極秘蜜愛結婚~俺様御曹司のトップシークレットは私!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第7章 嵐

5.早く、帰ってきて

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「……疲れた」

家に帰り、まだ洗っていない洗濯物の中から紘太朗さんのパジャマを発掘して、変態チックにすーはーした。

「……大丈夫、私は頑張れる」

あれで、音成さんが納得したとは思えない。
紘太朗さんを食事に誘っただけの女性を、破滅に追い詰める彼女だ。
きっとまだ、なにかしてくる。
でも、私は負けたりしない。

「紘太朗さんが帰ってくるまで、頑張んなきゃ……」

紘太朗さんの匂いに包まれたせいか、身体がリラックスしていく。

「お風呂、……は明日でいいか」

緊張がほぐれたせいか、一気に眠りに落ちていった。

――ピコピコ、ピコピコ。

……携帯が鳴っている。

重い瞼を開け、光っている画面を見た。

「紘太朗さん!」

いっぺんに目が覚めて、携帯を耳に当てる。

「はい!」

『翠か?
まだ、起きていたのか?』

紘太朗さんの声。
朝、聞いたはずなのに、それだけで涙腺が緩んできてしまう。

「ええ、はい。
まあ」

『いま、着いた。
すまない、騒ぎを知ったのが離陸したあとだったんだ。
あいつ、俺が戻れないように計算して連絡を入れたようだ。
離陸前なら出張を中止して戻ってたんだけどな』

それで、最初のLINEがあんなに遅かったんだ。
音成さん、どこまでも汚い人。

『翠もすぐに、連絡くれたらよかったのに』

「紘太朗さんに心配かけたくない、から」

今回の出張は、向こうで人気のバッグブランドの、日本一号店の出店誘致だと言っていた。
そんな大事な出張、私のためだけに中止とかさせるわけにはいかない。

『翠……。
いま、翠の傍にいられない、自分が情けない』

「紘太朗さんが悪いわけじゃないので」

『無理、しなくていいんだぞ。
どうして俺はこんなときに、翠の涙を拭ってやれないんだろうな』

紘太朗さんの声は後悔で染まっている。
彼にそんな思いをさせているのだと、胸がキリキリ痛い。

「大丈夫ですから。
そんなに心配しなくても」

『大丈夫なわけないだろ!
あいつに酷く当たられたんだろ!
……あ、すまない』

紘太朗さんの叫びで、胸がさらに痛んだ。

「大丈夫、なので。
その、國方マネージャーが庇ってくださって、それで音成さんもいったんは」

『國方が?
どおりで、俺が翠にセクハラしたことになってるんだな』

ははっ、と自虐的な笑いが小さく聞こえた。

『まあいい、それであいつが誤魔化されたのなら。
國方に借りを作るのは腹立たしいが』

「そう、です……ね」

紘太朗さんは納得のようだが、その借りを返すのに、キスされたなんて言えない。

『なんかあったらすぐに連絡してくれ。
できるだけ仕事も早く片付けて帰る。
……五日……いや、三日で終わらせて帰る』

「そんな無理、しなくていいんですよ」

『いや。
いま無理をしないでいつするんだ?
予定よりは早いが、父に婚約破棄の話もする。
好きな女と結婚したとちゃんと言うから』

「はい、はい」

出てくる涙を慌てて拭う。
いま泣いたらきっと、弱くなる。
紘太朗さんが帰ってくるまで、頑張れなくなる。

『翠、愛してる。
もう遅い、寝ろ』

「そう、ですね」

電話を切りたくない。
もっとこうしていたい。
この電話の向こうには彼がいるのに、なんで私は触れることすらできないのだろう。

『おやすみ、翠。
世界で唯一、翠だけを愛している』

「……おやすみなさい」

けれど今日は、いつまでたってもリップ音が聞こえてこない。
電話の向こう、紘太朗さんの気配だけを感じる。

『……翠』

「……はい」

『どうして翠は声が聞こえるところにいるのに、抱き締められないんだろうな』

紘太朗さんも同じことを思っていてくれた。
電話は遠くの人と繋いでくれるけれど、その距離がもどかしい。

『……すまない、変なことを言った。
早く寝ないと明日に響くもんな。
おやすみ、翠。
愛してる』

「おやすみな、さい」

今度こそ、ちゅっとリップ音が聞こえた。
名残惜しいけれど電話を切る。

「……早く帰ってきて」

――それまで、頑張るから。
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