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第1章 お見合い28時
8.過去の私は一体、彼になにをしたのだろう
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「ディナーはなにが食べたい?
和食か、中華か。
うちのホテルはフレンチに力を入れていて、有名なんだぞ」
トランプのように数種類のメニューを広げ、玲さんが訊いてくる。
食事はもしかして、ホテル内のレストランから運ばせているんだろうか。
「ほら、どれがいい?
昼はイタリアンだったから、夜は中華にするか」
それに決定だとばかりに、玲さんは中華のメニューを私の前へ開いた。
「なんにする?
ここのフカヒレは超一級だし、北京ダックもうまい。
デザートに杏仁豆腐は外せないかな。
うーん、どれも彩梅に食べさせたくて、決まらない」
彼の勢いだと、食べきれないほどの料理がテーブルの上に並びそうだ。
「あ、あの。
この、コース、とか、は?」
当たり障りのない並コースを選んでみる。
コースなら適量が運ばれてくるし、いろいろ食べられるから彼も満足してくれそう。
「コースか。
うん、それも悪くない」
受話器を取り、玲さんが電話をかけはじめる。
けれど彼が頼んだは一番上のランクのコースだった。
「すぐに来るから少し待ってくれ」
「……はい」
するりと頬を撫でた玲さんがじっと私を見つめる。
堪えられなくなって視線を逸らした。
すぐにふたりの男女がやってきて、食堂を整えていく。
「さて。
ディナーにしよう」
玲さんに伴われて食堂に入ったときには、料理が並べられていた。
「彩梅との再会に」
玲さんが掲げるグラスに合わせて、笑みを張り付かせて自分のグラスを少し上げる。
中華、だけど、飲み物はワインだった。
「見合いなど最初から断るつもりだったが、顔だけでも見にいってみるものだな。
まさか、彩梅に会えるなんて思ってもいなかった」
玲さんは喜んでいるが、私は複雑な心境だ。
絶対に断られると決めつけていたのに、気に入られた上に拉致られていま、ここにいるのだから。
料理は玲さんの希望通り、フカヒレも北京ダックも含まれていた。
彼ご自慢とだけあって、美味しい。
「明日、僕は仕事で彩梅をひとりにしてしまうが……すまない」
どうして彼が詫びるのかわからない。
仕事ならば当然、なのに。
「べ、別に、かまいません、ので」
それに彼がいなくてひとりきりになれる方が、願ったり叶ったりだ。
これでゲームがあれば完璧だけど。
「すぐに彩梅の身の回りの世話をする人間を雇う。
それまでしばらく、我慢してくれ」
「……えっと?」
最低限の身の回りのことは自分でできる。
いままでだってそうだった。
部屋に入られるのが嫌で自分で掃除までしていたほどだ。
だから、そんな人は必要ないんだけど……。
「ひ、ひとりでできるので、別に」
「僕は彩梅に、快適に過ごしてほしいんだ」
「……」
それよりもひとりで放っておいてくれた方が、よっぽど快適なんだけど。
なんてことは妙に真剣な玲さんには言えなかった。
もっとも、私に自分の希望を満足に伝える、なんてスキルがないが。
「一緒に風呂、入るだろ」
夕食のあと、さも当然のように玲さんが訊いてきた。
「あの、えっと」
「僕は彩梅の身体を洗ってやりたいんだ」
拒否する私をよそに、ずるずると彼は私を浴室へと引っ張っていく。
「あの。
その。
……恥ずかしい、です」
脱衣所で私の服にかかった玲さんの手を掴み、熱い顔で俯く。
そこでピタ、っと彼の動きが止まった。
「ああそうか、うん」
私から手を離し、あたまをぽんぽんして彼が出ていく。
「今日のところは諦める。
彩梅にまた、嫌われたくないからな」
すぐにバタンとドアが閉まり、玲さんはいなくなった。
「また、って、なんなん、だろう?」
過去に彼を、嫌ったことがある?
いったい、私の知らない私は彼になにをしたのだろう。
交代でお風呂に入り、そのあとは寝室へ連れて行かれた。
それだけでどくん、どくん、と心臓は自己主張を続けている。
「……彩梅を、食べたい」
そっと、耳元でささやかれた言葉がなにを意味するかわからないほど、ウブじゃない。
おそるおそる見た眼鏡の奥は、蠱惑的に光っていた。
「そんなに怯えなくていい。
いまはまだ、我慢するから。
――でもいつか。
僕に彩梅を抱くことを許してほしい」
誘われるように、一緒に布団に潜る。
玲さんの手がそっと、私を抱きしめた。
「おやすみ、彩梅」
「おやすみな、さい」
すぐに玲さんが、気持ちよさそうに寝息を立てだす。
「こ、こんな状況で、眠れるはず、ない……」
などと思ったものの、前日はほぼ徹夜だったのもあって身体は限界で、すぐに瞼が落ちてくる。
玲さんに抱き締められていることを覗けば、ベッドの寝心地は最高だったし。
こうして、私の怒濤の二十八時間は終わりを告げた。
和食か、中華か。
うちのホテルはフレンチに力を入れていて、有名なんだぞ」
トランプのように数種類のメニューを広げ、玲さんが訊いてくる。
食事はもしかして、ホテル内のレストランから運ばせているんだろうか。
「ほら、どれがいい?
