上 下
1 / 4

名門アスター学園

しおりを挟む
逆境を笑顔で乗りきれる奴は
すべての花の中でもっとも美しいと僕は思う



名門アスター学園。
ここは将来の政治を担う人材を育成する学園。超一流の教育を受けられるが故に名門たり得る。生徒は王子様や貴族などエリートが揃う。

その厨房。
シェフ達が料理を進めている姿を、センベツは眺める。

「また皿洗い。」

センベツはつまらなそうに呟く。
同じ台に居た先輩が、ウインクしながら揶揄うように言った。

「弱音か新人、ヤワだな⭐︎これ終わったら、ここの学園のお嬢様、ナンパしようか。」

皿洗いしながら、ウキウキと誘ってきた。
その様子が見えたのだろう。別の台で料理をしていたシェフから注意された。

「しゃべってもいいが、手も動かせよ!」

「「ウィ シェフ」」

 ♦︎♢♦︎♢♦︎


一日の片付け終了後、センベツはシェフに直談判に行った。

「今、なんつった?」

シェフはセンベツに背中を向けたままだった。

「僕は天才なんで、そろそろ料理を担当させて下さい。」

センベツはもう一度言った。
そしてシェフは別の問いを口にした。

「お前、ここ来て何年目だ。」

「 ? 3ヶ月ですが。」

センベツは質問の意図が分からず、不思議そうに返した。

「まだ明日も皿洗いだ!」

シェフは声を荒げて言い返した。
センベツはムッとしイラつきを顕にしたが、迎えに来た先輩が話し合いを遮った。

「はい~新人くんは、オレと帰ろうね~。」

「まだ話が…」

「帰りまーす。」

消化不良ではあったがセンベツは、先輩に肩を組まれ強制的に連行された。

 ♦︎♢♦︎♢♦︎

センベツと先輩はコートを着て、並んで学園の外を歩いて居た。もう外は真っ暗で、お店の明かりがよく目立つ。

「もう冬だなー。」

先輩が手を口元に寄せ、温かい息をかける。息は言葉と共に白い蒸気になって上へ散る。

「冬の水仕事はキツイな。」

センベツも冷たくなった指先を温める様に息をかけ、答える。

「確かにな。」

センベツからの同意を得られた先輩は、調子に乗って誘った。

「ナンパする?」

「しない。」

「ねえ、あなたたち。」

緊迫した様子の女の子の声が聞こえた。
センベツは声の聞こえた方向に顔を向けると、声の主が側に立ちキラキラした目でセンベツを捉えた。

「ここの教職の方たちなのかしら。お願いがあるのだけど。」

しおりを挟む

処理中です...