転生魔女は悠々自適に世界を旅する

黛 ちまた

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新たな魔女の誕生

新しい世界

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 異世界転生した! 
 気付いた時にはマジで驚いた。本当にあるんだ! "真実は小説より奇なり"は本当だったよ……。
 前世の記憶を思い出したのは五才。双子の姉は私より少し早くに思い出したようだったけど、秘密にしていたのだとか。姉らしい。
 
 そう、思い出したのだ。姉であるエレンが前世での親友であったことも、自身の死の理由も、全部。
 姉の仕草が前世の親友そのままだったから、恐る恐る前世での名を呼んだら抱きしめられた。涙が止まらなかった。
 死が近付いて、意識があるうちに何度も感謝と謝罪をした。何度言っても言いたりなかった。共に年をとって、老後にはこんなことをしたいねと話していたのに、その約束を果たせないまま先に逝くことになってしまった。
 それなのにまさかこうして会えるなんて、こんな奇跡があっていいのかと思った。
 二人、抱き合って泣いた。
 けれど母には秘密にしていた。自分の子供に前世の記憶があるとか、困惑するどころか気味悪く思われても仕方ない。



「エレン、キリエ、大事な話があるからそこに座って」

 おやつの時間でもないのに呼ばれ、何かと思いながら居間に向かった。
 居間の大きなテーブルはクルミの樹から作ったもので、お母さんが子供の頃から使っているそう。ところどころに傷があるのが、歴史を感じさせる。
 
 シルキーが私達にヤギミルクの入った木のカップを置いてくれた。ちょっと癖のあるヤギミルクだけど、私もエレンも大丈夫だった。でもねー、チーズはそのままだと食べられないんだよね。前世でもチーズ苦手だったんだけど、遺伝っていうのもおかしいけど、そういうの引き継いでるのかな。エレンは前世同様チーズ大好き。

「あなた達、前世の記憶を取り戻したのでしょう?」

 ぎくっとした。隣のエレンは笑顔になってる。誤魔化してるな。私の動きの所為でバレちゃったけど。

「警戒しなくていいわ。私にもあるのよ、前世の記憶が」

 予想外の言葉に思わず「えっ!」って反応しちゃったけど、仕方ないと思うのさ。
 私の反応にお母さんは笑った。

「話していなかったけれど、私は魔女なのよ」

 なんと! 魔女とかいる世界なのか。いや、薄々勘付いてたけど。お母さんのそばにはいつも鹿がいて絶対離れないから。いくら森の中で暮らしてるからって、懐いてたってずっとそばにいるぐらい懐くものなの? って疑問に思ってたし、屋敷妖精と呼ばれるシルキーもいるし、前世とは全く違う世界なんだなってことは分かってた。
 でもお母さんは魔法を使わないし、所謂魔女っぽい薬を作ることもしないから、判断がつかなかった。
 記憶を取り戻してからは、前世の母と違って今生の母が優しすぎて内心戸惑ってはいた。そういうのもバレたきっかけなのやも。

「ここはダルナラーマと呼ばれる、剣と魔法のファンタジー溢れる世界よ」

 悪役令嬢転生ではなかったことに感謝ー! さすがにアレは頑張れなーい!

「魔女は魔女からしか生まれないの」
「じゃあ、私達も魔女ってこと?」

 エレンの問いに母は頷いた。
 私とエレンは見合った。エレンの目が言ってる。「魔女だって!」って。

「この世界を彷徨う魂に新たな肉体を与えることができるのが魔女なのよ。だからあなた達に父親はいないわ」

 単体生殖とも違う斬新な誕生方法!

「男性の場合は不思議とこの世界の人間達の子として生まれるのよ」
「魔法使いって呼ばれるの?」
「賢者よ」

 それってど(自主規制)。
 えーっと、なんでか分からんけど、この世界ではそうらしい。

「人の子として生まれた賢者には寿命があるけれど、私達魔女には寿命がないの」
「魔女だらけにならないの?」

 素朴な疑問として、死なない魔女だらけになるのではないかなと。そもそも異世界のここに魂が来ることが珍しい?

「……魔女はね、自分で自分の生を終わらせることができるのよ。もうこれで充分、満ち足りたと感じてこの世界を去る者は意外と多いのよ」

 この口ぶりからして魔女は多くないんだろうな。母が一人で暮らしていることからしても、そんな気がした。

「あなた達には姉が何人もいたのだけれど、そのうちの何人かは生を終えたわ」

 寂しそうな表情。自分の子が自分より先に逝くのだから悲しくも辛くもなるよね。前世の私にもエレンにも子供はいなかった。子を持ったことのない私が想像するだけでも辛いのだから、母のような人達の苦しみはいかばかりだろうか。

「魔女として生まれたからといって、何かをしなくてはならない、ということはないのよ。前世にできなかったことを実現する者もいるし、私のようにのんびり暮らす魔女もいるわ」

 なるほどなるほど。よく分からんけど無期限ボーナスタイムってこと? チートじゃないすかー!?

「魔女は魔法使えるの?」
「使えるわよ。あなた達の前で使わないだけで」
「お薬とか作ったりするの?」

 物語の魔女にありがちなあの、何を煮詰めているのか分からない鍋とか!

「作る魔女もいるけれど私は作らないわね」
「箒で飛ぶの?」

 宅急便の魔女みたいに。
 私達双子からの質問攻めに母はコロコロと笑う。

「箒ではないけれど、魔女だけの乗り物があるわよ」

 魔女だけの乗り物とは!? デッキブラシか!?

「えっ、なに何!?」
「魔女の馬車っていってね、青い炎が馬の代わりに引く馬車よ。私のように定住する魔女もいれば、魔女の馬車で旅を続ける者もいるわ」

 馬の代わりに青い炎! どんなんだろう、見てみたい!

「見たーい!」
「また今度ね」
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