29 / 42
第5章 最後のレッスン
5.戦闘服を買いに行こう
しおりを挟む
そのあと、まずは服からって街に連れ出された。
小泉さんとはここでお別れ、滝島さんとはあとで合流らしい。
「小泉さん、お休みの日にわざわざありがとうございました」
「いえいえ。
じゃあ伊深さん、頑張ってね!
応援してるから!」
私の手をぎゅうぎゅう握り、小泉さんは帰っていった。
嬉しいな、みんなこんなに応援してくれている。
私はその期待に応えられるようにしなきゃ。
路さんが私を連れていったのは……私が買うよりもかなり上のブランドショップだった。
「路さん、ここって……」
お値段が非常に気になる。
「無理に買えとは言わない。
でも、やっぱり値段だけシルエットも綺麗だし、長持ちもする。
着るだけ着てみて」
「はい」
渡された一式を手に試着室へ入った。
路さんが言うことも一理ある。
長い目でみれば安いスーツよりはコスパがいいかもしれない。
がしかし、やっぱりこのお値段は痛いです……。
「どう、ですか……」
チャコールグレーのスーツは、さっきまで私が着ていたスーツよりもずっと綺麗に体型が出た。
心なしか、スカートから出る足が細く長く見える気さえする。
「やっぱり茉理乃ちゃんは足が綺麗だから、出して正解」
「あ、ありがとうございます……」
さらっと褒められて顔がほのかに熱くなる。
これってダイエット効果なのかな。
それにしても、服装だけでもうすでにワンランク上の女性に見える。
皮の大切さを痛感した。
「じゃあ、次のお店」
服は買わずに店を出た。
もう戻ってこないだろうと思ったのに、路さんは取り置きを頼んでいる。
「路さん、取り置きって……」
「んー、一応、ね」
路さんが私に向かって意味深にウィンクする。
確かにあの服はよかったが、そんなことしてもらっても買う勇気はないんだけどな……。
次に来たお店は、私がよく来るラインくらいのお店だった。
「はい、じゃあこれ着て」
「はい」
また一セット受け取り、試着室へ入る。
「あれ……?」
着てみて、違和感を覚えた。
色も形も似たようなスーツ。
そんなに差異はないはずなのに……?
「どう?」
「はい……」
カーテンを開けて路さんの前に出る。
少し離れたところから見るとさらに、違和感がはっきりした。
さっき着たスーツは身体に比較的ぴったりフィットし、身体のラインを美しく魅せていた。
でも今度のは今日着ているリクルートスーツよりはましだが、なんだか少しだぼっとして野暮ったく見える。
サイズはあっているはずなのに。
「気づいた?」
「はい」
路さんの言っていた意味がよくわかる。
値段の分だけシルエットに差が出る。
それに素材も先ほどのに比べ、テロテロと薄く、安っぽく感じた。
「どっちを買うかは茉理乃ちゃんに任せる。
でも、もうリクルートスーツは卒業した方がいいし、戦闘服としていいスーツを一着は持っておくべきだと思う」
「そう、ですね……」
絶対的に先に着たスーツの方がよかった。
けれどお値段が、痛い。
貯金は多少あるし、カードでボーナス一括って手もあるけど……。
悩みつつも着替えて試着室を出る。
「すぐには決められないだろうから、先にお化粧品買いに行っちゃいましょ」
「そうですね」
とりあえず店を出た。
そのままデパートの化粧品売り場に連れていかれたらどうしようとか思っていたけれど、路さんが私を連れてきたのは近くのドラッグストアだった。
「プチプラでもけっこうなんとかなるのよー」
テキパキと私にあう色味のアイシャドーやなんかを選んでくれた。
金額もお財布に優しい。
「ちょっと疲れちゃったし、お茶にしましょ」
目に入ったコーヒーショップに入り、買ったカフェラテを手にふたり並んでカウンターに座った。
「まだ悩んでる?」
「……はい」
買いたいのは高い方のスーツだが、値段的に私に釣り合うのは安い方。
わかっているのだが、一度あのスーツの魅力に取り付かれたら、そうそう簡単には離れられない。
「ふーん。
あ、そうそう」
おもむろに路さんはバッグの中からはがきを取りだし、私の前へと滑らせた。
「さっきのお店の、会員様限定のセールはがき。
これで買えば三割引になるわ」
「路さん……!」
思わず、彼女の両手を掴んでいた。
「さ、コーヒー飲んじゃったら、さっきのお店に戻りましょ?」
「はい!」
残りのカフェラテを一気に飲み干す。
路さん、神!
もう、路さんの家の方に足を向けて寝られないよー!
最初の店に戻り、取り置きしてもらっていたスーツを買う。
きっと、路さんはこうなること、わかっていたんだろう。
小泉さんとはここでお別れ、滝島さんとはあとで合流らしい。
「小泉さん、お休みの日にわざわざありがとうございました」
「いえいえ。
じゃあ伊深さん、頑張ってね!
