千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜

東雲 大雅

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第一章 曼珠沙華

25話 「少し散歩でもしましょうか」

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「何でそこまで分かるんですか?」
 ひまわり、桜に続きビオラも驚いた表情で質問する。

「そんなの貴方達の性格を知ってれば大体の想像はつくし、この部屋に入って来てからの表情や身体の仕草である程度分かるものよ」
 ベゴニアはゆっくりと視線を動かし、4人を順番に見つめながら、さも当然かのように話す。
 そして順番に視線を向けた先、4つに並べられた椅子の1番端に座っているヒガンバナで視線の動きは止まる。

「やけに静かじゃない・・・ヒガンバナ。そんなにワタシの話は退屈かしら?」

「・・・・・・えっ⁈あぁ、いえ!そんな事ありません。ただちょっと別のことで・・・」

 座ってから一言も話さず、下を向いていたヒガンバナは、ベゴニアに声をかけられて慌てて返事をする。

「完全に心ここにあらず、って感じね。・・・・・・なるほど、分かったわ。とりあえず今日は総評だけして終わろうかしらね。貴方達も疲れてるだろうし・・・」

 ヒガンバナを見つめた後、ゆっくりと両目を閉じ、顔を正面に向け直す。そして目を開き今度は反対側の端に座っている桜に視線を向け話し始める。

「まずは桜。貴方はまだ、その刀の力を十分に発揮できてないわね。ただ、惜しいところまではきてるのよ。危険だけど、もう少し追い込まれたほうがいいわね。そうすれば貴方は今よりずっと強くなれるし、その勢いで千紫万紅も使えるようになるわ。頑張りなさい・・・」

「・・・精進いたします!」
 桜が左腰の刀の鞘を強く握りしめて返事をする。その様子を満足気に見てベゴニアは視線を横に座っているビオラに向ける。

「次にビオラ。貴方は桜のことになると周りが見えなくなる癖を直しなさい。銃を扱っているからには、何があっても平常心を保つことを意識すること。心を研ぎ澄ませれば相手の弱点が見えるようになる。そこに弾を当てれれば、どんな敵も倒せるようになるわ。頑張りなさい・・・」

「うぅ~、分かりました・・・気をつけます」

 桜のことを言い当てられて、少し恥ずかしいのか若干うなだれながらもビオラは返事をする。ベゴニアはその仕草を見て少し笑い、次はひまわりに視線を向ける。

「そしてひまわり。貴方は力の伝え方をもう少し学んだ方がいいわね。せっかくいい技を持ってるのに、身体の使い方が雑なせいで威力を分散させてしまってるのよ。その辺りはヒガンバナが詳しいから、今後教えてもらうといいわ。それを上手く使えればどんな硬い装甲も砕くことが出来るようになる。頑張りなさい・・・」

「はい!頑張ります!」

 ひまわりが座ったまま拳を上げ、元気よく返事をする。その反応を見て頬を緩め頷きながら、ベゴニアは最後に端に座るヒガンバナの方を見る。

「最後にヒガンバナ。貴方には今回の闘い方に関して特に言うことはないわ。ただ、今はかなり心が乱れてるわね。何で悩んでいるのかは大体分かるけど、ここで話すようなことじゃないし。・・・そうねぇ、少し散歩でもしましょうか」

「えっ⁉︎ は、はい・・・」

 ベゴニアの急な誘いに、意味を理解する前に返事をしてしまうヒガンバナであった。
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