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第三章 ニキを元の世界に帰してやりたいのだ
3-7
「ねー、ニキ。
魔界ってどんなところ?」
「んー、そうだな。
街は人間界と大きな違いはない」
食後、ソファーでまったりとお酒を飲みながら、話をする。
なんとなく、向こうの世界のことを聞いていた。
「街ってやっぱり、アニメとかで見るあんな感じなの?」
「ああ。
なんで知ってるんだってくらい、よく似てる。
もしかしたら俺以外にも、異世界から来たヤツがいるのかもな」
「そっかー」
ニキみたいな人、他にもいるのかな。
いるなら、会ってみたい。
……向こうの世界に帰る方法を知らないか、聞きたい。
「ニキは、向こうの世界に帰りたい?」
「そうだな、帰れるなら帰りたいかもな。
俺がこちらに飛ばされてきたあと、どうなったのか気になる。
勇者とは相打ちだったと思うが、もし、滅ぼされでもしていたら……」
苦しそうに彼の顔が歪む。
そうだよね、心配だよね。
わかっているのになにもできない自分が悔しい。
「向こうの世界に未練はあるが、いまは苺のいるこの世界が俺の居場所だ。
もう、吹っ切らないといけないな」
ふふっと小さく、ニキが自嘲するように笑う。
その顔に胸が張り裂けたんじゃないかというくらい、痛んだ。
「……ねえ。
私のどこがよかったの?
いくら寝たから夫婦という決まりがあちらにあっても、この世界じゃ無効だって言ったよね?
なのに、あんなに強引に」
ただの刷り込み、居場所を確保するための手段だと思っていた。
きっと自立できるようになれば出ていくんだとばかり思っていた。
もっとも、彼は会社員に向かなかったが。
それでもいまは十分に稼ぎがあり、私は養われている状態だ。
なのに彼は私を甘やかせ、新婚旅行だと私をここに連れてきている。
「苺は……覚えてないんだよな、きっと」
「……ハイ?」
はぁーっとニキがため息をつく。
覚えてない、とは?
そういえばかなり深酒だったのか、あの夜の記憶は曖昧だ。
ニキをどこで拾ったのかすら、思い出せない。
「あの日、勇者との激闘の末この世界に飛ばされてきた俺は、大怪我を負って動けずに道ばたに蹲っていた」
ニキの話を聞きながら、必死に思い出そうと努力をする。
「道行く人はみんな俺を避けた。
そりゃそうだよな、こんな怪しげな人間、誰だって関わり合いたくない。
でも、苺は声をかけてくれたんだ」
それは本当に私だったのか?
なんて疑問が浮かんでくるが、普段の自分からいって、しかも酔っていたとなると気も大きくなるし、ありうる。
「しかも苺は、回復するのに生気を分けてくれって頼んだら、死なない程度ならいいって快諾してくれた。
そのとき俺には苺が、神に見えたんだ」
眩しそうに目を細めた彼の手が、私の頬に触れた。
それをみて、心臓が甘く、とくんと鼓動する。
「苺が覚えていないのは、俺がかなりの生気をもらったからだろうな。
すまない」
彼が私に詫びてくるが、あの日、二日酔いだと思い込んでいたあのだるさは、そのせいだろう。
「魔族にも神様なんているの?」
「いるぞ、魔族を作った神様が」
なんとなく恥ずかしくて、少し茶化して聞いてみる。
ニキは笑いながら私の額に口付けを落とした。
「苺は俺に行く当てがないと知って、出ていけとは言わなかっただろ?
それに毎晩俺が出歩いても、帰ってから食べられるようにおにぎりを用意してくれていた」
今度はちゅっと唇にキスされる。
「あ、あれは別に……」
言葉はもごもごと次第に消えていった。
帰ってきたらお腹が空いているかも。
そんな気持ちで毎日、準備していた。
「あれ、凄く美味しかったんだ。
苺に感謝して、ますます苺と結婚したくなった。
それで頑張って、金を稼いだというわけだ」
再び彼が私にキスしてくる。
ニキは本当に、私が好きだったんだ。
それはとても、嬉しい。
「俺は苺と結婚できてよかったと思っている。
苺、は?」
彼らしくなく、不安げに私の顔をうかがってくる。
「私も、よかったと思ってる」
ニキの首に腕を回し、自分から唇を重ねた。
「嬉しい」
ゆっくりと彼から押し倒された。
私の上から欲に濡れたブラックオニキスのような瞳が私を見ている。
「……今日こそ、苺を抱きたい」
「……いいよ」
彼の手が私の頬に触れ、目を閉じた。
唇が重なり、彼を迎え入れる。
あの日、ニキとはどうもしてないみたいだし、これが彼とは初めてになるのかな……。
熱いひとときを過ごし、枕に顎をのせて眠る彼を見つめた。
ニキはまだ、あちらの世界に未練がある。
なんとしてでも帰してあげたい。
どうすればいいのかな……。
魔界ってどんなところ?」
「んー、そうだな。
街は人間界と大きな違いはない」
食後、ソファーでまったりとお酒を飲みながら、話をする。
なんとなく、向こうの世界のことを聞いていた。
「街ってやっぱり、アニメとかで見るあんな感じなの?」
「ああ。
なんで知ってるんだってくらい、よく似てる。
もしかしたら俺以外にも、異世界から来たヤツがいるのかもな」
「そっかー」
ニキみたいな人、他にもいるのかな。
いるなら、会ってみたい。
……向こうの世界に帰る方法を知らないか、聞きたい。
「ニキは、向こうの世界に帰りたい?」
「そうだな、帰れるなら帰りたいかもな。
俺がこちらに飛ばされてきたあと、どうなったのか気になる。
勇者とは相打ちだったと思うが、もし、滅ぼされでもしていたら……」
苦しそうに彼の顔が歪む。
そうだよね、心配だよね。
わかっているのになにもできない自分が悔しい。
「向こうの世界に未練はあるが、いまは苺のいるこの世界が俺の居場所だ。
もう、吹っ切らないといけないな」
ふふっと小さく、ニキが自嘲するように笑う。
その顔に胸が張り裂けたんじゃないかというくらい、痛んだ。
「……ねえ。
私のどこがよかったの?