応援してるから!」
私の手をぎゅうぎゅう握り、小泉さんは帰っていった。
嬉しいな、みんなこんなに応援してくれている。
私はその期待に応えられるようにしなきゃ。
路さんが私を連れていったのは……私が買うよりもかなり上のブランドショップだった。
「路さん、ここって……」
お値段が非常に気になる。
「無理に買えとは言わない。
でも、やっぱり値段だけシルエットも綺麗だし、長持ちもする。
着るだけ着てみて」
「はい」
渡された一式を手に試着室へ入った。
路さんが言うことも一理ある。
長い目でみれば安いスーツよりはコスパがいいかもしれない。
がしかし、やっぱりこのお値段は痛いです……。
「どう、ですか……」
チャコールグレーのスーツは、さっきまで私が着ていたスーツよりもずっと綺麗に体型が出た。
心なしか、スカートから出る足が細く長く見える気さえする。
「やっぱり茉理乃ちゃんは足が綺麗だから、出して正解」
「あ、ありがとうございます……」
さらっと褒められて顔がほのかに熱くなる。
これってダイエット効果なのかな。
それにしても、服装だけでもうすでにワンランク上の女性に見える。
皮の大切さを痛感した。
「じゃあ、次のお店」
服は買わずに店を出た。
もう戻ってこないだろうと思ったのに、路さんは取り置きを頼んでいる。
「路さん、取り置きって……」
「んー、一応、ね」
路さんが私に向かって意味深にウィンクする。
確かにあの服はよかったが、そんなことしてもらっても買う勇気はないんだけどな……。
次に来たお店は、私がよく来るラインくらいのお店だった。
「はい、じゃあこれ着て」
「はい」
また一セット受け取り、試着室へ入る。
「あれ……?」
着てみて、違和感を覚えた。
色も形も似たようなスーツ。
そんなに差異はないはずなのに……?
「どう?」
「はい……」
カーテンを開けて路さんの前に出る。
少し離れたところから見るとさらに、違和感がはっきりした。
さっき着たスーツは身体に比較的ぴったりフィットし、身体のラインを美しく魅せていた。
でも今度のは今日着ているリクルートスーツよりはましだが、なんだか少しだぼっとして野暮ったく見える。
サイズはあっているはずなのに。
「気づいた?」
「はい」
路さんの言っていた意味がよくわかる。
値段の分だけシルエットに差が出る。
それに素材も先ほどのに比べ、テロテロと薄く、安っぽく感じた。
「どっちを買うかは茉理乃ちゃんに任せる。
でも、もうリクルートスーツは卒業した方がいいし、戦闘服としていいスーツを一着は持っておくべきだと思う」
「そう、ですね……」
絶対的に先に着たスーツの方がよかった。
けれどお値段が、痛い。
貯金は多少あるし、カードでボーナス一括って手もあるけど……。
悩みつつも着替えて試着室を出る。
「すぐには決められないだろうから、先にお化粧品買いに行っちゃいましょ」
「そうですね」
とりあえず店を出た。
そのままデパートの化粧品売り場に連れていかれたらどうしようとか思っていたけれど、路さんが私を連れてきたのは近くのドラッグストアだった。
「プチプラでもけっこうなんとかなるのよー」
テキパキと私にあう色味のアイシャドーやなんかを選んでくれた。
金額もお財布に優しい。
「ちょっと疲れちゃったし、お茶にしましょ」
目に入ったコーヒーショップに入り、買ったカフェラテを手にふたり並んでカウンターに座った。
「まだ悩んでる?」
「……はい」
買いたいのは高い方のスーツだが、値段的に私に釣り合うのは安い方。
わかっているのだが、一度あのスーツの魅力に取り付かれたら、そうそう簡単には離れられない。
「ふーん。
あ、そうそう」
おもむろに路さんはバッグの中からはがきを取りだし、私の前へと滑らせた。
「さっきのお店の、会員様限定のセールはがき。
これで買えば三割引になるわ」
「路さん……!」
思わず、彼女の両手を掴んでいた。
「さ、コーヒー飲んじゃったら、さっきのお店に戻りましょ?」
「はい!」
残りのカフェラテを一気に飲み干す。
路さん、神!
もう、路さんの家の方に足を向けて寝られないよー!
最初の店に戻り、取り置きしてもらっていたスーツを買う。
きっと、路さんはこうなること、わかっていたんだろう。
1
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
婚約者に裏切られたその日、出逢った人は。
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
……一夜限りの思い出、のはずだった。
婚約者と思っていた相手に裏切られた朝海。
傷心状態で京都の町をさまよっていた時、ひょんな事から身なりの良いイケメン・聡志と知り合った。
靴をダメにしたお詫び、と言われて服までプレゼントされ、挙句に今日一日付き合ってほしいと言われる。
乞われるままに聡志と行動を共にした朝海は、流れで彼と一夜を過ごしてしまう。
大阪に戻った朝海は数か月後、もう会うことはないと思っていた聡志と、仕事で再会する──
【表紙作成:canva】
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる