愛が歪んでいく

壱婁

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幼少期

祖父

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私には祖父は1人だけだ。
母方の祖父は放逐されており、父方の祖父しか知らない。

物心ついた時には既に癌に冒されており、末期の状態で朗らかに落ちていく命の砂時計を眺めている日々だった祖父に私はたくさん愛されて可愛がってもらった。

父方の祖父母の家に遊びに行くと

「りっちゃん、りっちゃん」

と祖父がいつも呼んでくれ、よく来たねと頭を撫でられる瞬間が大好きな時間だ。

祖父は凄く頭のいい人で優しい人でもあった。

当時連れ回してた犬のぬいぐるみごと私を愛してくれていた。祖父との時間が今でも愛されていた。大事に育ててもらっていた。と思える日々で私の肯定感の原点でもある。

だが、祖父と居れた時間は長くはなかった。

病院で点滴に繋がれ鼻からチューブを通されて横たわり動けなくなってしまっていた。


その数ヶ月後に祖父は亡くなってしまったのだ。
初めて人が亡くなるという事を知った当時はよく分からなかった。ただおじいちゃんに会えなくなる事はわかって大泣きをした。あの優しい声で呼ばれることは二度とない事だけしか分からなかったが、それがとても悲しい事だった。
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