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記憶
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中学2年の春。入学式も終わり自分の仕事が終わった僕は人の行き交う校門の前で立ち尽くしていた。
「初めまして…だよね。こっちでは。」
そんな一言が僕とあの少女の出会い。
正確に言えばこれが初めてではなかったのかもしれない。
懐かしい。
その少女を見た初めての感想は至極単純で、でもとても難解な一言に尽きた。
一度見たら忘れることのできない容姿。声。雰囲気。
目は黄緑と空色のオッドアイで…髪はまるで絹糸のような緑がかった白髪。陶器のように滑らかで白い肌。ほんのりと紅い頬と唇。
透明感のある声とまるで女神のような暖かさを持った雰囲気。
雑多な人混みのなかでひときわ目を引くその少女は、人と人の間を縫って僕の方へ近づいてくる。
そして。僕に向けて何かを吐き出した。とても単純に言うと「言葉」というものなのだとは思うけれど、でもそれだけでは形容しがたい何かを、少女はとても楽しそうに吐き出した。
「私は私以外の何物でもないんだよ。だけど、私っていう確定はなくて私が私である必要もない。
だからきっと君が持っているような自分の証明なんてものはないんだよね。いやはやなんとも不思議といったら不思議よね。
まあ私の存在なんてもの確定していたとしても、すぐに消えて無くなってしまうだろうけど。
君は今私になんでこんなことを言われてるかわからないでしょう?
私は自分の存在を示したいんだよ。
君と話すことで。
私の事を“知らない”、君と話す事で。
私が私である事を示したいがために。私が何かを突き止めるために。
でもいつまで経ってもそれが出来ないの。
だって君は私の存在…つかめないでしょ?
私を"知っている"君も最期までつかめなかった。
だから私は私もつかめない私をつかみたくて君にこうして話しかけているんだ。
だからまだもう少し自分を持っていて。
離さないでね。絶対。」
僕は今、起きたのかわからなかった。
先程まで目を奪われていた白髪の少女…それはいつの間にか闇へと変わっていた。黒ではない、完全なる闇であった。遠くて近い奇怪な空間。そこには美しい少女なんていなかった。それどころが物質がないのだ。物体はおろか空気さえ。なにも、なにもないただの闇。やみ。ヤミ…病み。なんらかの瘴気のような。名状しがたいなにか。いや、なにもないのだ。なにか、なんてものないのだ。
「掴めない。掴みたくない。何も見えない。何も見たくない。」
僕の純粋な感想。
怪奇的な現象によって起こった僕の心理。掴みたくて、掴みたくなくて。好奇心と恐怖心とが混在した脳内で必死に考える。僕の存在を。目の前から自分がいる証明がどんどんと消えていくようで。僕という物質を錬成する何かがすべて崩壊していくようで。
考える事すら考えられなくなっている。
「掴まなきゃ。離したら駄目だ。きっと僕が無くなってしまう。」
拙い思考のなかで思う。僕を離してはだめだと。握りしめる。実体の掴めない僕を。
「初めまして…だよね。こっちでは。」
そんな一言が僕とあの少女の出会い。
正確に言えばこれが初めてではなかったのかもしれない。
懐かしい。
その少女を見た初めての感想は至極単純で、でもとても難解な一言に尽きた。
一度見たら忘れることのできない容姿。声。雰囲気。
目は黄緑と空色のオッドアイで…髪はまるで絹糸のような緑がかった白髪。陶器のように滑らかで白い肌。ほんのりと紅い頬と唇。
透明感のある声とまるで女神のような暖かさを持った雰囲気。
雑多な人混みのなかでひときわ目を引くその少女は、人と人の間を縫って僕の方へ近づいてくる。
そして。僕に向けて何かを吐き出した。とても単純に言うと「言葉」というものなのだとは思うけれど、でもそれだけでは形容しがたい何かを、少女はとても楽しそうに吐き出した。
「私は私以外の何物でもないんだよ。だけど、私っていう確定はなくて私が私である必要もない。
だからきっと君が持っているような自分の証明なんてものはないんだよね。いやはやなんとも不思議といったら不思議よね。
まあ私の存在なんてもの確定していたとしても、すぐに消えて無くなってしまうだろうけど。
君は今私になんでこんなことを言われてるかわからないでしょう?
私は自分の存在を示したいんだよ。
君と話すことで。
私の事を“知らない”、君と話す事で。
私が私である事を示したいがために。私が何かを突き止めるために。
でもいつまで経ってもそれが出来ないの。
だって君は私の存在…つかめないでしょ?
私を"知っている"君も最期までつかめなかった。
だから私は私もつかめない私をつかみたくて君にこうして話しかけているんだ。
だからまだもう少し自分を持っていて。
離さないでね。絶対。」
僕は今、起きたのかわからなかった。
先程まで目を奪われていた白髪の少女…それはいつの間にか闇へと変わっていた。黒ではない、完全なる闇であった。遠くて近い奇怪な空間。そこには美しい少女なんていなかった。それどころが物質がないのだ。物体はおろか空気さえ。なにも、なにもないただの闇。やみ。ヤミ…病み。なんらかの瘴気のような。名状しがたいなにか。いや、なにもないのだ。なにか、なんてものないのだ。
「掴めない。掴みたくない。何も見えない。何も見たくない。」
僕の純粋な感想。
怪奇的な現象によって起こった僕の心理。掴みたくて、掴みたくなくて。好奇心と恐怖心とが混在した脳内で必死に考える。僕の存在を。目の前から自分がいる証明がどんどんと消えていくようで。僕という物質を錬成する何かがすべて崩壊していくようで。
考える事すら考えられなくなっている。
「掴まなきゃ。離したら駄目だ。きっと僕が無くなってしまう。」
拙い思考のなかで思う。僕を離してはだめだと。握りしめる。実体の掴めない僕を。
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