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第三章 ニキを元の世界に帰してやりたいのだ
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旅行の日は日頃の行いがよかったのか、いい天気だった。
「これ、どうしたの?」
ちょっと待っていろと言われ、マンションの前で荷物と共に五分ほど待っていたらニキが車で現れた。
「ん?
借りた」
てきぱきと荷物を積み、彼は運転席に座ってシートベルトを締めた。
借りたのはそうだろうと思うが、それ以前に気になる問題がある。
「免許は?」
「取った。
ほら」
得意げにニキはブルーの免許を見せてくれたけれど。
「……また、魔力でズルしたりしてないよね?」
疑いたくはないが、前科があるだけに確認したい。
「してない、してない。
苺がいない時間に自動車学校に通って、こっそり取った。
驚いたか?」
「……うん。
びっくりした」
私が納得したので、ニキは車を出した。
ニキは努力家だ。
こちらの知識も必死に学習して、短期間で普通に一般企業で働けるほどにまでなった。
そのうえ、いまなんて株で稼いでいる。
そういうところ、尊敬するな。
適度に休憩を挟みながら、目的地へと向かう。
「結局、どこ行くの?」
旅館は教えてもらったが、それ以外はなにも聞いていない。
「観光地ぶらぶらして、明日はバンジー」
「ああ、そう……」
やっぱりバンジーはするんだ……。
私もやらなきゃいけないのかな?
それだけは遠慮したい……。
目的地に着き、適当な駐車場に預けてぶらぶらする。
「美術館、入るか?
好きだろ、こういうの」
「入る、入る!」
ガラス細工の美術館にさしかかり、勧められるがままに喜んで入る。
「うわーっ、綺麗……!」
シャンデリアも、ステンドグラスも美しくて、心までキラキラになった。
「そういえばニキって魔王ならお城に住んでたんだよね?」
「そうだな」
「やっぱり、こんなふうにキラキラだったの?」
だとしたらちょっと、行ってみたい。
なんだかんだ言っても、お城は女子の憧れだよね?
「あー……」
少し天を仰いだあと、ニキは困ったような笑顔を私に向けた。
「期待しているところ悪いが。
魔王城は薄暗くて不気味な感じだ」
「そうなんだ」
そこは、こちらのイメージと変わらないのかな?
「じゃあ、どんな感じなの?」
興味津々に聞いてみる。
「シャンデリアはドクロの上にろうそくがのっているのだし、蛇とかそんなデザインが多かったな」
思い出しているのか、ニキはうんうんと頷いている。
完全にアニメでよく見るあのお城なんだ。
その王座に彼が座っているのを想像したら、ぴったりだった。
ニキが魔王だから当たり前といえば当たり前だけれど。
「俺としてはもっと明るい感じにリフォームしたかったんだが、これが伝統だからと許してもらえなかったんだよな……」
はぁーっと、ニキの口から物憂げなため息が落ちていく。
よっぽど、嫌だったんだろうな。
「ふーん。
じゃあ、家はニキの好きなように模様替えしていいよ」
我が家はお洒落とは決して言えない。
私が適当だからだ。
でもニキって料理の盛り付けとかも綺麗だし、凄くお洒落な家になりそう。
「いっそ、引っ越さないか?
ベッドが狭いから買い替えたいが、あの部屋だとそれだけでいっぱいになるからな」
「そーだねー。
それもいいねー」
ニキと結婚してからも単身用の1LDKに住んでいるから、確かに狭い。
ニキの稼ぎも安定しているし、私もそこそこ貯蓄ができているし、引っ越しもいいかも。
「今度の休み、不動産屋に行ってみるか」
「いいねー」
手を繋いでぷらぷら見てまわる。
窓からはキラキラと光が差し込み、穏やかで優しい時間が過ぎていく。
幸せってこういうのを言うのかな。
隣を歩く彼をちらり。
「ん?」
目のあったニキが少しだけ首を傾げ、目を細めて私をみる。
「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない」
少し熱い顔を誤魔化そうと笑い、再び前を見た。
彼も、私と同じ気持ちだったらいいな。
庭では、花嫁と花婿が写真撮りをしていた。
「そういや俺たち、結婚式も挙げてないな」
「そうだね」
両親からは写真だけでもと勧められたが、断った。
戸籍を得て結婚したとはいえ、ニキの今後が不透明だったのもある。
それでも指環は買ったし、後悔はなかった。
「こちらの、あの真っ白なドレスはいいな。
きっと苺に似合う」
「そうかなー?」
少しだけ写真撮影を見学させてもらい、再び歩きだす。
私にウェディングドレスを着たいという願望はないが、こうやって見るとやはり素敵だと憧れた。
「魔界の結婚式ってどんなの?」
「契約書に血判を押して、三日三晩披露宴。
夜は出席者の前でまぐわい、これから子作り頑張りますってアピールをする」
ニキがさも当たり前といった顔で説明してくれる。
「それは……お断りしたい」
あれか、マリーアントワネットか。
そんな羞恥プレイが待っているならこの世界の住人でよかったし、魔族に生まれなくてよかった。
「まあ、それはそうだよな。
最近の下々ではそんな習慣も形骸化して、ベッドの上でいちゃついているだけだというし」
「ふーん」
もしかしたら魔族はそういう羞恥心がないのかと思ったが、そこはやはり人間と同じみたいで安心した。
けれど、〝下々では〟というのが気になる。
もしかしてニキみたいに上流階級ではいまだに、人前でヤっているとか?
いや、これ以上は聞かないでおこう。
「新婚旅行はいまやってるが、結婚式もやはりやらないとな」
「ええーっ、いいよー」
話しているあいだに美術館を出た。
「別に式を挙げないと結婚できないわけじゃないんだし。
婚姻届も出したし、指環ももらったから私たちは立派な夫婦だよ」
結婚式に憧れがないといえば嘘になる。
しかし、ニキはこちらに家族もいないし、無理に挙げることはないと思う。
「それでも。
俺が苺のウェディングドレス姿が見たいの」
「あいたっ」
いつものごとくニキに額を弾かれる。
「帰ったら、計画を立てるぞ」
「わかった」
ニキがやりたいんだったら、私に反対する理由はない。
私もドレス、ちょっと着たいし。
楽しみにしておこう。
「これ、どうしたの?」
ちょっと待っていろと言われ、マンションの前で荷物と共に五分ほど待っていたらニキが車で現れた。
「ん?
借りた」
てきぱきと荷物を積み、彼は運転席に座ってシートベルトを締めた。
借りたのはそうだろうと思うが、それ以前に気になる問題がある。
「免許は?」
「取った。
ほら」
得意げにニキはブルーの免許を見せてくれたけれど。
「……また、魔力でズルしたりしてないよね?」
疑いたくはないが、前科があるだけに確認したい。
「してない、してない。
苺がいない時間に自動車学校に通って、こっそり取った。
驚いたか?」
「……うん。
びっくりした」
私が納得したので、ニキは車を出した。
ニキは努力家だ。
こちらの知識も必死に学習して、短期間で普通に一般企業で働けるほどにまでなった。
そのうえ、いまなんて株で稼いでいる。
そういうところ、尊敬するな。
適度に休憩を挟みながら、目的地へと向かう。
「結局、どこ行くの?」
旅館は教えてもらったが、それ以外はなにも聞いていない。
「観光地ぶらぶらして、明日はバンジー」
「ああ、そう……」
やっぱりバンジーはするんだ……。
私もやらなきゃいけないのかな?
それだけは遠慮したい……。
目的地に着き、適当な駐車場に預けてぶらぶらする。
「美術館、入るか?
好きだろ、こういうの」
「入る、入る!」
ガラス細工の美術館にさしかかり、勧められるがままに喜んで入る。
「うわーっ、綺麗……!」
シャンデリアも、ステンドグラスも美しくて、心までキラキラになった。
「そういえばニキって魔王ならお城に住んでたんだよね?」
「そうだな」
「やっぱり、こんなふうにキラキラだったの?」
だとしたらちょっと、行ってみたい。
なんだかんだ言っても、お城は女子の憧れだよね?
「あー……」
少し天を仰いだあと、ニキは困ったような笑顔を私に向けた。
「期待しているところ悪いが。
魔王城は薄暗くて不気味な感じだ」
「そうなんだ」
そこは、こちらのイメージと変わらないのかな?
