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第二章
ストーキング
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時々前で寝ている奴を起こしたり、俺自身もうつらうつらしているところを逆に起こされたりして、ようやく昼休みを迎える。
テストが近くなってきたということもあり、今日から原則どの部活もテスト前休みに入る。
昼休みにミーティングが入って満足に食事が取れないこともなくなり、ようやく一息つけるといった気分だ。
「楽、行こうぜ」
……正気かこいつ。
最近行ってなかったというのもあるけど、流石に今日は暑くて行く気にならない。
「今日行くのか? 暑くて倒れるぞ」
「ドア開けたすぐ近くの日陰にでも座りゃいいだろ、ほら」
「ちょっ…………」
そう言ってがっしりと俺の腕が掴まれる。
抵抗する気も失せて、俺が連れて行かれたのは屋上だった。
普段は屋上に鍵がかかっているのだが、時々鍵がかけられていないことがある。
俺たちはそれに気付くといつも屋上で昼飯を食べていたのだが、最近は昼休みにミーティングがあったり、そもそも鍵がかかっていたりと行くタイミングがなかった。
きっと智和はなんとなく見に行ったら鍵がかかってなかったから俺を呼んだのだろう。
……それにしてもここは…………。
「暑いな……」
未だに太陽は力強く地上を照らしていて、ほとんど陽を遮る場所のない屋上はこれでもかと言うほど暑かった。
空に雲はひとつも見えず、じりじりと俺たちの肌を焼いていく。
「だから言ったじゃねえかよ…………干からびる前に教室に帰るぞ」
「いや、せっかく開いてるんだぞ。 このチャンスを逃さない手はない」
「これはそれどころじゃないだろ……ほら、帰ろう」
大袈裟に頬を膨らませて抗議をする智和を横眼に、俺は踵を返してドアノブに手をかけようとする。
しかし、俺がドアノブに触れる直前、勢いよくドアが開かれる。
ここに立ち入れることを知ってるのはおそらく俺と智和くらいなので、思いもよらない出来事に体は動かず、いきなり開いたドアが顔に直撃する。
そして中から出てきたのは綾瀬と椎名だった。
「やっほ~! お邪魔しま~す!」
「お、お邪魔します」
「……っ、地味に痛ぇ…………」
「あ、ごめんぶつかっちゃって。 大丈夫?」
「意外とあっさりしてるなこのやろう」
「だって私にはどうすることもできないし……というか、私かなり力強くドア開けた気がするんだけど、本当に大丈夫?」
悶絶する俺を見て綾瀬と椎名が物凄く心配した眼差しで鼻を手で押さえている俺を見る。
智和はといえば、俺の様子を見るなり腹を抱えて笑い転げている。
鼻から手を離すと鼻血が垂れてきて、それを見た椎名が素早くティッシュを俺に渡す。
準備の良さに驚いたが、ありがたく受け取って鼻に詰め、すぐ近くの日陰に寝転がる。
少し落ち着いてから智和が2人に聞く。
「2人も屋上に来れることを知ってたのか? 用意周到に弁当と飲み物まで持ってきて」
「私の方は知らなかったです。 ただ、昼休みに入って私がまた飲み物を買って戻ってきたとき、詩月ちゃんに誘われて…………それで今に至ります」
丁寧に説明する椎名の言葉を聞いて、綾瀬に視線が向く。
「ん? 私も知らなかったよ? ただ、2人がどっか行くとか言って弁当持って行ったのを見たから、他に行くような場所あったっけなーって思いながら追跡してみた」
「やったな楽。 美少女にストーキングされたぞ。 これでお前も正真正銘、リア充の仲間入りだな」
「多分違うしむしろちょっと恐怖を感じる」
あと、女子を目の前にして美少女とか言うな。
2人とも顔赤くなってるから。
「そ、それにしても暑いね、ここ。 日陰にいても汗がすごいや」
「ですね~…………。 二ツ橋くんも藤崎くんも、たまにここで食べるんですか?」
「開いてない日の方が多いけど、開いてる日は大体ここだな。 今日は楽が暑さに負けて帰ろうとしたけど」
「だからドアの前にいたんだね。 うんうん、納得だ」
「俺は全く納得してないからな」
「そんなこと言うなよ、楽。 久しぶりなんだしたまには良いじゃん? 仲間も2人増えたし」
「どうせ何を言っても引き止められそうだし抵抗はしないよ」
「さてはツンデレだなお前。 かわいいやつめ」
智和の手が俺の頭に伸びる。
さっき髪をかき上げられたことを思い出して手をはたくと、頬をぐりぐりとつねられた。
だから痛いっての。
最近は綾瀬が俺に絡んでくることも増えて、徐々に親交が深まっているのを感じる。
席が近いということもあるが、4人で遊びに行ったことも大きい。
綾瀬と一緒にいると椎名と話す機会も増えて、最終的に俺の話し相手は2人増えた。
基本的に友人と知り合いの線引きを厳しくしているという自覚はあるが、この2人は距離の詰め方が上手く、俺の中では親友とも言えるほどになっていた。
「…………たまにはこういうのもいいか……」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、別に。 決して智和は相変わらず女子にデレデレしてるなとか言ってないぞ」
「それもう言っちゃってるじゃねーかよ!」
