。

「二人とも見た目が肉食系の割には根性ないの」
 などと心の中で鼻を鳴らしながら、小町は一旦肉を冷蔵庫に片付け、エミリアとリザの救難食きゅうなんしょくをこしらえ始めた。
「はい、おにぎりの出汁茶漬けと、大豆とこんにゃくの煮物なの。頂き物のお漬物もあるから、ゆっくり食べればいいの」
 小町は二人の前に鰹の香り高い器を置いてやる。
「夕食はこってりするから、それまでに体調を治しておくの。ところで午後は、二人に村役場のお留守番をお願いするの」
 小町はそう言い残すと、残ったおにぎりとお惣菜を包んで、猪肉を抱えながら出かけてしまった。
 どうやら一旦家に帰って猪肉の血抜きを段取りしてから、お惣菜の煮物を持って、再びじいさんばあさん達と合流するらしい。

「ああ、やさしい味だねえ」
「生き返るようだな」
 ふわりと香る出汁茶漬けに、何とか食欲を取り戻したエミリアとリザ。
 するといつものテレビ番組に速報のテロップが流れた。

「○○市で通り魔が通行人を襲い数人が大怪我。犯人は逃亡中」
 続けて画面が切り替わり、アナウンサーらしき男性の絶叫が響く。
 どうやら現場からの生中継を行っているようだ。

「物騒だねえ」
「通り魔とは迷惑だな」
 通り魔事件に多少は心を痛めるも、お気に入りの番組、しかも今日は「セクシー山ガール」特集だったのをさえぎられたエミリアとリザのご機嫌は斜めになっていく。
 ところが一瞬写った画面により
二人の興味は再びテレビに戻った。
「もしかしてあれは?」
「ゲンボクちゃん?」
 テレビ画面の隅に、野次馬にまぎれるようなゲンボク達の姿が映っていたのだ。
「どうやら無事なようだ、しかし何だあれは」
「リザには何が見えたんだい?」
「実はな」

 そのしばらくの後に「通り魔が何者かに取り押さえられた」との報道が流れたが、エミリアとリザはその前に事態を把握していたので、すでに通り魔についてはどうでもよくなっている。
 二人はいつものように受付に戻ると、何事もなかったように午後のお仕事を続けた。
 ゲンボク達の土産話を楽しみに待ちながら。

 一方の小町は、じいさんばあさん達と再び猪に相対していた。
 じいさんたちが勢いよく流す井戸水で内臓をじゃぶじゃぶと洗って行く。
 大腸は内臓をばらした直後にじいさまたちが一次処理をしてくれたので、予想された悪臭はそれほどない。
 ばあさまたちと小町は洗う。
 ひたすら洗う。
 内臓を洗う。

「こんなもんかね」
 村長の一言で洗い作業はまず終了。
「それじゃあさっさとお昼を済ませようかい」
「お豆とこんにゃくをを煮てきたの」
「小町はえらいねえ」
 すっかり小町に転がされたばあさん共は、この後もモツの下処理や料理方法などを小町に仕込んでいくのであった。
 こうして今日も何事もなく一日が終わる。

 小町は何やら白っぽいものと、何かを漬けこんだようなものを、たくさんビニール袋に入れて村役場に戻ってきた。
「何だいそれは?」
「今日の夕食なの」
 エミリアからの怪訝そうな問いかけに小町は楽しそうに答えると、村役場の閉庁と同時に、我先とばかりに自宅へと駆けていった。

 一足先に自宅に到着した小町が夕食の支度をしてる間に、エミリアとリザはパソコンを開いて、いつものように「密林探索」を開始する。
 検索の目的は、エミリアがリザとお揃いの得物てっぽうを選ぶこと。
 実はエミリア、リザが「M16A4」を抱えているフォルムが格好良くてうらやましくて、ちょっとジェラシーモードとなっている。
 しかしおねだりをしようとしたら、ゲンボクに途中で遮られてしまった。
 でもエミリアは覚えている。
 あのとき確かにゲンボクは「なんとなく想像がつくから後にしろ」と言ってくれたことを。
 だから事前に得物じぶんのを選んでおくことにしたのだ。
 実はエミリアの行動はリザにとっても渡りに船なのである。
 彼女はゲンボクから「人や動物は撃ってはいけません」と言われているため、小町からもらった豆水煮の空き缶や、自作の的をタタタンと撃っているのだが、やはり物足りない。