「じゃあ、どんな感じなの?」
興味津々に聞いてみる。
「シャンデリアはドクロの上にろうそくがのっているのだし、蛇とかそんなデザインが多かったな」
思い出しているのか、ニキはうんうんと頷いている。
完全にアニメでよく見るあのお城なんだ。
その王座に彼が座っているのを想像したら、ぴったりだった。
ニキが魔王だから当たり前といえば当たり前だけれど。
「俺としてはもっと明るい感じにリフォームしたかったんだが、これが伝統だからと許してもらえなかったんだよな……」
はぁーっと、ニキの口から物憂げなため息が落ちていく。
よっぽど、嫌だったんだろうな。
「ふーん。
じゃあ、家はニキの好きなように模様替えしていいよ」
我が家はお洒落とは決して言えない。
私が適当だからだ。
でもニキって料理の盛り付けとかも綺麗だし、凄くお洒落な家になりそう。
「いっそ、引っ越さないか?
ベッドが狭いから買い替えたいが、あの部屋だとそれだけでいっぱいになるからな」
「そーだねー。
それもいいねー」
ニキと結婚してからも単身用の1LDKに住んでいるから、確かに狭い。
ニキの稼ぎも安定しているし、私もそこそこ貯蓄ができているし、引っ越しもいいかも。
「今度の休み、不動産屋に行ってみるか」
「いいねー」
手を繋いでぷらぷら見てまわる。
窓からはキラキラと光が差し込み、穏やかで優しい時間が過ぎていく。
幸せってこういうのを言うのかな。
隣を歩く彼をちらり。
「ん?」
目のあったニキが少しだけ首を傾げ、目を細めて私をみる。
「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない」
少し熱い顔を誤魔化そうと笑い、再び前を見た。
彼も、私と同じ気持ちだったらいいな。
庭では、花嫁と花婿が写真撮りをしていた。
「そういや俺たち、結婚式も挙げてないな」
「そうだね」
両親からは写真だけでもと勧められたが、断った。
戸籍を得て結婚したとはいえ、ニキの今後が不透明だったのもある。
それでも指環は買ったし、後悔はなかった。
「こちらの、あの真っ白なドレスはいいな。
きっと苺に似合う」
「そうかなー?」
少しだけ写真撮影を見学させてもらい、再び歩きだす。
私にウェディングドレスを着たいという願望はないが、こうやって見るとやはり素敵だと憧れた。
「魔界の結婚式ってどんなの?」
「契約書に血判を押して、三日三晩披露宴。
夜は出席者の前でまぐわい、これから子作り頑張りますってアピールをする」
ニキがさも当たり前といった顔で説明してくれる。
「それは……お断りしたい」
あれか、マリーアントワネットか。
そんな羞恥プレイが待っているならこの世界の住人でよかったし、魔族に生まれなくてよかった。
「まあ、それはそうだよな。
最近の下々ではそんな習慣も形骸化して、ベッドの上でいちゃついているだけだというし」
「ふーん」
もしかしたら魔族はそういう羞恥心がないのかと思ったが、そこはやはり人間と同じみたいで安心した。
けれど、〝下々では〟というのが気になる。
もしかしてニキみたいに上流階級ではいまだに、人前でヤっているとか?
いや、これ以上は聞かないでおこう。
「新婚旅行はいまやってるが、結婚式もやはりやらないとな」
「ええーっ、いいよー」
話しているあいだに美術館を出た。
「別に式を挙げないと結婚できないわけじゃないんだし。
婚姻届も出したし、指環ももらったから私たちは立派な夫婦だよ」
結婚式に憧れがないといえば嘘になる。
しかし、ニキはこちらに家族もいないし、無理に挙げることはないと思う。
「それでも。
俺が苺のウェディングドレス姿が見たいの」
「あいたっ」
いつものごとくニキに額を弾かれる。
「帰ったら、計画を立てるぞ」
「わかった」
ニキがやりたいんだったら、私に反対する理由はない。
私もドレス、ちょっと着たいし。
楽しみにしておこう。
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