俺と智和がいつも通りの会話をすると、綾瀬と椎名が笑う。
俺は無意識にこの関係に満足し始めているのだった。
テストが近くなってきたということもあり、今日から原則どの部活もテスト前休みに入る。
昼休みにミーティングが入って満足に食事が取れないこともなくなり、ようやく一息つけるといった気分だ。
「楽、行こうぜ」
……正気かこいつ。
最近行ってなかったというのもあるけど、流石に今日は暑くて行く気にならない。
「今日行くのか? 暑くて倒れるぞ」
「ドア開けたすぐ近くの日陰にでも座りゃいいだろ、ほら」
「ちょっ…………」
そう言ってがっしりと俺の腕が掴まれる。
抵抗する気も失せて、俺が連れて行かれたのは屋上だった。
普段は屋上に鍵がかかっているのだが、時々鍵がかけられていないことがある。
俺たちはそれに気付くといつも屋上で昼飯を食べていたのだが、最近は昼休みにミーティングがあったり、そもそも鍵がかかっていたりと行くタイミングがなかった。
きっと智和はなんとなく見に行ったら鍵がかかってなかったから俺を呼んだのだろう。
……それにしてもここは…………。
「暑いな……」
未だに太陽は力強く地上を照らしていて、ほとんど陽を遮る場所のない屋上はこれでもかと言うほど暑かった。
空に雲はひとつも見えず、じりじりと俺たちの肌を焼いていく。
「だから言ったじゃねえかよ…………干からびる前に教室に帰るぞ」
「いや、せっかく開いてるんだぞ。 このチャンスを逃さない手はない」
「これはそれどころじゃないだろ……ほら、帰ろう」
大袈裟に頬を膨らませて抗議をする智和を横眼に、俺は踵を返してドアノブに手をかけようとする。
しかし、俺がドアノブに触れる直前、勢いよくドアが開かれる。
ここに立ち入れることを知ってるのはおそらく俺と智和くらいなので、思いもよらない出来事に体は動かず、いきなり開いたドアが顔に直撃する。
そして中から出てきたのは綾瀬と椎名だった。
「やっほ~! お邪魔しま~す!」
「お、お邪魔します」
「……っ、地味に痛ぇ…………」
「あ、ごめんぶつかっちゃって。 大丈夫?」
「意外とあっさりしてるなこのやろう」
「だって私にはどうすることもできないし……というか、私かなり力強くドア開けた気がするんだけど、本当に大丈夫?」
悶絶する俺を見て綾瀬と椎名が物凄く心配した眼差しで鼻を手で押さえている俺を見る。
智和はといえば、俺の様子を見るなり腹を抱えて笑い転げている。
鼻から手を離すと鼻血が垂れてきて、それを見た椎名が素早くティッシュを俺に渡す。
準備の良さに驚いたが、ありがたく受け取って鼻に詰め、すぐ近くの日陰に寝転がる。
少し落ち着いてから智和が2人に聞く。
「2人も屋上に来れることを知ってたのか? 用意周到に弁当と飲み物まで持ってきて」
「私の方は知らなかったです。 ただ、昼休みに入って私がまた飲み物を買って戻ってきたとき、詩月ちゃんに誘われて…………それで今に至ります」
丁寧に説明する椎名の言葉を聞いて、綾瀬に視線が向く。
「ん? 私も知らなかったよ? ただ、2人がどっか行くとか言って弁当持って行ったのを見たから、他に行くような場所あったっけなーって思いながら追跡してみた」
「やったな楽。 美少女にストーキングされたぞ。 これでお前も正真正銘、リア充の仲間入りだな」
「多分違うしむしろちょっと恐怖を感じる」
あと、女子を目の前にして美少女とか言うな。
2人とも顔赤くなってるから。
「そ、それにしても暑いね、ここ。 日陰にいても汗がすごいや」
「ですね~…………。 二ツ橋くんも藤崎くんも、たまにここで食べるんですか?」
「開いてない日の方が多いけど、開いてる日は大体ここだな。 今日は楽が暑さに負けて帰ろうとしたけど」
「だからドアの前にいたんだね。 うんうん、納得だ」
「俺は全く納得してないからな」
「そんなこと言うなよ、楽。 久しぶりなんだしたまには良いじゃん? 仲間も2人増えたし」
「どうせ何を言っても引き止められそうだし抵抗はしないよ」
「さてはツンデレだなお前。 かわいいやつめ」
智和の手が俺の頭に伸びる。
さっき髪をかき上げられたことを思い出して手をはたくと、頬をぐりぐりとつねられた。
だから痛いっての。
最近は綾瀬が俺に絡んでくることも増えて、徐々に親交が深まっているのを感じる。
席が近いということもあるが、4人で遊びに行ったことも大きい。
綾瀬と一緒にいると椎名と話す機会も増えて、最終的に俺の話し相手は2人増えた。
基本的に友人と知り合いの線引きを厳しくしているという自覚はあるが、この2人は距離の詰め方が上手く、俺の中では親友とも言えるほどになっていた。
「…………たまにはこういうのもいいか……」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、別に。 決して智和は相変わらず女子にデレデレしてるなとか言ってないぞ」
「それもう言っちゃってるじゃねーかよ!」
俺と智和がいつも通りの会話をすると、綾瀬と椎名が笑う。
俺は無意識にこの関係に満足し始めているのだった。
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