まっくらとうげんきょう

たあこ

文字の大きさ
13 / 13

くらやみ、ふくしゅう、とうげんきょう

しおりを挟む
.


 それから数日、僕は、この間に二人くらいの案内をして少しずつ慣れてきたらしい律架とのんびりしていた。
律架は落ち着いてくると、僕がいなくなってからの話をしてくれた。「弱くなっちゃったんだよね、多分。琥珀くんと出会って、琥珀くんに守ってもらって、そうしてたらさ、琥珀くんがいないのに耐えられなくなっちゃって……」、律架の中で、僕の存在がそれほどになっていたということが、嬉しかった。

 案内人には家というか、拠点とする場所がある。そこで今は二人で暮らしている。この世界では時の流れが止まるので、腹も減らなければ歳だって取らない。しかし、味気ない日々はつまらないし、一応拠点では「この世」と似たような生活ができるので、僕らは生きていたころのように過ごしていた。律架が料理を作っている後ろで、僕はテーブルを拭く。
そこに置いてあった、本部との連絡端末が光った。見るとそれは本部からの、次の案内の連絡だった。
 こういうとき、端末にはその人の名前を始めとした個人情報、顔写真、死因、生前どんな行いをしたか、その行いによって決められた行き先が表示される。

 僕はその名前を見て、心底驚いた。けれど嬉しくて、笑いが込み上げる。このときの僕の笑い声と言ったら、それはもう性格が悪そうだった。

――死因、家族旅行の帰りに飛行機が墜落、
急降下中に意識を失い、落下と同時に即死――

 それにはずいぶんがっかりした。即死だって? そんなのはだめだ、温い。律架の生きた苦しみも、死んだ苦しみも、何も味わわずに死んだなんて許さない。そんな温い死に方じゃあまだ、許さない。
 あの世への道に送りこんで、全部全部手遅れになってから、大声であいつに言ってやろう。生前のことを。それで思い出したら、あいつは必死に道を逆走する。死にたくない、死にたくないって。やがて力尽きて、運ばれた先は、そう。

「やっぱりここは僕らの桃源郷だ」
 地獄行き、の文字をつうっと指でなぞり、僕はほくそ笑んだ。

「律架! 次の仕事だよ!」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人

通木遼平
恋愛
 アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。  が、二人の心の内はそうでもなく……。 ※他サイトでも掲載しています

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

処理中です...