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幸せな生活

噂好きのおばさん

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 私たちが村に買い物に行ってから数日がたった。あの日から、私は村には行くようになっていた。だんだんと村人たちとも交流が生まれていた。

 村に行くのはグスタフが一緒の時もあれば、一人で出かけるときもあった。グスタフの体がいまだに良くならないからだ。少し運動するのもつらそうだった。このままグスタフの体は良くなっていくのだろうか。……むしろ少しずつ体の調子が悪くなっている気がする。

 毎日グスタフには聖女の祈りを施して治療しているというのに……。

 ――大丈夫だ。

 私は不安を振り払うと村に行く。グスタフは今日は留守番だった。

「あらクリスティーナちゃん。今日もいらっしゃい」

 村に住む女の人が私に話しかけてきた。たしかマルグリットおばさんだったか。マルグリットおばさんは農作業をするせいか頬や手は汚れていた。毎日畑仕事で大変だろうにそんなことも感じさせない、元気なおばさんだ。

「こんにちは。マルグリットさん」

「あら、今日はあのイケメンのお兄ちゃんはいないんだね。残念。村にはあんなイケメンいないからとてもうれしいのに」

 ……グスタフに色目を使うのか。

「やだねえ。クリスティーナちゃんから取ろうなんてしないよ。こんなおばさん相手にもしてくれないよ。むしろ私はあんたたちを応援しているんだからね。」

「応援?」

「そうさ。多分クリスティーナちゃんは貴族の娘かなにかなんだろ。だってこんなきれいなお嬢さん何だもの」

「そんな貴族のお嬢様が、この村にやってきたのは何か理由があるんだろ。……例えば、あのお兄ちゃんと身分違いの恋をしちまったとか」

 だんだんとマルグリットおばさんの口調に熱がこもってくる。

「若い二人は恋に落ちる。しかしそれは許されない恋。親は当然反対してくるが、若い二人の間に芽生えちまった熱い恋を引き裂くことはできない。ああなんてかわいそうなんだい。そして熱く燃え上がった二人は、皆の反対を逃れるために、駆け落ちをする」

 マルグリットおばさんはどうだい名推理だろ、とばかりに私を見つめてくる。

 当たらずも遠からずといったところ。
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