憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
67 / 89
第十三章 憧れの上司は御曹司でした

13-2

一応の買い物が済み、コーヒーショップで休憩する。
私はカフェラテ、ふたりは期間限定のフラッペだ。

「とてもいい買い物ができました」

「これで迫ればきっと大丈夫ですから、安心してください」

「あ、ありがとう……」

満足げなふたりに引き攣った笑顔を向ける。
私のためにいろいろしてくれたのは理解するが、これを実行する私に問題があるのは彼女たちの計算に入っているんだろうか。
きっと入っていないに違いない。

……でも、まあ。

旅行の日は絶対にいい天気になるようにてるてる坊主でも作ろうかとか相談しているふたりを、微笑ましく見る。
私たちのためにっていろいろ考えてくれたのは嬉しかった。
だから、ケチはつけずにおこう。

休憩のあとは私の要望で、パジャマと部屋着を買いに行く。

「これとかどうです?」

「あのねー」

COCOKAさんが選んだパジャマはやはり過激路線で、さすがに呆れた声が出た。

「おうちでまったりするのに着るんだから、フツーのでいいの、フツーので」

「そうですよ。
こんなのはどうです?」

「うっ」

由姫ちゃんが選んでくれたのは確かに普通ではあったが、ピンクのもこもこウェアだった。
こんなに可愛いものが私に似合うと思っているのか?

「いや、それもだいぶ、無理がない?」

「えー、家着なんだから、これくらい可愛く攻めてもいいと思いますけど?」

あきらかに渋々な感じで彼女がラックにウェアを戻す。
もしかして彼女たちに選んでくれと頼むなんて、人選間違えた?

それでもおとなしめで可愛いパジャマと部屋着を何枚か選んでもらい、購入した。
これで首もとだるだるなTシャツ姿など、龍志にさらさなくていい。
……もういまさらな気もしないでもないが。

お店を出たあとはふたりが寄りたいところがあるというので行くと、龍志が待っていた。

「いい買い物はできたか」

さりげなく私たちが持つ荷物を彼が受け取る。

「バッチリです!」

COCOKAさんは得意げで、龍志は苦笑いしていた。

「そうか、よかったな。
俺は一旦、荷物を車に置いてくるから、ちょっと待っててくれ」

「了解です!」

おどけてCOCOKAさんが敬礼し、龍志は荷物を持って去っていった。

「えっ、なんで龍志が?」

迎えに来るなんて聞いていない。

「夕食、一緒に食べませんかとお誘いしました!」

COCOKAさんは褒めて、褒めてって感じだが、そうか、誘ったのか。

「そうなんだ」

「はい!」

COCOKAさんも由姫ちゃんも嬉しそうだし、まあいいか。
それに別に、なにか問題があるわけでもないし。

戻ってきた龍志と一緒に、カジュアルイタリアンのお店に入る。

「なに飲みます?」

席に案内され、すぐにCOCOKAさんが飲み物のメニューを開いてくれた。

「俺はスパークリングウォーターで」

それを聞いてCOCOKAさんと由姫ちゃんが申し訳なさそうな顔をする。
龍志は車だから、飲めないもんね。

「……すみません」

「いや、気にするな。
七星だけならタクシーでもいいが、お前ら送っていくのも考えたら車のほうがいいって決めたのは俺だからな」

龍志は笑っているが、ふたりはますます申し訳なさそうになった。

「私たちのためにほんと、すみません……」

「だからいいって。
それよか送って帰らなくてなんかあったときのほうが嫌だからな」

「そうだよ。
私も龍志が来るって知ってたら、車で来て由姫ちゃんたちも送ってって頼んでたと思うし」

「ううっ、おふたりの優しさが身に染みます……」

そこまで?
というかほんと、ふたりにとって私たちはいったい、どういう立ち位置なんだろう?
いまだに理解ができない。

「今日は七星の買い物に付き合ってくれてありがとう」

各々頼んだ飲み物が来て、軽く乾杯。

「えっ、付き合うなんてそんな!
私たちのほうが楽しませていただきました!」

龍志の言葉にふたりが慌てて反論する。
うん。
私はもう、ほぼそこにいてふたりの指示に従ってるだけだったもんね。

「私も楽しかったし、おかげでいい買い物ができたよ。
ほんとにありがとう」

「いや、そんな……」

私が頭を下げるとなぜがCOCOKAさんと由姫ちゃんは赤くなってもじもじとしだしたが、なんで?