いくら寝たから夫婦という決まりがあちらにあっても、この世界じゃ無効だって言ったよね?
なのに、あんなに強引に」
ただの刷り込み、居場所を確保するための手段だと思っていた。
きっと自立できるようになれば出ていくんだとばかり思っていた。
もっとも、彼は会社員に向かなかったが。
それでもいまは十分に稼ぎがあり、私は養われている状態だ。
なのに彼は私を甘やかせ、新婚旅行だと私をここに連れてきている。
「苺は……覚えてないんだよな、きっと」
「……ハイ?」
はぁーっとニキがため息をつく。
覚えてない、とは?
そういえばかなり深酒だったのか、あの夜の記憶は曖昧だ。
ニキをどこで拾ったのかすら、思い出せない。
「あの日、勇者との激闘の末この世界に飛ばされてきた俺は、大怪我を負って動けずに道ばたに蹲っていた」
ニキの話を聞きながら、必死に思い出そうと努力をする。
「道行く人はみんな俺を避けた。
そりゃそうだよな、こんな怪しげな人間、誰だって関わり合いたくない。
でも、苺は声をかけてくれたんだ」
それは本当に私だったのか?
なんて疑問が浮かんでくるが、普段の自分からいって、しかも酔っていたとなると気も大きくなるし、ありうる。
「しかも苺は、回復するのに生気を分けてくれって頼んだら、死なない程度ならいいって快諾してくれた。
そのとき俺には苺が、神に見えたんだ」
眩しそうに目を細めた彼の手が、私の頬に触れた。
それをみて、心臓が甘く、とくんと鼓動する。
「苺が覚えていないのは、俺がかなりの生気をもらったからだろうな。
すまない」
彼が私に詫びてくるが、あの日、二日酔いだと思い込んでいたあのだるさは、そのせいだろう。
「魔族にも神様なんているの?」
「いるぞ、魔族を作った神様が」
なんとなく恥ずかしくて、少し茶化して聞いてみる。
ニキは笑いながら私の額に口付けを落とした。
「苺は俺に行く当てがないと知って、出ていけとは言わなかっただろ?
それに毎晩俺が出歩いても、帰ってから食べられるようにおにぎりを用意してくれていた」
今度はちゅっと唇にキスされる。
「あ、あれは別に……」
言葉はもごもごと次第に消えていった。
帰ってきたらお腹が空いているかも。
そんな気持ちで毎日、準備していた。
「あれ、凄く美味しかったんだ。
苺に感謝して、ますます苺と結婚したくなった。
それで頑張って、金を稼いだというわけだ」
再び彼が私にキスしてくる。
ニキは本当に、私が好きだったんだ。
それはとても、嬉しい。
「俺は苺と結婚できてよかったと思っている。
苺、は?」
彼らしくなく、不安げに私の顔をうかがってくる。
「私も、よかったと思ってる」
ニキの首に腕を回し、自分から唇を重ねた。
「嬉しい」
ゆっくりと彼から押し倒された。
私の上から欲に濡れたブラックオニキスのような瞳が私を見ている。
「……今日こそ、苺を抱きたい」
「……いいよ」
彼の手が私の頬に触れ、目を閉じた。
唇が重なり、彼を迎え入れる。
あの日、ニキとはどうもしてないみたいだし、これが彼とは初めてになるのかな……。
熱いひとときを過ごし、枕に顎をのせて眠る彼を見つめた。
ニキはまだ、あちらの世界に未練がある。
なんとしてでも帰してあげたい。
どうすればいいのかな……。
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