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エピローグ その瞳を溶かすのは昔も今も私だけ

2.謎のSDカード

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――ピンポーン。

「……ちっ」

インターフォンが鳴らされ、子供たちの世話をしていた石塚さんが短く舌打ちをした。
彼女が玄関へ行き、ドアを開けた途端。

「おはようございます、彩梅様!」

その僅かの間すら待ちきれなかった高椋さんが一気に私まで距離を詰めてきた。

「今日も彩梅様はお美しい……!」

私の手を取り、ふーん、ふーん、と荒い鼻息ですりすりと撫でられて背中がのけぞるのももう、毎朝の恒例だ。

玲と同じ年のはずの高椋さんも石塚さんと同じで、いまだに独身だ。

『我が主人は彩梅様おひとりだけですから』

とかわけのわからないことをいまだに言っているが、……早く、彼女には他の幸せを見つけてもらいたい。

「離れろ、変態!」

異空間からでも取り出したのでは?という早さで手にしたスリッパで、石塚さんが彼女のあたまをパコン!と叩く。
けれど高椋さんはそれにかまうことなく、子供たちに向かっていった。

「あー、たかむくだー」

「おはよう、たかむく!」

「おはようございます、優梅華お嬢様、皐お坊ちゃま」

子供たちは変態……もとい。
高椋さんと普通にじゃれあっている。
もう彼女のあれは子供たちの中では当たり前すぎて、別段騒いだりしないのだ。

「あーや」

そうこうしているうちに、準備を済ませた玲が寝室から出てきた。

「じゃあ、行ってくる」

「はい、いってらっしゃい」

誰が見ているとか気にせずに、キスをする。
その間に高椋さんと石塚さんが子供たちに帽子をかぶせて幼稚園へ行く準備を済ませてくれた。

「ママン、いってきまーす!」

「きまーす!」

「はいはい、いってらっしゃい」

玲と一緒の車で幼稚園へ行く子供たちを見送った。
朝は、出勤ついでに玲が連れていってくれる。
帰りは私が行くけれど、無理なときは石塚さんが行ってくれた。

「さてと」

皆が出ていって静かになった家で、私は仕事をはじめる。
前にやっていたホテルでの手紙を書く仕事は、産休に入ると同時に辞めた。
辞めるしかなかった。
だってあれは、玲が私のために作ってくれた仕事だから。
玲が総支配人でなくなれば、続けられないのが道理。
代わりに、じゃないけど、はじめたのがフランス語下訳の仕事だ。

子供が生まれ、フランスにいる玲のお祖父様がたくさんの絵本を贈ってくれた。
それを読み聞かせるために自分なりに訳していたのがはじまりだ。

もっと、この作品たちを日本でも紹介したい。

そこから玲のツテを頼り、同意してくれる出版社を見つけた。
どうせなら翻訳も私がしたらいいと言われたが、我ながら文才がないので酷い訳なのは自覚があったので、辞退した。
なら、下訳をやりませんかとさらにお声がけいただき、いまはその仕事をしている。

「うーん!
とりあえず一休みしよっかなー?」

背伸びをしたら、肩がバキバキと鳴った。
それだけ集中していたのだから仕方ない。

「彩梅様。
きりがいいのならお昼になさいませんか?」

「そうですね」

石塚さんに声をかけられダイニングへ行ったら、もう昼食の準備が整えられていた。

「いただきます」

今日のお昼はそうめんと天ぷらだった。

「うん、美味しい」

「恐縮でございます」

一軒家に移り住んでから、料理も石塚さんがしてくれるようになった。
家事全般から私に子供の世話。
そんなにやっているのに石塚さんは平気な顔をしている。
どれだけスーパーウーマンなんだ、彼女は。

「あとで、優梅華の浴衣を探したいんですが、いいですか」

「はい、かしこまりました」

石塚さんが注いでくれた冷や茶を飲む。
玲のことだから花火大会に新しい浴衣を買うだろうけど、明日、着せてあげるって優梅華と昨日、約束したら。

「……で。
どこにしまったんでしたっけ……?」

広いウォークインクローゼットの中を探しながら、途方に暮れた。
だいたい、玲が子供の小さくなった服を捨てたがらないから溜まって仕方ない。
あと、ジョーガサキさんが定期的に大量に服を送ってくるから。

「ここ、かな……?」

積まれていた服を引っ張ったら、……雪崩れてきた。

「危ない!」

石塚さんの手が、雪崩れてきたものを止める。
でも全部は止めきれなくて、ドサドサと一部が床に落ちていった。

「……なに、これ?」

床の上に広がる紙を拾う。
そこには幼い頃の私が写っていた。

「え?
これも?
これも?」

それには全部、いろいろな年の私が写っている。
視線は全部写真の外、というよりも……隠し撮り?

「え、なにこれ?」

どうしてこんなものが?
さらに落ちている小さめのファイルを拾う。
その中にはたくさんのSDカードがしまわれていた。
【あーや ○年○月~○年○月】という文字と共に
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