そのうち料理が出てきて、わいわい食べる。

「おふたりはいつ、結婚するんですか?」

「うぐっ」

COCOKAさんにずばっと痛いところを突かれ、食べていたサラダのレタスが変なところに入った。

「ごほっ、ごほっごほっ」

「大丈夫ですか!?」

おかげで私が盛大に咽せ、みんな慌て出す。

「だ、大丈夫……」

由姫ちゃんがお冷やをもらってくれ、それを飲んで幾分、落ち着いた。

「もー、気をつけてくださいね」

「うん。
ごめん、ありがとう」

呼吸を整えてひと息つく。
結婚は一番、尋ねられたくない話題だ。

「それで。
宇佐神課長と七星お姉さまはいつ、結婚するんですか?」

しかしふたりにとって一番聞きたいところはそこみたいで、COCOKAさんは再び聞いてきた。

「えっと。
あのね……」

「そーだな。
そのうち、かな?」

どうにか誤魔化そうとする私を龍志が遮る。
その笑顔にはこれ以上この件は聞くなと圧があった。

「そのうち、ですか?」

「そう、そのうち」

にこにこ龍志は笑っているが、それ以上の質問を一切許さない雰囲気を醸し出している。

「そのうち、ですね」

そのせいでふたりもそれ以上は聞くのを諦めたようだ。

「結婚が決まったら教えてください。
井ノ上先輩のブライダルエステプランとか考えないといけないので」

「そうそう!
私も知り合いに格安で写真撮影とかイラストとか、動画製作とかしてもらえるように頼みます!」

「ありがとう。
そのときはお願いするよ」

にっこりと龍志が笑い、私の胸がずきんと痛んだ。
それが顔に出ないようにグラスに残っていたお酒を一気に飲み干す。
そっと隣りあう手を龍志が握ってくれて、その温かさでようやく笑えた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】 その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。 片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。 でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。 なのに、この呼び出しは一体、なんですか……? 笹岡花重 24歳、食品卸会社営業部勤務。 真面目で頑張り屋さん。 嫌と言えない性格。 あとは平凡な女子。 × 片桐樹馬 29歳、食品卸会社勤務。 3課課長兼部長代理 高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。 もちろん、仕事できる。 ただし、俺様。 俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

ズボラ上司の甘い罠

松田丹子(まつだにこ)
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。 仕事はできる人なのに、あまりにももったいない! かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。 やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか? 上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

(第一章完結)ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

追放令嬢は宝石職人に拾われる~宝石の声が聞こえる私は、彼と相性抜群のようです~

川上とむ
恋愛
ライデンバッハ家の長女アリシアには、宝石の言葉が聞こえる不思議な力があった。 一方、家族はその力を気味悪がり、双子の妹のガーベラにばかり愛情を注ぎ、アリシアは『いないもの』として扱われていた。 そんなある日、ガーベラが中央貴族に嫁ぐことが決まると、アリシアは生まれ育った家を追い出されてしまう。 土砂降りの雨の中をさまよったアリシアは、宝石の声に導かれるように一軒の宝石工房にたどり着く。 そこにはウィルという宝石職人の男性がいて、アリシアを助けてくれる。 店頭に並べられた宝石たちの言葉から、ウィルが悪い人でないと悟ったアリシアは、彼の宝石工房に住み込みで働かせてもらうことにした。 宝石の言葉を理解するアリシアをウィルは受け入れてくれ、彼女の新たな生活が始まった。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。