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くらやみ、ふくしゅう、とうげんきょう
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それから数日、僕は、この間に二人くらいの案内をして少しずつ慣れてきたらしい律架とのんびりしていた。
律架は落ち着いてくると、僕がいなくなってからの話をしてくれた。「弱くなっちゃったんだよね、多分。琥珀くんと出会って、琥珀くんに守ってもらって、そうしてたらさ、琥珀くんがいないのに耐えられなくなっちゃって……」、律架の中で、僕の存在がそれほどになっていたということが、嬉しかった。
案内人には家というか、拠点とする場所がある。そこで今は二人で暮らしている。この世界では時の流れが止まるので、腹も減らなければ歳だって取らない。しかし、味気ない日々はつまらないし、一応拠点では「この世」と似たような生活ができるので、僕らは生きていたころのように過ごしていた。律架が料理を作っている後ろで、僕はテーブルを拭く。
そこに置いてあった、本部との連絡端末が光った。見るとそれは本部からの、次の案内の連絡だった。
こういうとき、端末にはその人の名前を始めとした個人情報、顔写真、死因、生前どんな行いをしたか、その行いによって決められた行き先が表示される。
僕はその名前を見て、心底驚いた。けれど嬉しくて、笑いが込み上げる。このときの僕の笑い声と言ったら、それはもう性格が悪そうだった。
――死因、家族旅行の帰りに飛行機が墜落、
急降下中に意識を失い、落下と同時に即死――
それにはずいぶんがっかりした。即死だって? そんなのはだめだ、温い。律架の生きた苦しみも、死んだ苦しみも、何も味わわずに死んだなんて許さない。そんな温い死に方じゃあまだ、許さない。
あの世への道に送りこんで、全部全部手遅れになってから、大声であいつに言ってやろう。生前のことを。それで思い出したら、あいつは必死に道を逆走する。死にたくない、死にたくないって。やがて力尽きて、運ばれた先は、そう。
「やっぱりここは僕らの桃源郷だ」
地獄行き、の文字をつうっと指でなぞり、僕はほくそ笑んだ。
「律架! 次の仕事だよ!」
それから数日、僕は、この間に二人くらいの案内をして少しずつ慣れてきたらしい律架とのんびりしていた。
律架は落ち着いてくると、僕がいなくなってからの話をしてくれた。「弱くなっちゃったんだよね、多分。琥珀くんと出会って、琥珀くんに守ってもらって、そうしてたらさ、琥珀くんがいないのに耐えられなくなっちゃって……」、律架の中で、僕の存在がそれほどになっていたということが、嬉しかった。
案内人には家というか、拠点とする場所がある。そこで今は二人で暮らしている。この世界では時の流れが止まるので、腹も減らなければ歳だって取らない。しかし、味気ない日々はつまらないし、一応拠点では「この世」と似たような生活ができるので、僕らは生きていたころのように過ごしていた。律架が料理を作っている後ろで、僕はテーブルを拭く。
そこに置いてあった、本部との連絡端末が光った。見るとそれは本部からの、次の案内の連絡だった。
こういうとき、端末にはその人の名前を始めとした個人情報、顔写真、死因、生前どんな行いをしたか、その行いによって決められた行き先が表示される。
僕はその名前を見て、心底驚いた。けれど嬉しくて、笑いが込み上げる。このときの僕の笑い声と言ったら、それはもう性格が悪そうだった。
――死因、家族旅行の帰りに飛行機が墜落、
急降下中に意識を失い、落下と同時に即死――
それにはずいぶんがっかりした。即死だって? そんなのはだめだ、温い。律架の生きた苦しみも、死んだ苦しみも、何も味わわずに死んだなんて許さない。そんな温い死に方じゃあまだ、許さない。
あの世への道に送りこんで、全部全部手遅れになってから、大声であいつに言ってやろう。生前のことを。それで思い出したら、あいつは必死に道を逆走する。死にたくない、死にたくないって。やがて力尽きて、運ばれた先は、そう。
「やっぱりここは僕らの桃源郷だ」
地獄行き、の文字をつうっと指でなぞり、僕はほくそ笑んだ。
「律架! 次の仕事だよ!」
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