清貧秘書はガラスの靴をぶん投げる

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第五章 恋だの愛だの

5-4

「ただいまー」

「おかえりー」

帰ったら健太が針仕事をしていた。

「真由さんは?」

「さっき起きて、美妃にミルクやってる」

「そう」

襖が開いているので見たら、そのとおりだった。

「清ちゃん、いらっしゃい」

「ただいま、真由さん」

目があって挨拶を交わす。

「ママー、ひゅうがおにぃちゃんが、おかしいっぱいかってくれたんだよ!」

引きずるように私の置いた袋を持っていき、望は真由さんに見せていた。

「あらあら。
彪夏さん、すみせん」

「いいんですよ、これくらい」

話しているふたりを尻目に、作業を始める。

「健太、なにしてるんだ?」

「このあいだ買った真の服、ちょっと大きかったからサイズ調整」

「へえ、そんなこともできるんだ。
器用だな」

彪夏さんは感心しているが、いまだに誰も私のスーツが古着のカスタムだと知らないくらい健太の腕は優秀なのだ。

彪夏さんの相手は健太がしてくれているし、望は真由さんとのおしゃべりに夢中みたいなので、安心して調理をした。
それにしても私が作ったオムライスが食べたいなんて、彪夏さんはなにを考えているんだろ?
いつも食べている高級料理のほうが美味しいだろうに。

「できたよー」

できあがったオムライスをてきぱきとテーブルに運ぶ。
健太も片付けを済ませ、手伝ってくれた。
真由さんも美妃を抱いてきてカゴベッドに入れ、テーブルに着く。

「うまそうだな」

「さやねぇちゃんのオムライスは、せかいいちおいしいんだよ!」

ほくほく顔の彪夏さんに、望は説明している。
これくらいで喜んでくれるなんて、ほんとに望は可愛いな。

「いただきまーす!」

全員でスプーンを握って、ぱくり。

「うん、やっぱりうまいな」

彪夏さんはにこにこ笑ってぱくぱく食べているが、普通だと思いますけど?

「清子の作るオムライスがこの世で一番うまい」

「だろ?
清ねぇは料理がうまいんだ。
彪夏にぃ、結婚してからの食事は期待してていいからな」

そしてなんで健太が、そこで得意げなんだ?

「そうか、それは期待しよう」

「ちょっと!
勝手にハードル上げないでよね!」

私の料理は貧乏節約料理なのだ。
彪夏さんの口にあうとは思えない。

「まあ、俺は清子が作ったってだけでなんでもうまいから、問題ないけどな」

彪夏さんが私に向かって片目をつぶってみせる。
まるでLove is blindな台詞だが、私たちはそういう関係ではないのだ。

「そういうのはふたりっきりのときにやってくんない?
あーもー、俺も彼女欲しいー!」

「まあ頑張れ」

軽い彪夏さんの励ましを、笑いながら聞いていた。
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