家庭侵略されています!~魔王の逆異世界スローライフ~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第一章 魔王の妻になりました

1-2

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――目を開けたら知らない男の顔が見えた。

……ああ、これはやっちまったパターンか。

なんとなく納得し、もそもそと寝返りを打って再び目を閉じる。
昨日は、悪いお酒だったもんなー。
仕事押しつけられたうえに、評価は横取りされて。
あんな会社、いい加減辞めたい。
相手は目を覚ます気配がないし私も二度寝しようとしたものの、ありえないものを見た気がして思わず起き上がっていた。

「ツノ!?」

「うるさい……」

私の声に反応した男がそのツノが邪魔にならないようにか、角度を変えてまた枕に顔をうずめる。

「ええっと……」

酔った勢いで男を連れ込み、一夜の過ちを犯したまではいい。
……いや、よくないが。
しかしそこまではそこそこありがちな展開なので、まだ理解できる。
問題は彼の頭に生えているあの――ツノだ。

「本物……?」

起こさないようにそーっと、それに触ってみる。
きっと、コスプレの作り物だと思う。
けれど、いくら揺らしたところで外れる気配がない。

「えっ、ちょっ、なんで!?」

次第にどうにかして取ってやろうと躍起になっていた。

「痛いんだけど」

そのうち鬱陶しくなったのか、男がのそりといかにも迷惑そうに起き上がった。

「どうしてこれ、取れないの!」

「あー……」

頭をぼそぼそと掻き、男は私の抗議を受け流した。

「生えてるからに決まってんだろ」

はぁっと煩わしそうに男の口からため息が落ちる。
なに当たり前なこと聞いてんの?って感じだが、私の常識の中に頭にツノが生えている人間はいない。

「いやいやいや。
ない、ないから」

ツッコみつつ、二日酔いからではなく頭が痛い。
これは凄く、面倒くさい人間を連れ込んじゃったんだろうか。
昨晩の私に膝詰めで説教したい。

「なにがないんだ、我が妻よ」

「……は?」

さらに彼の口から耳を疑う言葉が出てきて固まった。
三瞬のち、開いたままの自分の口に気づいて慌てて閉じる。

「……いま、なんて言った?」

おそるおそる、どうか私の聞き間違いであってくれと願いながら聞き返す。

「ん?
だからなにがないんだ、我が妻よ」

「んー」

〝我が妻〟って誰のことだ?
ってここには私と彼しかいない。
いつ、私は彼と結婚したんだ?
そもそも、あのツノはなんだ?
ああ、あれか。
きっとこれは夢だから、寝て目が覚めたらいつもどおり……。
もそもそと布団に潜り、目を閉じる。
しかしすぐに、男から起こされた。

「妻よ。
寝るのはいいが腹が減った」

「んんっ!」

人がせっかく夢で片付けようとしているのに、現実に戻すがごとく男の腹が派手な音を立てる。

「はぁーっ……」

仕方なく再び起き上がり、諦めのため息をつく。

「……なんか作るからちょっと待ってて」

「よろしく頼む」

嫌々ベッドを出て簡単に洗顔等を済ませ、キッチンに立った。
だいたい、なんで私が朝食を作ってやらないといけない?
あれか、家事は女がするものとでも思っているのか。
そんなヤツはお断りだ。
なんか変な人だし、朝ごはんを食べたらさっさと出ていってもらおう。

「できたよー」

テーブルの上に料理を並べていく。
不本意だったのもあり、千切ったレタスに目玉焼き、あとは炒めたウィンナーとトーストと、簡単手抜きだ。

「すまないな」

キッチンへ来た男はベッドの中ではわからなかったが、縦にデカかった。
それはいいが、ほぼ真っ裸なのはなんでだろう?

「あのさ。
服、着てもらえる?」

「あー……。
服は、ない」

男は困ったように頬を掻いている。

「勇者との激闘の末ここに飛ばされてきたので、服は破れてこれだけしか……」

情けなさそうに男が摘まんだのは、腰回りにかろうじて纏わり付くボロ布だった。
私の中で彼の評価が、〝コスプレ野郎〟から〝厨二病の危ない人〟にクラスアップされる。
勇者と激闘って、自分は魔王だとでも言うのか?
さらに異世界転移でもしてきたと。
そういう話はラノベとアニメの世界だけでお願いしたい。

「……とりあえずこれ、着てて」

昔の彼氏が置いていったジャージを引っ張りだして彼に渡す。
処分していないのは未練ではなく、ただ単に面倒くさいからだ。

「助かる」

彼は受け取ってそれを着たが、Tシャツはツノが通らないから諦めたみたいだ。
上着が前開きだったのは不幸中の幸いか。
それにしても、前の彼氏は平均的な身長だったのでズボンの丈が足りないのはわかる。
しかし上着が若干、短いくらいなのはどうしてだ?
あれか、それだけ腰が高いのか。
少し長めの黒髪がぼさぼさなのは寝起きだから仕方ないとして、よく見れば顔もいいし、厨二病なのがつくづく惜しまれる。

服も着てもらったので、彼と向かいあって朝食を取る。
箸を出していたが、どうも彼は使いづらそうなのでフォークを渡した。
黒髪黒目で日本人とも西洋人とも区別がつかないような顔立ちだから、もしかしたらあちらの人なのかもしれない。
それにしては日本語が流暢だが。
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