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最終章 魔法少女と魔法使い
3-4
翌日はもう、コンタクトをやめて眼鏡で出社した。
目的は果たしたのでコンタクトにする必要はない。
出社してすぐに、室長に退職の意向を伝えた。
「えっ、急にどうしたの?
引き抜きでもされた?」
「いえ。
その、一身上の都合というか、自分を見つめ直したくて」
曖昧に笑って答える。
それにこれはまったくの嘘ではない。
ずっと真面目に生きてきた。
しかしその結果、男性が苦手で面白くもない、お堅い人間ができてしまった。
けれど魔法少女をやってみて思ったのだ。
人間、けっこういい加減でもいい。
私が適当に言い訳して抜けたところで仕事は問題なく回ったし、それにあのお茶会は仕事をサボっているという罪悪感よりも、イケないことをしているという妙な興奮があった。
ビズーほどだと迷惑だが、人間、もっと緩く生きていいのだ。
そう気づけただけ、魔法少女になってよかったと思う。
「わかった。
でも、決定するのは南条社長だからね」
「わかっています」
きっと彼はすぐに承諾するだろう。
私が彼だったらありがたく、そうさせてもらう。
今日も南条社長は昨日出たアレルギー症状がまだ治らないと休みの連絡が入った。
よっぽど私と顔をあわせたくないのだろう。
退職願を出して、正解だった。
このまま彼をずっと休ませるわけにはいかないし、明日から有休消化に入らせてもらおうかな。
通常業務をこなしつつ、明日から休みに入れるように引き継ぎ資料の作成も並行しておこなう。
今日はこれからもあるので室長が遅くまで付き合ってくれた。
「荷物は改めて整理に来ます。
挨拶もまだですし」
「本当にやめる気なの?
まだ社長の返事も聞いてないし、考え直さない?」
引き留めるほど室長が私の仕事ぶりを評価してくれているのだと、嬉しくなる。
「こんなに急でご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
精一杯の気持ちで頭を下げた。
有休消化に入った初日は、ひさしぶりにお昼まで寝た。
「よく寝た……」
このところ睡眠不足だった自覚があり、笑っていた。
しかし、まだ私の横で眠っているビズーはどうなっているんだ?
食パンを焼いて囓りながら、携帯をチェックする。
昨日、それ系のサイトへ投稿した書き込みにコメントがついていた。
「んー」
プロフィールなどを見て、できるだけ優しそうな人を選ぶ。
吹っ切ればここまで思い切れるのなら、もっと早くそうしていれば魔法少女になどならずに済んだのにと苦笑いが漏れた。
約束の時間より少し早く出掛ける準備をしている私の周りを、ようやく起きたビズーがうろうろと飛び回る。
「ねー、やめよーよ。
ヤなヤツだよ、きっと」
「あーもー、うるさい」
私に魔法少女を卒業されればビズーはノルマ達成の危機だから大問題だ。
わかっているが、そのあたりは自力でどうにかしてくれ。
そもそも、悪の組織との戦いは天界の暇潰しで、怪人が暴れたところで実際のとこは害はない。
少し考えて、眼鏡はやめにしてコンタクトにした。
これから私は新しい私になるのだから、処女とともに眼鏡も卒業だ。
街に出て時間まで買い物をする。
今までモノトーンの服ばかりだったが、思い切って冒険してピンクのボリューム袖ブラウスにデニムパンツを選んでみた。
ピンクの服はもちろん、デニムパンツなんてカジュアルなものも初めてだ。
「うん、いいんじゃないかな。
ビズー、どう?」
「はいはい、いいんじゃない?」
ヤツがおざなりな返事をしてきてむっとしたが、ヤツとしては私が魔法少女を卒業するというのでふて腐れているんだから仕方ない。
買った服に着替え、近くのカフェに入る。
「ビズー。
好きなもの、頼んでいいよ」
「そんなもので謝罪になると思ってるの」
不満げにヤツが私を睨む。
「思ってないよ。
でも、せめてものお詫び」
ビズーにはいろいろ苦労もさせられたが、それなりに楽しかった。
魔法少女になったおかげで、けっこう人間、適当でいいんだと気づけた。
感謝も込めて最後くらい、好きなものを食べさせてあげたい。
「ま、いいけど」
ビズーが選んだパフェを頼む。
届いたそれをヤツは無言で完食した。
「じゃ、これでお別れだけど。
楽しかった、ありがとう」
カフェの近く、人気のないところでビズーと別れる。
けれどヤツはなにも言わずに去っていった。
「ま、いっか」
ヤツが怒りたくなる気持ちもわかるから、仕方ない。
待ち合わせ場所にいたのは、小綺麗で優しそうな少し年上の人でほっとした。
軽く食事をしたが今からを思うと緊張して、なにを話したか覚えていない。
促されるままに一緒にホテルに入る。
「先にシャワー、浴びておいでよ」
「あっ、はい!」
言われて慌てて、浴室へと入った。
そうか、そういうことをするのだから、身体は綺麗にしないといけないよね。
私が出たあと、シャワーを浴びに行った彼を、ベッドに座って待つ。
どくん、どくんと心臓が、これ以上ないほど大きく鼓動している。
いよいよだと思うとこれ以上ないほど、カチコチに緊張していた。
「おまたせ」
少しして男が、バスタオルだけ巻いて浴室から出てきた。
「ハジメテ、なんだって?」
隣に座った彼が、さりげなく手に触れてくる。
それだけで叫びそうになったが、かろうじて耐えた。
「はい。
三十も過ぎて処女なんておかしいですよね」
意味もなく、落ちかかる髪を耳にかける。
「いや?