昼はイタリアンだったから、夜は中華にするか」
それに決定だとばかりに、玲さんは中華のメニューを私の前へ開いた。
「なんにする?
ここのフカヒレは超一級だし、北京ダックもうまい。
デザートに杏仁豆腐は外せないかな。
うーん、どれも彩梅に食べさせたくて、決まらない」
彼の勢いだと、食べきれないほどの料理がテーブルの上に並びそうだ。
「あ、あの。
この、コース、とか、は?」
当たり障りのない並コースを選んでみる。
コースなら適量が運ばれてくるし、いろいろ食べられるから彼も満足してくれそう。
「コースか。
うん、それも悪くない」
受話器を取り、玲さんが電話をかけはじめる。
けれど彼が頼んだは一番上のランクのコースだった。
「すぐに来るから少し待ってくれ」
「……はい」
するりと頬を撫でた玲さんがじっと私を見つめる。
堪えられなくなって視線を逸らした。
すぐにふたりの男女がやってきて、食堂を整えていく。
「さて。
ディナーにしよう」
玲さんに伴われて食堂に入ったときには、料理が並べられていた。
「彩梅との再会に」
玲さんが掲げるグラスに合わせて、笑みを張り付かせて自分のグラスを少し上げる。
中華、だけど、飲み物はワインだった。
「見合いなど最初から断るつもりだったが、顔だけでも見にいってみるものだな。
まさか、彩梅に会えるなんて思ってもいなかった」
玲さんは喜んでいるが、私は複雑な心境だ。
絶対に断られると決めつけていたのに、気に入られた上に拉致られていま、ここにいるのだから。
料理は玲さんの希望通り、フカヒレも北京ダックも含まれていた。
彼ご自慢とだけあって、美味しい。
「明日、僕は仕事で彩梅をひとりにしてしまうが……すまない」
どうして彼が詫びるのかわからない。
仕事ならば当然、なのに。
「べ、別に、かまいません、ので」
それに彼がいなくてひとりきりになれる方が、願ったり叶ったりだ。
これでゲームがあれば完璧だけど。
「すぐに彩梅の身の回りの世話をする人間を雇う。
それまでしばらく、我慢してくれ」
「……えっと?」
最低限の身の回りのことは自分でできる。
いままでだってそうだった。
部屋に入られるのが嫌で自分で掃除までしていたほどだ。
だから、そんな人は必要ないんだけど……。
「ひ、ひとりでできるので、別に」
「僕は彩梅に、快適に過ごしてほしいんだ」
「……」
それよりもひとりで放っておいてくれた方が、よっぽど快適なんだけど。
なんてことは妙に真剣な玲さんには言えなかった。
もっとも、私に自分の希望を満足に伝える、なんてスキルがないが。
「一緒に風呂、入るだろ」
夕食のあと、さも当然のように玲さんが訊いてきた。
「あの、えっと」
「僕は彩梅の身体を洗ってやりたいんだ」
拒否する私をよそに、ずるずると彼は私を浴室へと引っ張っていく。
「あの。
その。
……恥ずかしい、です」
脱衣所で私の服にかかった玲さんの手を掴み、熱い顔で俯く。
そこでピタ、っと彼の動きが止まった。
「ああそうか、うん」
私から手を離し、あたまをぽんぽんして彼が出ていく。
「今日のところは諦める。
彩梅にまた、嫌われたくないからな」
すぐにバタンとドアが閉まり、玲さんはいなくなった。
「また、って、なんなん、だろう?」
過去に彼を、嫌ったことがある?
いったい、私の知らない私は彼になにをしたのだろう。
交代でお風呂に入り、そのあとは寝室へ連れて行かれた。
それだけでどくん、どくん、と心臓は自己主張を続けている。
「……彩梅を、食べたい」
そっと、耳元でささやかれた言葉がなにを意味するかわからないほど、ウブじゃない。
おそるおそる見た眼鏡の奥は、蠱惑的に光っていた。
「そんなに怯えなくていい。
いまはまだ、我慢するから。
――でもいつか。
僕に彩梅を抱くことを許してほしい」
誘われるように、一緒に布団に潜る。
玲さんの手がそっと、私を抱きしめた。
「おやすみ、彩梅」
「おやすみな、さい」
すぐに玲さんが、気持ちよさそうに寝息を立てだす。
「こ、こんな状況で、眠れるはず、ない……」
などと思ったものの、前日はほぼ徹夜だったのもあって身体は限界で、すぐに瞼が落ちてくる。
玲さんに抱き締められていることを覗けば、ベッドの寝心地は最高だったし。
こうして、私の怒濤の二十八時間は終わりを告げた。
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