 リザは「動く的」を撃ちたいのだ。
 堪らなく撃ちたいのだ。
 同時に一方では「撃たれたらどうしよう」という恐怖が子宮に響いてしまうのだ。
くっ殺せくっころ」が、リザにとっては最高のシチュエーションなのだ。
 なのでリザは周到に計画を練った。

 まずはエミリアを仲間に引き込む。
 次に「山ガールの衣装だ」とゲンボクをたばかって、「サバゲー装備一式」を蓄える。
 これでめでたくリザはエミリアと「サバイバルゲーム」の名の元、撃ちあい撃たれあいを満喫できるのだ。
 ここまでが第一段階。
 いわゆる「前戯フォアプレイ
 こうしてエミリアと二人であんあん言っていれば、そのうちゲンボクも興味を持って「俺もやる」と言ってくれるだろう。
 それからが本番なのだ。

 リザの最後の野望。
 それは「ギリースーツ」に身を包み、山林にひそかに潜んでいるはずのリザをゲンボクが発見し、彼が彼女を山林の中、問答無用で凌辱するというシチュエーション。
 全身葉っぱだらけの姿で、股間だけを露わにされ、絶望的な状況の中、嗜虐に表情をいやらしく歪めるゲンボクに唾を吐きかけながら「くっ、殺せ」と言い放つ。
 しかし味方は誰も現れないまま、ゲンボクによって無残にも強引にあんあんされちゃうリザ。
 ああん。

「リザ、何を喘いでいるんだい?」
 エミリアの声にハッと我に返るリザ。
 ちょっと濡れちゃったかな。
「いや、すまんエミリア。ところでこれなんかどうだ?」
 リザが示したのは日本製の得物さいしんえい
「いいねえ、無骨だねえ」
 エミリアも目つきがとろんとなる。

 エミリアは想う。
 これを構えてゲンボクちゃんと戦場を駆け巡ったらどうだろう。
 全ての敵をなぎ倒し、最後に残った二人の身体は、過剰に分泌されたアドレナリンに支配される。
 最後に残った二人にとって、互いが最後の獲物。

「ゲンボクちゃん」
「エミリア」
 エミリアの知識では、残念ながらこれ以上は進展しない。
「戦場プレイ」というのはどのようなものであろうか。

「なあリザ」
「なんだエミリア」
「戦場では、やはり燃えるものなのか?」
「たまらないぞ戦場で致すのは!」
 こうしてお姉さん二人によるあからさまなセクシー談義が始まった。

 そんな二人の様子を、小町はキッチンでため息をつきながら眺めている。
「おつむの弱さとおっぱいの大きさは正比例するの」
 と、心の中で呟くと、小町はゲンボク達のための食事の下ごしらえに戻るのであった。

 時計の針は夜七時。
「ただいま」
「ただいま帰りました」
「ただいまー!」
 ゲンボクとアリス、千里の声に小町は玄関までお出迎え。
 エミリアとリザは、さっきまで検索していた戦場なんちゃらの恥ずかしい画面を慌てて閉じると、身支度を整え、こちらも追いかけるようにお出迎え。

「千里はどうだったの?」
「今日は講習だけだったからね。ボクは大丈夫だよ! でもね、今日はちょっと面白かったんだ」
「面白くねえ」
「私も面白かったですよ」
 小町の問いに千里は満面の笑顔、ゲンボクはしかめっ面、アリスは微笑みながら返事をする。

「大変だったねゲンボクちゃん」
「アリスと千里もすごかったな」
 エミリアとリザの謎かけのような言葉に、一瞬三人は戸惑うも、すぐにリザの特殊能力を思い出した。
 そう、彼女は光学衛星と通信できるのだ。

「なんだ、『衛星眼サテライトアイ』を使ったのか」
「テレビで中継されていたからな。場所さえ分かればなんとでもなるさ」
「そうか、まあ食事をしながら何が起きたか話してやるよ。ところで小町、今晩の食事はなんだい?」
 小町の方を振り返ったゲンボクに彼女は笑顔で答えた。

「猪のもつ焼きなの!」
 キョトンとするアリスたちを差し置いて、ゲンボクだけが喜び満面の顔。
「久しぶりに猪が獲れたんだな! 小町も捌くのを見てきたか?」
「お手伝いもしたの! モツの下ごしらえもお肉の血抜きも教わったの!」
 ほう、ゲンボクは感心する。
 小町もしっかりと村になじんでいるなあ。
 それにばあさんたち仕込みなら、モツと肉の処理も上手にできているだろうと確信できる。

「それじゃあさっと風呂に入ってから、小町が焼いてくれるモツを皆でたらふく食べよう」

 今晩はもう少し夜長が続きそうである。
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