魂呑み込む、死神の歌 〜青春を生きる死神は図らずも人間を虜にする〜

仁乃戀

文字の大きさ
13 / 45
第二章

ストーキング

しおりを挟む
 時々前で寝ている奴を起こしたり、俺自身もうつらうつらしているところを逆に起こされたりして、ようやく昼休みを迎える。

 テストが近くなってきたということもあり、今日から原則どの部活もテスト前休みに入る。
 昼休みにミーティングが入って満足に食事が取れないこともなくなり、ようやく一息つけるといった気分だ。

 「楽、行こうぜ」

 ……正気かこいつ。
 最近行ってなかったというのもあるけど、流石に今日は暑くて行く気にならない。

 「今日行くのか? 暑くて倒れるぞ」
 「ドア開けたすぐ近くの日陰にでも座りゃいいだろ、ほら」
 「ちょっ…………」

 そう言ってがっしりと俺の腕が掴まれる。

 抵抗する気も失せて、俺が連れて行かれたのは屋上だった。
 普段は屋上に鍵がかかっているのだが、時々鍵がかけられていないことがある。
 俺たちはそれに気付くといつも屋上で昼飯を食べていたのだが、最近は昼休みにミーティングがあったり、そもそも鍵がかかっていたりと行くタイミングがなかった。

 きっと智和はなんとなく見に行ったら鍵がかかってなかったから俺を呼んだのだろう。
 ……それにしてもここは…………。

 「暑いな……」

 未だに太陽は力強く地上を照らしていて、ほとんど陽を遮る場所のない屋上はこれでもかと言うほど暑かった。
 空に雲はひとつも見えず、じりじりと俺たちの肌を焼いていく。

 「だから言ったじゃねえかよ…………干からびる前に教室に帰るぞ」
 「いや、せっかく開いてるんだぞ。 このチャンスを逃さない手はない」
 「これはそれどころじゃないだろ……ほら、帰ろう」

 大袈裟に頬を膨らませて抗議をする智和を横眼に、俺はきびすを返してドアノブに手をかけようとする。
 しかし、俺がドアノブに触れる直前、勢いよくドアが開かれる。
 ここに立ち入れることを知ってるのはおそらく俺と智和くらいなので、思いもよらない出来事に体は動かず、いきなり開いたドアが顔に直撃する。
 そして中から出てきたのは綾瀬と椎名だった。

 「やっほ~! お邪魔しま~す!」
 「お、お邪魔します」
 「……っ、地味に痛ぇ…………」
 「あ、ごめんぶつかっちゃって。 大丈夫?」
 「意外とあっさりしてるなこのやろう」
 「だって私にはどうすることもできないし……というか、私かなり力強くドア開けた気がするんだけど、本当に大丈夫?」

 悶絶する俺を見て綾瀬と椎名が物凄く心配した眼差しで鼻を手で押さえている俺を見る。
 智和はといえば、俺の様子を見るなり腹を抱えて笑い転げている。
 鼻から手を離すと鼻血が垂れてきて、それを見た椎名が素早くティッシュを俺に渡す。
 準備の良さに驚いたが、ありがたく受け取って鼻に詰め、すぐ近くの日陰に寝転がる。

 少し落ち着いてから智和が2人に聞く。

 「2人も屋上に来れることを知ってたのか? 用意周到に弁当と飲み物まで持ってきて」
 「私の方は知らなかったです。 ただ、昼休みに入って私がまた飲み物を買って戻ってきたとき、詩月ちゃんに誘われて…………それで今に至ります」

 丁寧に説明する椎名の言葉を聞いて、綾瀬に視線が向く。

 「ん? 私も知らなかったよ? ただ、2人がどっか行くとか言って弁当持って行ったのを見たから、他に行くような場所あったっけなーって思いながら追跡してみた」
 「やったな楽。 美少女にストーキングされたぞ。 これでお前も正真正銘、リア充の仲間入りだな」
 「多分違うしむしろちょっと恐怖を感じる」

 あと、女子を目の前にして美少女とか言うな。
 2人とも顔赤くなってるから。

 「そ、それにしても暑いね、ここ。 日陰にいても汗がすごいや」
 「ですね~…………。 二ツ橋くんも藤崎くんも、たまにここで食べるんですか?」
 「開いてない日の方が多いけど、開いてる日は大体ここだな。 今日は楽が暑さに負けて帰ろうとしたけど」
 「だからドアの前にいたんだね。 うんうん、納得だ」
 「俺は全く納得してないからな」
 「そんなこと言うなよ、楽。 久しぶりなんだしたまには良いじゃん? 仲間も2人増えたし」
 「どうせ何を言っても引き止められそうだし抵抗はしないよ」
 「さてはツンデレだなお前。 かわいいやつめ」

 智和の手が俺の頭に伸びる。
 さっき髪をかき上げられたことを思い出して手をはたくと、頬をぐりぐりとつねられた。
 だから痛いっての。

 最近は綾瀬が俺に絡んでくることも増えて、徐々に親交が深まっているのを感じる。
 席が近いということもあるが、4人で遊びに行ったことも大きい。
 綾瀬と一緒にいると椎名と話す機会も増えて、最終的に俺の話し相手は2人増えた。
 基本的に友人と知り合いの線引きを厳しくしているという自覚はあるが、この2人は距離の詰め方が上手く、俺の中では親友とも言えるほどになっていた。

 「…………たまにはこういうのもいいか……」
 「ん? なんか言ったか?」
 「いや、別に。 決して智和は相変わらず女子にデレデレしてるなとか言ってないぞ」
 「それもう言っちゃってるじゃねーかよ!」

 俺と智和がいつも通りの会話をすると、綾瀬と椎名が笑う。
 俺は無意識にこの関係に満足し始めているのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...