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 ごつごつとした掌が、柄を掴む。
 強く見えたその手はしかし、この堅固な岩の間から我を引き抜くことができなかった。
 これで、良いのだろう。絶えた気配に息を吐く。
 その昔、戦乱を鎮めた偉大なる王が祈りと共に地面に刺した剣。その剣を抜いた者には王と同じ力が宿るという噂を聞きつけ、この場所に来て剣を、我を抜こうとする戦士は多い。そんな力、我には無い。そっと、首を横に振る。あの戦いを制することができたのは、あいつの力。
 このまま、ここで朽ち果てるのが、我の、そしてあいつの望み。どこまでも穏やかな気配をしっかりと確かめる。それで良いのだ。永遠を望む祈りを風の中に投げると、意識は再び眠りに落ちた。
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