可愛いと思うけど」
彼の顔が近づいてきて、耳の後ろへ口づけが落とされた。
途端にぞわぞわっと鳥肌が爪先から一気に駆け上がってきた。
「できるだけ優しくするね……」
ゆっくりと彼が、私を押し倒す。
イヤラしく歪んだ目に悪寒がした。
……でも。
魔法少女を卒業して、もう悪の幹部様に、南条社長に迷惑をかけないんだ。
きっと、我慢していたらすぐに終わる。
そう覚悟して、きつく目を閉じてそのときを待った。
しかし――。
「俺の女になにしてるんだ!」
怒号が響いてきて目を開ける。
そこにはなぜか、南条社長がいた。
「だ、誰だお前は!」
そりゃ、いきなり知らない人が部屋に入ってきていたら驚く。
私だってなんで彼がここにいるのかわからない。
「だいたい、俺の女ってオレたちは合意だけど?」
すぐに男が南条社長を睨み返す。
「合意なわけあるか!
あんなに震えているのに!」
ビシッと社長が私を指さす。
それで初めて自分が、恐怖で震えているのに気づいた。
「あんな状態なのに無視して抱こうとするなんて、無理矢理と一緒だが?
弁護士呼んで白黒つけようか?」
「な、なんだよそれ!
けっ、やってられるか!」
南条社長が今すぐそうするとばかりに携帯を操作しはじめ、男は大慌てで服を着て部屋を出ていった。
その後ろでビズーがあっかんべーとかしている。
きっとヤツが、南条社長を呼んできたのだろう。
そして、部屋の鍵も開けたのだ。
目的は果たしたのでコンタクトにする必要はない。
出社してすぐに、室長に退職の意向を伝えた。
「えっ、急にどうしたの?
引き抜きでもされた?」
「いえ。
その、一身上の都合というか、自分を見つめ直したくて」
曖昧に笑って答える。
それにこれはまったくの嘘ではない。
ずっと真面目に生きてきた。
しかしその結果、男性が苦手で面白くもない、お堅い人間ができてしまった。
けれど魔法少女をやってみて思ったのだ。
人間、けっこういい加減でもいい。
私が適当に言い訳して抜けたところで仕事は問題なく回ったし、それにあのお茶会は仕事をサボっているという罪悪感よりも、イケないことをしているという妙な興奮があった。
ビズーほどだと迷惑だが、人間、もっと緩く生きていいのだ。
そう気づけただけ、魔法少女になってよかったと思う。
「わかった。
でも、決定するのは南条社長だからね」
「わかっています」
きっと彼はすぐに承諾するだろう。
私が彼だったらありがたく、そうさせてもらう。
今日も南条社長は昨日出たアレルギー症状がまだ治らないと休みの連絡が入った。
よっぽど私と顔をあわせたくないのだろう。
退職願を出して、正解だった。
このまま彼をずっと休ませるわけにはいかないし、明日から有休消化に入らせてもらおうかな。
通常業務をこなしつつ、明日から休みに入れるように引き継ぎ資料の作成も並行しておこなう。
今日はこれからもあるので室長が遅くまで付き合ってくれた。
「荷物は改めて整理に来ます。
挨拶もまだですし」
「本当にやめる気なの?
まだ社長の返事も聞いてないし、考え直さない?」
引き留めるほど室長が私の仕事ぶりを評価してくれているのだと、嬉しくなる。
「こんなに急でご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
精一杯の気持ちで頭を下げた。
有休消化に入った初日は、ひさしぶりにお昼まで寝た。
「よく寝た……」
このところ睡眠不足だった自覚があり、笑っていた。
しかし、まだ私の横で眠っているビズーはどうなっているんだ?
