千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜

東雲 大雅

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第一章 曼珠沙華

7話 「いざ、参りましょう!」

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「ちょっとひまわり!ミツバチの兵隊さんにあの言い方はないんじゃないの⁉︎」

 坂下門が見えなくなってすぐのこと、ビオラが背伸びをし、左手を腰に当て、右手を伸ばしひまわりに向け指を差す。
 先ほどのひまわりの発言に怒っているのだ。

「あれは流石にアタシも反省してるよ~」

 ひまわりもかなり反省しているようで、両手を合わせて顔の前に持っていき、片目を閉じ「ごめんね~」という。

 それでも怒りが収まらないのか、小言を並べるビオラとそれに対し謝り続けるひまわり。それを見かねた桜が2人の仲裁に入る。
 
「まぁまぁ、ひまわりさんも反省してるみたいだし、今回の件はそれぐらいでいいんじゃないですか?」

 桜が後ろからビオラの頭をポンポンと撫でながら言う。

「桜お姉ちゃんがそこまで言うなら・・・。でも次はないからね!」

 桜に頭を撫でられ、満更でもない様子で口元を膨らませながらビオラは言う。

「ほんとごめんよ~」

 ひまわりが頭を下げながら答える。
 ヒガンバナが話題を変えるためか、右手の人差し指を顎に当て上を見ながら唐突に話し始めた。


「そういえばベゴニア様の言ってたクロカタゾウムシってどんなヒトなんだろう?」

「名前からして黒くて硬いヒトでしょ。どうせ全身真っ黒で、こーんなにデカくてゴツい奴だわきっと!」

 ビオラが両手を広げて大きさをアピールする。ただ、身長のせいかあまり大きいイメージが湧かないなと思った3人であったが、それを言うとビオラが顔を真っ赤にして怒るので、誰一人口にするものはいなかった。

「そんな名前の通りな見た目してるかなー?」

 ヒガンバナが真面目に答えようとするかが、ビオラの仕草を見て我慢出来ず、笑いを堪えるように言ってしまった。その様子をみて一瞬ムッとし、目を細めてヒガンバナを睨むビオラだったが、当たりが強いのはひまわりにだけなのでそれ以上追求することはなかった。



 4人が歩く街並みには人工的に造られた建物は残っているものの、半分以上崩壊しており、ツタがはってあったり木々が生い茂っている。

 神が人類を消して長い時間が経っているが、未だに人類が残した遺産ともいえる建物は未だ顕在だった。

 ある種美しさも感じる街並みを見ながら、ヒガンバナが再度話し始める。

「それにしても過去の人達が作った建物ってすごいよね。どれだけ時間が経ったのかは分からないけどまだ残ってるもの」

「それでも神サマに消されちゃうくらいだからよくないことして作ったんじゃないの?私はあんまり好きじゃないわ」

 ヒガンバナの言葉に反応したビオラが否定的に答える。

「うーん、アタシはそこまで悪いことしてる人ばっかりじゃなかったと思うけど・・・」

 両手を頭の後ろで組んで歩くひまわりがぼそりと呟く。

「ひまわりって絶対、過去の人達の悪口言わないわよね?何でそんなに過去の人達の肩を持つの?」

 先ほどのようにつっかかるような言い方ではなく、純粋に疑問に思ったビオラが質問をする。

「えぇっと・・・、まぁそんなこといいじゃん!それより、これからヤマノテ結界の外側に出るから昆虫騎士団の連中に注意しなきゃね!」

 あまり聞かれたくない内容だったのか、ひまわりが左手の人差し指で頬を掻きながら話題を逸らす。
 その様子に気づいたビオラはそれ以上追求することなくひまわりの話題に乗る。

「確かに今回クロカタゾウムシが連れてきたヤツ以外にも残党が残ってるかもしれないから気を引き締めないと!」

 ビオラが自身の頬を両手でパチンと叩き、気合を入れる。


 ラフレシアと昆虫騎士団の多くがキョウトを本拠地として移動した後も、トウキョウには少なからず昆虫騎士団が残っていた。
 その者達からの侵略を防ぐべく、ベゴニアは自身が所持していた八尺瓊勾玉を使い結界を張った。その際、領域を分けるために利用されたのが旧山手線の線路だ。
 これによりアゲハやミツバチなど、ベゴニアに忠誠を誓った者達以外の昆虫騎士団は結界の中に入れなくなった。
 結界を作る際、ヒガンバナ達もベゴニアの護衛としてついて行っていたが、その時のがきっかけでヒガンバナ達はトウキョウから出ることを禁止されていたのだった。


 
 4人は浅草寺から1番近い結界の出入り口である旧上野駅まで到着した。

「さて皆さん。いよいよ結界の外に出ますよ。大丈夫だと思いますが、今一度気を張り直してください。」

 桜が左腰の刀に手をかけながら3人に話す。

3人が同時に頷く。

 ひまわりは右手の拳を固める。

 ヒガンバナはひまわりとは対照的に両手を開きリラックスしたように肩の力を抜く。

 ビオラは右腰の拳銃を抜き右半身に構える。

 それぞれが臨戦態勢に入ったのを確認した桜は、自身を含め全員を鼓舞するように口を開いた。

「皆さん準備は出来たみたいですね。いざ、参りましょう!」

 桜の掛け声と共に結界の外に足を踏み出した4人であった。
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