食パンを焼いて囓りながら、携帯をチェックする。
昨日、それ系のサイトへ投稿した書き込みにコメントがついていた。
「んー」
プロフィールなどを見て、できるだけ優しそうな人を選ぶ。
吹っ切ればここまで思い切れるのなら、もっと早くそうしていれば魔法少女になどならずに済んだのにと苦笑いが漏れた。
約束の時間より少し早く出掛ける準備をしている私の周りを、ようやく起きたビズーがうろうろと飛び回る。
「ねー、やめよーよ。
ヤなヤツだよ、きっと」
「あーもー、うるさい」
私に魔法少女を卒業されればビズーはノルマ達成の危機だから大問題だ。
わかっているが、そのあたりは自力でどうにかしてくれ。
そもそも、悪の組織との戦いは天界の暇潰しで、怪人が暴れたところで実際のとこは害はない。
少し考えて、眼鏡はやめにしてコンタクトにした。
これから私は新しい私になるのだから、処女とともに眼鏡も卒業だ。
街に出て時間まで買い物をする。
今までモノトーンの服ばかりだったが、思い切って冒険してピンクのボリューム袖ブラウスにデニムパンツを選んでみた。
ピンクの服はもちろん、デニムパンツなんてカジュアルなものも初めてだ。
「うん、いいんじゃないかな。
ビズー、どう?」
「はいはい、いいんじゃない?」
ヤツがおざなりな返事をしてきてむっとしたが、ヤツとしては私が魔法少女を卒業するというのでふて腐れているんだから仕方ない。
買った服に着替え、近くのカフェに入る。
「ビズー。
好きなもの、頼んでいいよ」
「そんなもので謝罪になると思ってるの」
不満げにヤツが私を睨む。
「思ってないよ。
でも、せめてものお詫び」
ビズーにはいろいろ苦労もさせられたが、それなりに楽しかった。
魔法少女になったおかげで、けっこう人間、適当でいいんだと気づけた。
感謝も込めて最後くらい、好きなものを食べさせてあげたい。
「ま、いいけど」
ビズーが選んだパフェを頼む。
届いたそれをヤツは無言で完食した。
「じゃ、これでお別れだけど。
楽しかった、ありがとう」
カフェの近く、人気のないところでビズーと別れる。
けれどヤツはなにも言わずに去っていった。
「ま、いっか」
ヤツが怒りたくなる気持ちもわかるから、仕方ない。
待ち合わせ場所にいたのは、小綺麗で優しそうな少し年上の人でほっとした。
軽く食事をしたが今からを思うと緊張して、なにを話したか覚えていない。
促されるままに一緒にホテルに入る。
「先にシャワー、浴びておいでよ」
「あっ、はい!」
言われて慌てて、浴室へと入った。
そうか、そういうことをするのだから、身体は綺麗にしないといけないよね。
私が出たあと、シャワーを浴びに行った彼を、ベッドに座って待つ。
どくん、どくんと心臓が、これ以上ないほど大きく鼓動している。
いよいよだと思うとこれ以上ないほど、カチコチに緊張していた。
「おまたせ」
少しして男が、バスタオルだけ巻いて浴室から出てきた。
「ハジメテ、なんだって?」
隣に座った彼が、さりげなく手に触れてくる。
それだけで叫びそうになったが、かろうじて耐えた。
「はい。
三十も過ぎて処女なんておかしいですよね」
意味もなく、落ちかかる髪を耳にかける。
「いや?
可愛いと思うけど」
彼の顔が近づいてきて、耳の後ろへ口づけが落とされた。
途端にぞわぞわっと鳥肌が爪先から一気に駆け上がってきた。
「できるだけ優しくするね……」
ゆっくりと彼が、私を押し倒す。
イヤラしく歪んだ目に悪寒がした。
……でも。
魔法少女を卒業して、もう悪の幹部様に、南条社長に迷惑をかけないんだ。
きっと、我慢していたらすぐに終わる。
そう覚悟して、きつく目を閉じてそのときを待った。
しかし――。
「俺の女になにしてるんだ!」
怒号が響いてきて目を開ける。
そこにはなぜか、南条社長がいた。
「だ、誰だお前は!」
そりゃ、いきなり知らない人が部屋に入ってきていたら驚く。
私だってなんで彼がここにいるのかわからない。
「だいたい、俺の女ってオレたちは合意だけど?」
すぐに男が南条社長を睨み返す。
「合意なわけあるか!
あんなに震えているのに!」
ビシッと社長が私を指さす。
それで初めて自分が、恐怖で震えているのに気づいた。
「あんな状態なのに無視して抱こうとするなんて、無理矢理と一緒だが?
弁護士呼んで白黒つけようか?」
「な、なんだよそれ!
けっ、やってられるか!」
南条社長が今すぐそうするとばかりに携帯を操作しはじめ、男は大慌てで服を着て部屋を出ていった。
その後ろでビズーがあっかんべーとかしている。
きっとヤツが、南条社長を呼んできたのだろう。
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